最初の5か月
拙著『臨海A型作業所』の続編であるが、手元にそれがない人にも感じ取れるものを含んだ現代日常の物語である。
発達障害者というふた昔前までは変り者と言われている人について、触れている。
現代は障害をラベリング貼りをして、それにかかわる職業人との相互作用により生きていくように仕向けられている世の中である。
第二次ベビーブーム世代に生まれたらんどは、自身の障害を除いては運がよい人間である。弱い自分でもなんとか50歳を迎えて生きているからである。
これから、らんどを取り巻く事柄を述べていくが半ばは著者のエッセイが散りばめられており、このことが前回の書との連続性がわかる人にとってはいろいろと今の世の中を慮る種にもなっている。
熟年期にさしかかったらんどは製紙工場に通い来月で有給10日を得ることができ、嬉しそうだ。
人類の代表という誇大妄想を抱える発達障害者であるが、一方ではつまらない市井の人である。
就労は一般企業であるが、手帳を持ってのいわゆる障害者として雇用されたので、清掃員でもあるようで身分は用務員といった感じである。
最大5年間という契約の有期雇用従業員であるが、ただいま5か月経過しており、いろいろな変化が起こり、皆のためにいったん書いておいた方がよさそうだということで今回、筆を取った次第だという。
少し太った感じの体だが200キロを超えるバームクーヘン紙を扱うには都合がよく、身体の動きが緩慢だと会社の先輩からも言われてきたが、そのようなか弱い女性ではなく男として生まれてきて今の仕事をやっていくには良かったと感じているこの頃であった。
らんどは独りで生活していくには物足りなさがあるが、家族をもって破綻するよりはずっと今の暮らしぶりが適切なものだと実感している。