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36.はじめてのおやつは一口ドーナッツ

「ケルベロスの食べているおやつを見て、ってことは似たようなものがいいかもしれないわ」


 ケルベロスのお気に入りはホットケーキである。

 だがホットケーキは贈り物としては適していない。なら同じような材料で作れるドーナッツの方がいい?


 一枚一枚焼く必要があるホットケーキとは違い、ドーナッツなら続けて油に生地を投入することが出来る。


 大きさは小さく、一口ドーナッツにして、ピックを付ければ食べやすいかな。


 シエルさんとオルペミーシアさんからもらった意見を参考に、パチパチとピースを組み合わせていく。


 シンプルにプレーンだけもいいけれど、それだと少し寂しいから紅茶とレーズンを入れたものもそれぞれ作ろう。


 好き嫌いはあると思うが、三種類あればどれか気に入ってくれることだろう。


「ありがとうございます。一口ドーナッツを作ることにします」

「力になれて良かったわ。ところで先ほどもらったジャムクッキーなのだけれど」

「お口に合いませんでした?」

「逆よ! とっても美味しかった。りんごって今まであまり食べてこなかったけど、あんなに美味しいのね。だからりんごを使ったキラキラおやつが他にもあったら食べたいわ」

「りんごでキラキラですか……」

「思い浮かんだ時でいいから、よろしくね」


 悩みを解決しに来たのに、新たなリクエストを受けてしまった。


 彼女と分かれてから、今度はりんご料理について考える。だがこちらはすんなりと浮かんだ。


 りんごのキラキラと言えば、日本の夏祭りの定番、りんご飴である。


 今世では見かけたことはないが、前世では何度か作った。

 ちょうどこの前送ってもらったりんごの中に小さめのものがあったので、それを使おう。大きいりんごで作ると包丁で切る必要があるが、小さめならかぶりつける。



 翌日は早めにおやつ作りに取り掛かることにした。

 なにせ今日のおやつは盛りだくさん。渡す相手は違うとはいえ、大きく分けても三種類。クッキーとドーナッツはそれぞれ数種類作るので大忙しである。


 日にちを分ければいいとは思うが、せっかく興味を持ってもらえたのだから早く作りたかった。


 それにどれも難しくはない。

 同時進行でも可能であるという点も、同日に作ると決めた理由である。


 飴を乾かす時間も考えて、りんご飴・クッキー・一口ドーナッツの順で作ることにした。



 調理台に大量の材料を並べ、ミギさんとヒダリさんに手伝ってもらいながらサクサクと進めていく。


 まずはりんご。綺麗に洗ってからよく乾かす。風魔法も手慣れたものだ。乾ききったら軸を取り、その辺り目がけて串を刺す。


 次は飴づくり。材料は砂糖と水だけ。

 前世では綺麗な赤色にするために食紅を使うこともあったようだが、今回は使わずに作るつもりだ。



 鍋に二つの材料を入れ、透明でとろみも出るまで加熱する。

 飴が完成したら、りんごを鍋に入れる。串を指で回転させるように付けると、表面の飴が一定になりやすい。

 大量につけすぎるとパリッと感が失われてしまうので、鍋の上で浮かせて飴を少しきるといい。


 試食用も合わせて四つ用意したりんご全てに飴を纏わせ、バットの上に置いて乾かす。

 一時間もあれば乾いてしまう。



 乾かしているうちに、クッキーづくりに取り掛かる。

 ジャムクッキーの他に、プレーン・セサミ・うずまきクッキーを作るつもりだ。こちらは今まで何回も作っているため、ミギさんとヒダリさんが協力してくれることになっている。


 三人でテキパキと作っていく。

 ちなみに今日使用するジャムはアプリコットとりんごの二種類。クッキーだけでもそこそこの数が出来た。



 最後は今回一番力を入れる一口ドーナッツ。使用人が何人いるのかは分からないので、とりあえず多めに作る予定だ。容器とピックも大量に用意してもらった。

 少しではあるが、魔王様とタイランさんの分も確保するつもりだ。


 三つのボールに生地を用意してから、二つのボールにそれぞれ紅茶葉とレーズンを入れていく。

 スプーンを二本使い、掬いながら丸くなった生地を、温めた油の中に投入していく。


 百六十度の油で三~四分程度。

 きつね色になったドーナッツを油を切りながら揚げ物バッドに載せていく。


「それぞれ一つずつ、計三つをカップに入れていけばいいのですよね?」

「お願いします」


 出来上がったドーナッツはミギさんとヒダリさんに託し、焼きあがったクッキーにジャムを塗っていく。忙しい。

 けれどお菓子屋さんになった気分でとても楽しい。


 最後にりんご飴の表面がしっかり乾いているのを確認して――。


「完成!」

「こちらも分け終えました」

「早速食べてもいいですか?」


 作っている間も、二人はずっとりんご飴を気にしていた。

 今まで作った中で一番簡単に作れるおやつだが、彼らにとってはこれもはじめて見るおやつには違いない。


「どうぞどうぞ。今回は小さなりんごを使ったので、がぶっといっちゃってください」

「それでは遠慮なく」

「これは! 飴の甘味とりんごの甘味がよく合っていますね」

「酸味が少しだけあるのもまたたまらない」


 思ったよりも好評だ。

 通常サイズのりんごで作った場合、包丁で切ってから食べるのが一般的である。


 そのままかぶりつけば最悪、歯がダメージを受けるので仕方ない。とはいえ、包丁を使えば、断面周りの飴は崩れてしまう。


 まるごとかじった方が本来の味を楽しめるのである。そこで小さなりんごを使ったのだが、その判断は正しかったようだ。


 良かったと見守っているうちに食べ終わってしまった。小さい分、食べ終わるのも早いのだ。


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