サモンの一刀
セリがどうにか間に合い、焼け残ったのは、黒森のふちだけだ。
真ん中から火の手があがったことがよくわかる。
―― 風に関係なく、中から同じ速さで、外へむけ、はしる火?
笑わせる。
己の領土内でなにをしようとも、天宮には関係のないことだと、呼び出されたケイテキはセリに答えたらしい。
天帝がそれもそうだとうなずいたところへ、セリの横にいたサモンの太刀が振り下ろされた。
「―― 頭に、虫がついていた」
さらっと涼しげに言う優男の一刀で、ケイテキの髪の一部が消え去った。
「おいおいサモン、ずいぶん親切じゃねえか。ケイテキだってちゃんと気付いて自分でやろうとしてたのによ」
きれいな顔の子どもは、玉座であぐらをかいてそれをわらった。
おのれの太刀にかけられたケイテキの手は、震えながら動けずにいる。
――― 屈辱と、怒りと、恐怖のためだ。
そのまま下がれと子どものかたちの帝に命じられ、ようやくついた膝をあげ、震える足に力をこめて立ち上がった男の自慢の髪が、てっぺんのやや後ろ、きれいにそられたようになくなっていて、見送るセリがその後サモンに惚れ直したのは別の話だとしても、この話を聞いたセイテツも、おかげですこしはすっきりとした。
シュンカとはじめて会ったとき、あのホムラとかいう男、もっと徹底的に潰しておくべきだったかと、この男らしくもない考えをめぐらせば、ぽん、と頭を叩かれた。
「――セイテツさま、なんだかこわい顔をなさってますよ」
「・・・・・うん・・すまん・・あ~まただ。また、お前に助けられた。どうにもこの頃いかんなあ」
抱えた子が、男の頭をあやすように何度か撫でた。




