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2.ポップコーンはパクパクと

「出来ました。あっという間でしたね」

「キャラメルのポップコーンも美味しそうです」

「早速三人で食べましょう」


 二人が用意してくれたお茶とポップコーンを持って隣の部屋に移動する。


「塩は手で摘んで食べましたが、キャラメルも手で大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。手についた塩は後で洗いましょう」


 魔王様とタイランさんに持って行く時はお手拭きを付けよう。そう決めてまずは塩味のポップコーンに手を伸ばす。


「うん、美味しい」

「出来立てが美味しいと聞きましたがこれまでとは」

「塩もよく合っています」


 塩味のポップコーンはシンプルだからこそ材料の味と質がダイレクトに反映される。二人が選んだ塩はやはり美味しく、乾燥トウモロコシの実も質の高いものを買ってきてくれたのである。


「美味しいですね」

「美味しいです」


 気づけば二人はキャラメル味にも手を伸ばし、塩味と交互でパクパクと食べている。

 ポップコーンの良いところは安くて手軽に作れて、パクパクと食べられるところにある。だからこそ前世の映画館では大抵ポップコーンを売っていたのである。


「はっ!」

「あっ!」

「どうしました?」


 ミギさんとヒダリさんの声に驚いて手を止める。視線を上げると二人揃ってわなわなと震えている。


「こんなに食べてしまいました」

「魔王様とタイランの分が……」


 パクパクと食べていたからか、二種類のポップコーンはほとんどなくなっていた。これを魔王様とタイランさんに出せば確実に足りないと言われることだろう。

 だが私は初めからもう一度作るつもりだった。

「もう一度作るので気にせず食べてください」

「本当に食べてしまって良いのですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます」

 そう告げると二人はポップコーンへと手を伸ばし始めた。


 再び二種類のポップコーンを作り、王の間へと持っていく。すでにテーブルのセットは出来ており、魔王様とタイランさんが腰掛けていた。


「今日のおやつはこちらです」

「これはなんだ?」

「ポップコーンだな」

「タイランは知っているのか?」

「師匠と出かけた国で何度か見かけたことがある。だがあの時は大して興味も引かれなかったな……」

「ダイリが作ってくれたものなら美味しいに決まってる!」

「だな」


 魔王様は拳を固めて宣言する。その言葉にタイランさんはコクコクと頷く。少し恥ずかしいが、美味しいと言ってもらえて嬉しい気持ちが勝る。


「ところでこれはどんなおやつなんだ? 全く想像がつかないんだな」

「我も気になる」

「以前お出ししたコーンを覚えていますか?」

「うむ。あれは美味かったな」

「城に来たばかりの頃、ダイリが出してきた野菜だろ?」


 あの時はコーンスープに使われているトウモロコシということで、茹でたものを出した。

 素材本来の甘さに魔王様は大満足で、タイランさんも完食していた。だからよく覚えているのだろう。


「あれと同じ野菜の品種違いなんです。こっちの品種は乾燥させてから熱を加えるとこうやって膨らむんですよ」

「種類が違うとこんなにも変わるのだな」

「コーンがこんな形になるのか……」


 二人とも驚いているようだ。私も初めて見た時はびっくりした。


 それは生まれ変わる前のこと。

 あの時は弾けるところが面白くて、母にもう一回もう一回とねだったものだ。


「今日はそれを二種類作ってみました。こちらは塩味でこちらがキャラメル味です」

「キャラメル! 我はキャラメルを食べるぞ」

「なら俺は塩からもらおう。人間界で見かけたのもこんなだった気がするしな」


 二人はそれぞれ異なる味のポップコーンが載ったお皿を自分の前に持っていく。飲み物の用意が終わると、二人同時にポップコーンを一つ口に運んだ。


「美味い」

「ああ美味いな」


 それだけ言うと黙々と食べ始めた。

 いくつか食べた後でタイランさんが塩味ポップコーンのお皿をスススと魔王様の前へと移動させる。すると魔王様も同じくキャラメル味のポップコーンの載ったお皿をタイランさんの方へと移動させた。


 そして交換したお皿に手を伸ばし、パクパクと食べ始めた。

 言葉すらいらないとは、よほど気に入ったらしい。


 二人を見ているだけで楽しい。

 私は紅茶を啜りながら、二つの口に吸い込まれていくポップコーンを眺めるのであった。


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