人の型
セイテツと同じような背丈だが、さらけ出されたからだは、細い。腰にだけ、きれいな布を巻いていた。
「 まあ、ミカドからの話だから、用心するにこしたことはないと思ってね。この数日、きみ達が信用おけるかどうか、様子をみさせてもらったってわけ 」
あはははと笑う『黒鹿』は、口をあけたままのセイテツをみやった。
「 ああ、神官臭いきみ、なんで黒鹿が人のカタチなのかとか思ってるみたいだけど、とりあえず、説明は後でね。早く、ここを離れよう 」
「・・・おまえ、本当に黒鹿か?」
人に語りかけることはあると聞いてはいても、人の型をしているなどと、聞いたこともない。
「 そりゃ聞いたことないだろうね。ぼくだって、人の型になったのなんて、初めてだもん。阿吽たちみたいに年寄りじゃないから、そんな『力』なかったんだけどさあ、あ、ぼくが『長』のホウロクだよ 」
年齢は、ヒ・ミ・ツ~とかかえたシュンカに微笑みかける黒鹿は、想像していたのと、かなり開きのある性格で、どうやら人の頭の中をよむらしい。
先を歩き出しながら、バランスの悪そうな頭をゆすった。
「 勝手に想像して勝手にがっくりしないでほしいな。あ、そう。きみは、もうすぐ十四なの?そりゃめでたい 」
抱える子どもの『中』もよんだらしい。
驚きながらもそれに礼を言うシュンカから、肩越しに振り返った黒鹿は、困ったような顔で坊主をみた。
「 そっか、で、おまえが、セリの弟だっていう坊主だね。 ああ、そうだよ。この布はセリが昔くれたんだ。 ・・・ふうん・・坊主は、ひどくスカスカだなあ 」
「あん?おれがなんだって?」
なんでもないよ、と笑い出す黒鹿は、はじめのうちにさんざん歩き回ったはずの、燃え尽きた森の中心部へむかった。
「 ――澱んでいるから、こっちがいいのさ 」
炭の間から、小さな緑がときおりのぞく焼け跡を進む。




