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第56話 トライアングルのメインダンジョン攻略 その④ 中ボス編

 床が盛り上がりモンスターの形を成そうとした時、ハートは既に動いていた。

 素早くソレの後方に回ると、腰の短剣を抜いて構える。それは細剣をそのまま小さくしたような刺突に特化した短剣だった。


「陽 投 直 射 刺 貫!」


 補正ワードを並べるだけ、というシンプルな使用法がより忍者らしさを際立たせる。

 そして言い終わる瞬間にジャンプして短剣を投じる。それと同時にマホの方でもハッキリとそのモンスターの姿が形成される。


 それは先程問いかけてきたスフィンクスと同じ形をしているが、全身が黒く染まっていた。

 名前もダークスフィンクスと表示されている。


 そしてハートの短剣はソレを貫いたらしく、マホの前方の床に突き刺さり、キラリと光る。


「ふぅ、ここはカットですね」


 その一撃で倒したようでマホには聞こえないように呟くハート。

 これはハートだけが知る忍者シリーズの効果の応用で、認識される前に後方から首の前側に打撃と魔法以外の攻撃が通れば一撃死が成立するというものだった。

 そこに他の部位への攻撃は全く加味されない。

 つまり、後方から首を貫きダークスフィンクスを倒していた。

 しかも貫けるだけの補正ワードと武器も計算されている。


「さて、「杖を含む」という選択の3の道。マホさんがどう突破するのか見させて頂きましょう」


 この道は人間が杖を持つ──即ち魔法を使うという選択を意味していた。

 本来ならば武器攻撃では突破の難しいルートだ。ハートも今の方法以外では苦戦してしまう程の。


 宣言通りに瞬殺したハートは一歩引いてマホの様子を窺う。


「もしかしてハーちゃん、もう倒しちゃったの? よ、よーし私も頑張ろー!」


 目の前にある短剣を取りに来ようともしないハートに、自分が終わるのを待っているのだと悟ったマホは気合を入れる。


「さっきのゴーレムがヒントって言ってたし、ファイアは効かないよね。それに硬そう。ダークスフィンクスだし『闇』も効きにくいだろうし……あっ、そうださっきの『光』!」


 マホはぶっつけ本番で『光』を使おうと決める。

 ハートに説明した時に確認して『光』は『闇』と同じ起動と補正の両方を備えたワードだということはわかっている。

 ならば使い方も同じだろうと容易にイメージできた。


「まずは試しに……。アンチダーク・シャイニングフレア!」


 試しに、と言いつつゴーレムに使った爆発魔法よりも使用ワードがレアの『()』の分多い。

 その結果、詠唱もないのに2500のダメージが出る。

 ダークスフィンクスのHPはそれほど高くなく、1/4がそれで削れた。


「今の……どれだけダメージ出たんでしょうねぇ。見るのが楽しみです」


 マホの起こした激しい閃光に、離れて録画しているハートは興奮が抑えられない。


 マホの方はサブウェポンで半減するとはいえ、襲ってきた硬直中に反撃を受ける。

 ダークスフィンクスの両目から黒い光線が放たれマホに直撃し、それぞれHPを1/10ずつ削る。


「うわ、あれ避けるの無理っぽい。でも動かなそうだし横に行けば……」


 硬直が解けるとすぐにその場を離れる。しかし──。


「ええっ!? なんでこっち向いてるのー?」


 動いた気配は一切ないのに、ダークスフィンクスはマホを正面に捉えていた。


 これがハートが出現と同時に瞬殺した理由で、敵対状態だと常にダークスフィンクスはこちらを向く。

 仮にパーティであったとしてもそれぞれの視界には自分を向いたダークスフィンクスが映り、メンバーの誰かをランダムで攻撃してくるという厄介な相手だった。


 逆側に走ってみても変わらなかったので、マホは光線を回避することを諦める。

 そして止まったマホに光線が放たれる。


「なるほど……。止まるとダメなんだ。それならもう魔法撃っちゃうしかないね!」


 被弾をする前に倒してしまえばいい。様子見をやめたマホは杖を構える。


「闇を照らす光よ 魔の根源たる我に応え敵を砕け! アンチダーク・シャイニングフレア・ジャッジメント!」


 そこまで詠唱してしまうと完全にオーバーキルだった。

 必要な分のワードだけを使ったハートとは対極な一撃。


「はは。もはや大型モンスターすらソロで戦えてしまうのも納得ですね。これが見たかったんです」


 これこそがイベントで見てハートが惚れたマホの魔法。

 敵モンスターの姿がなくとも感動すら覚えていた。


「なにこれ。3のカギ?」


 ドロップを確認したマホが首を捻る。


「ああ、それは中ボス固定ドロップなんです。それを道中の銅箱(ブロンズ)に使うと中身をあるワードに固定できるんですが、使うことはまずありません」


「え? なんで?」


 ハートの説明で使わない理由がわからないマホ。


「固定できるワードというのがレアなんですよ」


「あ! 忍者シリーズ! レアを引いちゃダメなんだっけ?」


 そこでようやくマホも理解する。

 こんなところにも運営の罠があった。

 だからハートもネタバレを惜しまなかった。


「ええ、そうです。忍者シリーズを手に入れてから、と思うでしょうが、その時はまた中ボスからドロップしてますからね」


「そっかー。だったらこれはいらないね」


「まぁ、マホさんなら別の使い途を見つけてしまうかもしれませんが」


 だんだんマホというプレイヤーに慣れてきたハートはその発言がフラグだということに気付いてしまった。


「え? そんなことないって」


「はは。さぁ、先に進みましょう」


 笑って誤魔化したハートはそう促すが……。


「進むってどこに……?」


 その部屋には来た道以外、どこにも次への道も扉も見当たらない。


「では一つヒント。僕は途中のモンスターをどう倒しましたか?」


 この階層の謎解きはまだ終わっていなかったらしい。

お読みいただきありがとうございます。


正直ここまでの私の描写では謎の答えを予想しにくいかもしれませんが、一応解くヒントはあります。

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