表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/83

1.与えられた部屋

「ダイリを部屋まで案内してやれ」

「かしこまりました」


 蒸しパンを全て平らげた魔王様は近くのメイドに指示を出す。

 私を案内してくれるのは先ほどキッチンに案内してくれたメイド風の魔人である。彼女に案内され、長い廊下を歩く。


 煌びやかな廊下をしばらく歩くと一気にシンプルなドアが並び始める。居住エリアと外向けのエリアが分かれているのか。道順を忘れないように周りに置かれた花瓶や絵を記憶しておく。


「花瓶などは全て好きな物に変更して構わないと、魔王様から言付かっております」

「え?」

「ダイリ様が覚えやすいように、と」

「あ、ありがとうございます」

「お礼にはおよびません」


 道を覚えるのは苦手ではないが、お城というだけあってかなり広い。一人で歩けば確実に迷うことだろう。目印となるものがあるだけではなく、自分好みに変更出来るのは正直助かる。

 ここに来るまでに何度か食べ物関連の絵があった。キッチンや王の間に向かう道中で曲がる場所にあれを配置してもらうことにしよう。


 とはいえ、元の配置はおそらく全体のバランスを考えてのもの。

 人間との争いがなくなったとはいえ、王の間への道順の手がかりを残すことは魔王城として大きなマイナスであることには違いない。


 気を遣われすぎるというのも性に合わない。早く慣れよう。

 名前よりもこちらの方が大事だ。そして一日でも早く元の配置に戻してもらおうと心に誓う。


「こちらがダイリ様のお部屋になります」

「広い……それに綺麗!」


 案内された部屋は、実家で妹と一緒に使っていた部屋よりも広い。なんなら前世で住んでいたアパートよりも広い。


 真ん中にはドドンとキングサイズのベッドが置かれている。しかも天蓋付きである。漫画やアニメでしか見ることのなかったそれが当然のようにある。


 さすがお城。だが部屋自体が華美という訳ではない。

 むしろ超が付くほどシンプルで、色も目に優しい色合いだ。家具もベッドの他には机と椅子、クローゼットがあるのみである。


 色々あった方が落ち着くという人も多いとは思うが、私はシンプルなくらいが落ち着く。

 ダイリという名前は気に入らないが、実際私は代理である。それに前世も今世もごくごく一般的な家庭で育った。凄く豪華な部屋なんて用意されたらむずむずとしてしまいそうだ。


 居住エリアを歩いていた時も思ったが、ここはとても落ち着く。

 もちろん大きな身体に牙や角が生えた魔人と遭遇したら一気に怖い空間に変化するが。それでも「ここがあなたの部屋です」と言われてもすんなり受け入れられるほどには好みであった。


「そちらのドアがそれぞれ、お手洗いとシャワールームになっております。またこちらの部屋にあるものは全てご自由にお使いください。お気に召さないものや必要なものなどございましたら、そちらのベルをご利用ください。私か、代わりの者が参ります。お掃除とお洗濯は全て私が担当させて頂きますのでご安心ください。またお食事ですが、ダイリ様の好きなお時間にベルを鳴らして頂くか、キッチンに足を運んでくださいませ。キッチンではコックが対応いたします」


 ホテルのお客さんみたいな扱いは少しそわそわしてしまうけれど、代理だろうと客人は客人。無理に断れば相手の立場や機嫌を損ねてしまう。

 部屋に入られて特に困るようなこともない。コクリと頷いた。


「分かりました」

「他にご不明な点はございますでしょうか」

「いえ、大丈夫です」

「それでは失礼いたします」

 去って行くメイドを見送り、早速クローゼットへと向かう。魔界に来てからもずっと袋に入れっぱなしだった服を外に出してやろうと思ったのだ。


「それにしても服を買った後で良かった……」

 今着ているものと合わせれば五セット。洗濯もしてもらえるとなればしばらくは着回すことが出来るだろう。

 身長は今さら伸びないから、二年くらいなら持ちこたえてくれると信じたい。洗濯機などもないので生地の消耗も少ないはずだ。若干ペラペラになったとしても私は気にしない。


 問題は買ったものは全て今の季節の服だということ。つまり季節が変わって、寒くなったり暑くなったりすると着る服がない。


 そもそも魔界の気温は人間界と同じなのか。そこから疑問が始まる。

 なにせ一般人が魔界に行く機会などない。冒険者ですら魔界に行く人間はごく一握りだという。気温に合った服よりも、防御力や動きやすさを重視した服を選んでいたに違いない。


 魔族側に尋ねるにしても、彼らが気温を気にしているのかすら怪しいものがある。


「まぁ後々聞けばいっか。少し先のことよりこの環境に適応する方が先!」

 報酬が出る上、食事と部屋まで用意してもらえるだけでもありがたい。寒かったら羽織るものでも借りることにしよう。


 そう思ってクローゼットを開けば、中にはずらりと女性ものの服が並んでいた。それも高そうなものばかり。隣のクローゼットを開いても結果は同じ。


 自由に使って良いと言われたが、もしや誰かが使っていた部屋なのだろうか。急に移れと言われたのかもしれない。


 前世の家具付き物件だってさすがに服までは揃っていない。後で取りに来るなら変に弄るのもよくない。


「面白い」「続きが気になる」など思っていただけたら、作品ブクマや下記の☆評価欄を★に変えて応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ