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4.トマトジュースとオレンジジュースのノンアルコールカクテル

「このカクテルとやらは美味いな」

 魔王様は上機嫌でごくごくと飲んでいく。タイランさんも「ああ」と軽く返事をしながら、すっかり夢中の様子。


 特製ノンアルコールカクテルはトマトジュース好きの二人の胸に刺さったらしい。


「トマトゼリーもなかなか美味かったが、これも美味いな」


 魔王様はほおっと息を吐く。

 ちなみにトマトゼリーは無事に完成し、昨日のおやつに出したのだ。湯むきしてざく切りにしてから煮詰める。あとは他のゼリーと同じ要領で作るだけだった。何事もトライしてみるものである。


 ということで今度は魔王様が好きな、トマトジュースとオレンジジュースの組み合わせたノンアルコールカクテルを作ってみた。すると意外にも美味しく、ミギさんとヒダリさんにも好評だった。


 なので二人にも出してみた。そしておかわりを想定して、ワゴンにはオレンジジュースとトマトジュース、水を載せてある。


「おかわり!

「俺も」


 二人から出されたコップに飲み物を注いでいく。

 こんなに気に入ってもらえるのなら、前世でもこういうのを学んでおけば良かった。ぼんやりとそんなことを思う。


 お酒にはとんと興味がなく、ノンアルコールとはいえ、カクテルも全くだ。

 だがよくよく考えればノンアルコールカクテルはほぼジュース。たまにアルコール度数が低めのものもあるが、こうして魔王様に出せるものだって沢山ある。


 カクテルの本って魔王城にないのかな?

 今からでももう少し勉強したい。片付けが終わったらオルペミーシアさんに聞いてみよう。


「ダイリ、どうかしたのか?」

「もっと飲み物について学びたいなと思いまして」

「もっといろんなものが飲めるのか!」


 目を輝かせる魔王様とは打って変わってタイランさんの表情は曇っている。何か悪いことでもあったのだろうか。


「タイランさん、どうかしましたか?」

「飲み物もいいが、俺はおやつが食べたい」


 力強い言葉に思わず目を丸くする。だがなんともタイランさんらしい理由だ。トマトジュースは好きだが、タイランさんには物足りなかったのだろう。


「はっ! そうだな。トマトジュースは美味しいが毎日飲み物は嫌だぞ。おやつをもっともっと食べたい!」


 ハッとして加勢した魔王様は「おやつ、おやつがいいぞ」と私の袖を引っ張る。とても必死で、まるでおやつの危機がやってきたかのよう。


 飲み物の本探しは少し先送りにしよう。


「じゃあ明日は他のおやつを作りますね」

「うむ! 美味しいものを期待しているぞ」

「ポップコーンは沢山食べたからポップコーン以外がいい」

「分かりました」



 美味しいポップコーン以外のおやつ。かなりざっくりとした要望だ。

 だが魔王様のあの反応は新しいおやつを期待しているように見えた。タイランさんはすでに出したことのあるおやつでも満足してくれると思うが……。


 二人の食器を片付け、ワゴンを転がす。

 キッチンに戻りながらうーんと考え込む。けれどなかなか良い案が浮かばない。すぐにキッチンへと戻ってきてしまった。


「おかえりなさい、ダイリさん」


 声をかけられ、顔を上げる。

 すると二人はたまごがぎっしりと入った箱と牛乳瓶が入った箱を抱えていた。食材を取りに行っていたらしい。


「表情が暗いですね。喜んでもらえなかったのですか?」

「喜んでもらえましたよ。今は明日のおやつに悩んでいて……。新しいものがいいと思うんですけど」

「私達も力になれるといいのですが……」


 ミギさんとヒダリさんは声を重ねながら、うーんと唸る。

 とりあえずたまごと牛乳を冷蔵庫に入れながら考える。ついでに良い材料がないか探っていく。


 けれどたまごと牛乳をしまい終わっても、良い案が浮かばない。

 どうしたものかと考えていると、ふと朝食べたパンが目についた。


 パンはミギさんとヒダリさんがその時々の料理に合わせて焼いてくれるので、日々様々な種類のパンを楽しんでいる。そして今日の朝食に添えられたパンはバケットだったのだ。


 バケットに、先ほどしまったたまごと牛乳ときてピンと閃いた。

 明日はフレンチトーストにしよう。


「表情が明るくなりましたね」

「いい案は浮かびましたか?」

「はい。明日はパンヴェルデュします」

「パンヴェルデュ?」

「それはどういうおやつなのですか?」


 パンヴェルデュとはフレンチトーストの別の呼び方である。

 日本のパン屋さん以外だとこの名前を使っている店も多い。といっても呼び方が違うだけで作り方は同じだ。これなら手軽に、かつ今ある材料で作れる。


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