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父大好きっ子

作者: 冬空

その日はとても機嫌が良かった。


久しぶりに家族全員でのお出かけが叶った日だったから。


私は楽しみで高鳴る心臓と気分に酔いしれながら急かせるように両親を後ろからグイグイ押して馬車に乗るよう促すと両親は微笑ましげに笑みを浮かべて私に促されるまま馬車に乗り出発した。


馬車の中では近居報告を兼ねた雑談に花を咲かせているとあっという間に今日の目的地に着き、御者が開けた扉から私達家族は降りた。


降りてすぐに私は上に掲げられた看板を見て笑みを浮かべる。


『百合のフラワーガーデンへようこそ』


看板にある百合という方は異国の国から来たそうでこの国では見たこともない花を育ているという噂だ。

その育てている花のどれもが綺麗で市井だけに留まらず、貴族の間でも噂になるほどでここに来た友達から話を聞いていた私はずっと来てみたかった。

その願いが家族全員で来る事が叶い、私は幸せでいっぱいで口角がさらに上がって行く。

そんな私の想いが両親にも伝わったらしく、嬉しそうに笑う。

両親と手を繋ぎあった私は父の『今日は思う存分に楽しむぞ』との掛け声を切っ掛けにして二人を引っ張るようにフラワーガーデンの中へと入って行く。


中に入ってすぐ私達は目を見開いた。噂や話で綺麗だとは聞いていたけれど、その内容だけでイメージした光景と現実とでは全く違い、現実の光景の方がより綺麗だった。


見た事も無い花があちらこちらに存在し、園内の中心にある小さな池の上には平たい皿のような葉が幾つも浮かび綺麗な赤い花がその池を彩るように疎らに浮かべられており、池を花や葉で彩るという発想がなかった私達にはとても新鮮な光景に映った。


それから私達は時計回りに花を見て周りつつ、無料で貸し出されている園内限定の植物図鑑で調べたりしてる内にあっという間に時は過ぎ、気づいた頃には日暮れ時を迎えていた。


あっという間に終わった楽しい時間に私は満足感を感じつつも寂しさを感じていた。

また今度くれば良いと心の中では思うものの、中々時間が取れない父とまたいつ家族全員で行けるのか全く分からない。

そんな私の心情を母が見抜いたのか「また今度、そうね……年が明ける前にまた来ましょう。アナタ、予定を開けておいてね」っと、私に微笑みつつ父に指示していた。


父は驚きに目を見開きつつ、暫く母を凝視すると諦めたように首を振るうと私の頭を撫でながら分かったと返事を返す。

私は思わずその場で喜びの声を上げ父に抱き付き絶対だからね!絶対だよ!と念押しするように何度も言うと父は苦笑した。


言ったからには約束は守ると格好いい事を言う父に私は嬉しくて大好き!を連呼すると父は満面の笑みを浮かべた。

その表情を見てるとまた家族全員で来れるんだと予感めいた安心感を感じて思いっきり父に抱き付く。


目一杯抱き付いた後には母も交えて今度は何処から見ようか、季節の変化があるだとか話ながら帰路に就いた。


余談


私が大好き!を連呼していた時、母に何か言われたのか父は何故か怒っていたけれど「嫁には出さん!」と言っていたのは何の事だろう?

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