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第一章 不思議なブレスレット

「あなたは今の世界に満足していますか?」


 コンビニで飲み物を買い、みちの家へ行く途中。そんなときにこんなことを聞かれた。

 黒の三つ編みに黒のワンピース、素朴で素直そうな顔は魔女っぽく見えてもまともな人っぽい。いや発言が危ないから、まともな人では無いだろうが。


「無視しないで。ほらこのブレスレットさえあれば、この世界から逃げることが出来ます」


 その人は私が持っていた鞄にするりと何かをいれて、立ち去っていった。


 ブレスレットって何のことだろうか? 私は気になったので、鞄の中を探ってみる。


 あった、いれたはずのないブレスレットが。太陽の光を受けてキラキラと光るそれは、不思議なブレスレットだ。返したいけど、周りに持ち主はいない。


 しゃーない。これも持って帰ろう。それで次に外出するときに警察へ持って行こう。


「帰ったよ~」


「おかえり、さくらちゃん」


 手慣れたように合鍵を使って家の中へ入り、みちに話しかける。


「あっさっきラジオ番組終わったん?」


 みちの家から出るまでに聞こえていた、アニメや漫画などが好きなおねーさんの声がしない。どうやら私が買い物をしている間に番組が終わってしまったらしい。ちょっと残念だな。


「今10時半過ぎだから。子供向けの番組をやっている」


 昨日掃除をしたからそれほど散らかっていない個室で、みちはベッドにごろごろと寝転んだまま答える。


「はい、野菜ジュース。寝たままだと、そのうち体が動かんくなるで」


「別にええやん。ぼくが生きてたところでええことなんてあらへんし」


「そんなことあらへんって。例えば私と話すとか、存在価値はあるって」


「いやさくらちゃんにはぼく以外の普通の友達とかおるやろ」


「おらへんって、そんなん。おったら毎日みちの家に来るわけないやん」


「それもそやな」


 納得したのかみちは野菜ジュースを飲み始め、私も買ってきたオレンジジュースを飲む。


 聞こえてくるのは子供向けの本を読み聞かせているような優しい声、見えているのはみちと適当に物が置かれた少し綺麗な部屋。机の上にビニールでなぜか厳重に包まれた本がある。


 そんな閉じ込められた狭い部屋に私達はいる。


「そうや。この世界から逃げることが出来るというブレスレット押しつけられたんやけど」


「そんなん、嘘かSPCオブジェクトやろ。実在するわけないやん」


「そうやな。でも高そうな物やから、持ち主に返そうと思うねん」


 先ほど押しつけられたブレスレットを蛍光灯の光にさす。この感じからすると高そうで、自分で持ってはいけない気がする。


「持ち主って誰か分かるん?」


「分からへんから警察へ持って行くねん」


「それがええかもな。もしほんまにSPCオブジェクトなら、大変なことになるから、早めに手放した方がええで」


「いやいやSPCなんて創作の話やろ、現実にあるわけないやん。むしろそれよりもファンタジーって感じがしたもん」


 これを押しつけてきた相手は魔女っぽく、オカルトとは無関係に見えた。SPCはオカルトやホラー関係のイメージが強いので、このブレスレットとは合わないはずだ。


「SPCの中にも異世界云々とかあるから、この世界から逃げるって言うのはありえそうな気がすんねんけど」


「そんなパラレルワールドとは無縁な感じがするで。ほら最近流行の異世界転移とかできそうやん」


 異世界転移物では西洋ファンタジーっぽくて魔法が出てくる世界が多い。そこでその可能性は高い。


「異世界転移ね、そんな世界が変わったくらいで幸せにはなれへんで」


「そんなー、異世界転移して幸せになるって話多いで」


 異世界転移して可愛い女の子と仲良くしたりイケメンに溺愛されたりと、色々な経過はあるものの幸せになれる物が多い。


「フィクションはフィクション。現実は現実やん。こーんな引きこもりのぼくが幸せになんてなれるわけないやん。どこに行っても同じや」


「……そんなわけあらへんと思うけど」 


 みちはこの世界で生きていくのが難しい。私だって上手く生きることはできていない。それでも他の世界に行けば、みちや私が上手く生きることもできるかもしれない。


「それほど認められへんねんって、幸せになるってことが。あっブレスレット光っとる」


「嘘やろ」


 いつの間にか机の上に置かれていたブレスレットは強い光を放ち、私とみちをすっぽり包んでいた。私はとっさに机の上にあった本でブレスレットの光を防ごうとしたが間に合わない。


 意識が遠のいていく。本を強く持ったまま、やばい、そう思った。


SPC→SCP財団(http://scp-jp.wikidot.com/)に関係する物のことです。呼び方が違うのは2人とも記憶があやふやで勘違いしているからです。

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