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第20話 カライス海の騎士

 貧乏騎士の長男として生まれたジョルジュは、騎士の端くれでありながら成人すると共に海軍へと預けられることになった。

 他国と陸を接しないカライス領において、軍人が出世するには唯一の戦場である海に出るのが一番だと父が判断したためである。


 当時のカライス近海では行き来する交易商人の船を狙って海賊らが暴れまわっていたため、ジョルジュの父の決断は出世という観点では正しいものであった。

 彼は強すぎたからだ。

 騎士同士の模擬戦では彼に敵うものはいなかった。

 ただのひとりもいなかった。

 あいつは人間じゃない、とすら評された。


 海で騎士に何ができる、とバカにする者もいたが、ジョルジュは慣れぬ海上戦闘であってもその異才を発揮し、父の願い通りに成功者となった。


 海の戦士として頭角をあらわしたジョルジュは、海賊や荒くれものから海を守り続け、船上においても身につけた騎士の戦い方を続けたことで、今では“カライス海の騎士”と呼ばれ畏敬されている。


 やがて、その強さを領主カライス伯爵に見いだされたジョルジュは、模擬戦において前将軍を完膚なきまでに叩きのめし、将軍の座をつかみ取ったのであった。




「実のところ、馬は得意でなくてね」


 ランスを構えるジョルジュ将軍が、苦笑しながらそう口にした。

 少し風が吹いて、森の木々がさらさらと音を立てる。

 これからはじまることへの歓声であるのか、あるいは悲鳴であるのか、それは木々にしかわからない。


「騎士として恥ずかしい話だが、私は海の方が性に合ってるのだよ」

「いいですよね、海。僕も行ってみたいです」


「おお、海はいいぞ。ぜひ行くといい。……海での生活は、当たり前だが馬を使えぬ船の上であった。だが、それでも私が騎士であることに変わりはない。騎士とは馬に乗るものだ。だから、己自身を馬とした」


 同意を得て気を良くしたのか、妙な理屈を真剣な顔で語りだすジョルジュ将軍。

 カナは首を傾げながら、それに疑問を呈した。


「物語などでは、馬に乗ってなくても騎士な人って割といたような。冒険者の騎士ってよく聞きますけど」


「私は形から入るタイプなのだよ」

「あ、そうなのですか」


 そういわれては仕方がない。

 カナは続きをどうぞ、とばかりに手ぶりで話をうながした。


「本来は馬上で用いるランスもそう。馬がないからといって手放すわけにもいくまい。騎士たるもの、ランスを使いこなせないようではな」


「いや、手放せばいいのでは……。そのための剣じゃないんでしょうか」

「だから私が馬役をこなせば解決するというわけだ。ああ、もちろん剣も使うさ」

「こだわりがおありなんですねぇ」


 なんだか面白い人だな、とカナは口を少しだけ歪めて笑った。


「ふーむ。戦いの前にしては意外に他愛ない会話となったな。――それでは。騎士として主君に勝利をもたらすべく、戦わせていただこう」

「マルキアスたちが待っております。手早くどうぞ」


 面白い人だとは思うのだが、カナにものんびり話していられない理由がある。

 マルキアスらは死ぬほどの怪我ではないが、放っておいていい状態というわけでもない。

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