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7.クレープ会

 おやつ会当日。

 いつもよりも早い時間にキッチンに立つ。今回作るおやつはクレープである。


 おやつと言いつつも、食事を摂らせることが目的でもある。

 生地の甘さを控えめにした、おかずクレープにすることにした。


 具材はハムやレタス、チーズにトマトとおかずになりそうなものをメインに。

 ソースはミギさんとヒダリさんが普段サンドイッチに塗っているものを用意してくれたので、ありがたく使わせてもらうことにする。


 その他にも生クリームとジャム、果物も用意することにした。

 これらはそれぞれお皿に用意し、好きなように包んでもらう予定だ。


 ちなみに甘い物は最初から出さずに、途中で出す。魔王様は残念そうだったが、タイランさんのためだと言えば頷いてくれた。


 中身は簡単なものばかり。

 クレープ生地を作ったら、後は生地を流し込んでは焼いて、ひっくり返して、を繰り返していく。


 生地がなくなった頃には、山盛のお皿が四つほど並んでいた。


 これだけ作れば足りることだろう。

 余ったら、ミルクレープアイスにしよう。クリームにチョコレートを混ぜて、チョコ味にするのもいいかもしれない。


 そんなことを考えながら、クレープと具材を載せたキッチンワゴンを転がしていく。



 裏庭に到着すると、招待客が勢ぞろいしていた。

 テーブルには花や可愛らしいウサギのぬいぐるみが置かれている。後はメインのクレープを待つだけの状態だ。


「ダイリが来たぞ!」

「おやつの聖女さん、こっちよ」

「ダイリちゃん、いらっしゃい」

「お手伝いいたします」

「これがクレープですか」

「ホットケーキを薄くしたような見た目ですね」


 みんな初めてのクレープに興味津々だ。じいっと見つめている。


 クレープの山をテーブルの上に等間隔に並べ、それぞれの前に大き目の皿を置いていく。具材の載ったお皿は空いた隙間に適当に置いていく。


 甘いものはワゴンに隠したまま。

 紅茶の用意も整い、クレープの食べ方の説明に入る。


「このお皿に積まれたクレープを手元のお皿に取っていただいて、その上に好きな具材を盛りつけてください。ナイフで切って食べるもよし、巻いてから手で食べるもよし。好きな食べ方でどうぞ」


 あまりにもザックリとした説明に、みんな目を丸くしている。


 なので私が初めにクレープを取り、盛り付けて食べてみることにした。


 ハムとトマトとチーズとレタスを載せ、ミギさんとヒダリさんの特製ソースをかけて巻けば、特盛サラダクレープの完成である。


 少し盛りすぎてしまうのも、自作クレープの醍醐味である。溢さないように、大きな口を開けて頬張った。


「ほうあってあえまふ」

 そう伝えると、皆が大きく頷いた。少し恥ずかしい。けれど食べ方は伝わったらしい。各々クレープに手を伸ばし始めた。


「おじいちゃん、メティ、その葉っぱ欲しい」

「こっちの赤い実は?」

「それも食べたい!」

「タイラン、我はチーズが欲しいぞ。取ってくれ」

「ん」

「キラキラしたおやつを眺めるのもいいけれど、こういうのもいいわね」

「オルペミーシア。のんびりしているとなくなりますよ」

「ソースはもう少しまろやかにした方が食べやすいでしょうか」

「いや、これくらいの方が野菜と絡んでいいのでは?」


 みんなで机を囲んで食べるのは初めての試みだったが、すんなりと受け入れてくれたようだ。


 すでにお気に入りの組み合わせを見つけようとしている。



 魔王様だけはワゴンに甘い具材もあることを知っているからか、ワゴンをちらちらと見ているが、クレープも具材も順調に減っている。


 気に入ってもらえて良かったと、ホッと胸を撫で下ろす。

 するとタイランさんが席を立ち、こちらへとやって来た。


「心配かけて悪かったな」

「え?」

「ダイリが心配していると、魔王から聞いた。この会も俺を心配して開いてくれたんだってな」

「忙しいのはタイランさんが頑張っているからだと思うのですが、あまり根を詰めすぎないようにしてくださいね」

「気を付ける」


 そう告げたタイランさんに「実はこの後ジャムも用意しているんですよ」と告げ、ワゴンからジャムのお皿を取り出した。


 すると彼の目の色は変わっていく。

 今までも美味しそうに食べてくれていたが、やはりジャムの力は恐ろしい。すぐに自分のお皿の上にクレープを確保し始めた。


「あ、ズルい! メティもクレープいっぱい欲しい!」

「我も我も!」



 甘いクレープタイムに突入してからはさらに盛り上がり、大量に焼いたクレープは一枚も残ることはなかった。


 むしろ魔王様は「もう少し食べたかった……」と残念そうだ。


 こうしてクレープ会は大絶賛の末に、幕を閉じたのだった。


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