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第28話 魂の鑑賞会

 翌日になり、朝食の合図で起こされたカナは寝ぼけ眼でロロとともに食堂へと向かった。

 グイエン侯らと顔を合わせて食べる朝食は、さすが貴族ならではの豪華な食事が用意されている。

 小麦の焼きたてパン、新鮮な野菜サラダ、ハーブやスパイスが詰め込まれた子牛のパテ、赤ワイン漬けの牛肉煮込みシチュー、セップ茸のソテー、野菜のポタージュなどが使用人によって個別に取り分けられていく。

 カナはこの中で野菜を除外し、肉料理ばかりを好んで食べていた。


 鬼だから肉しか食べれないということはなく、野菜でも何でも食べれるし、食べるように教育されてはきたが、そこはやはり好みというものがあるのだ。

 教育的な縛りから解放されたカナらお子様が、美味しいと思ったことのない葉っぱをムシャムシャする気にならないのは当然のことと言えよう。


 ポタージュは野菜で作られているが、こちらはゆっくり味わって飲み干した。

 食器には野菜サラダだけが綺麗にお残しされ、カナもロロも久々に豪勢な食事がとれて満足げに部屋へと戻った。



 朝食のあと、城のメイドに案内されて、城内の一室へと向かった。

 ここは、先ほどグイエン侯に頼んで用意してもらった空き部屋であり、その目的は聖騎士クリストハルトとの約束、聖騎士にして邪教の信徒であったガリウスの記憶を映すためである。


 城の地下にあるこの場所は元々は拷問用の部屋であったのだが、長い平和の間に必要がなくなり拷問器具も捨てられて、今では臨時の倉庫でしかないらしい。

 ろくに使われていないだけあってカビ臭いし、光源は壁に掛けられたロウソクだけで薄暗い。

 事前に掃除はされているのかホコリはないが、部屋自体が水気が強いのは付近に川が流れているからだろうか。

 中央のテーブルの上には特別大きな受け皿が用意され、周囲には燭台が並んでいるのだが、これらはすべてカナが用意させたものだ。


 部屋の中にはすでにクリストハルトをはじめ、希望者らが集まっており、カナの到着を待っていた。


「それでは術の準備をするのでちょーっと待っててくださいね」


 カナはそういうと、早速しゃがんでそそくさとテーブルの上ので作業を始めた。

 大きな皿に水を注ぎ、五芒星の形に燭台に並べて火を灯していく。


 ロロの方はというと、椅子に座り、静かに目をつむっている。

 視えるものには視えているが、空間にきらりと光る糸のようなものが張り巡らされていく。

 魔術で言うところの結界の構築である。

 魔術では何らかの道具を用いて行うことだが、ロロの場合は“マカ”の制御で場を整えられるのだ。


「カナちゃんさん、私も見てていいのかしら?」

「イブだって興味津々だからここにいるんだろ? 私は見たいし、見るぞ」

「ぼ、……俺なんかがここに居ていいのでしょうか?」


 イブ、マイ、ミルカがそれぞれに口を開く。

 ミルカだけオドオドしているのはイブやマイに誘われて、半ば無理やり連れてこられたからだ。

 とはいえカナのやることに興味はあるので抵抗はしなかったという複雑な感情も混ざっている。


「別に減るものじゃありませんし、好きなだけ見ていくと良いのですよ」


 作業を続けながらカナは気楽に答えた。

 さらさらと白い灰をつかんでは何かを描くようにそれを水にかけていく。

 もう少しかかりそうな雰囲気を察し、マイは視線を移して少し離れた位置で覗く少年に声をかける。


「それよりマルキアスがこの手の儀式を見学に来るのが意外だな。お前、自分のことしか興味なかったろ」

「……う、……俺も倒されていただけとはいえ、関わってしまったからな。……ただの揉め事なら興味もないが、どうも邪教などというきな臭い厄介事のようだ。降りかかりそうな火の粉なら事前に把握しておきたいのは当たり前だろう」


 と、マルキアスは目をつむりながら口数多くわけを語る。

 話を振られると予想していなかったせいか、落ち着きがない様子だ。


「ふーん。前置きなが」


 マイからこぼされた感想に耐えながら、マルキアスはとぼけた顔で無言を貫いた。

 煽られてるのだろうか、とも考えたがただの思い過ごしかもしれないし、余計なことを言うと話題が続いてしまうのでそれは望むところではない。

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