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第49話 またおかしいヒキをしてる

 火曜日の夜、マホは一人でトライアングルの街を歩いていた。


「うわー。こんなに変わるんだー」


 前日の月曜日、リョウヤとスマイルにギリギリ駆け込んで来たヘヴンリー、そして夜に再合流した際にはティエラも加えてこの街を案内してもらった。

 その最後にギルドに寄ったのだが、そこで受付と話したことでフラグが立ち、イベントと共にNPCが解放されて、次のログインである今日は街並み自体が変化していた。

 リョウヤ達もその変化を見せるべく、ギルドを最後に案内していた。


 ちなみにここの受付は全員が包帯ぐるぐる巻きの正体不明ミイラだった。


 そしてマホは武器屋を目指していたのだが、その変化に足が止まる。

 水路のそばに露店が並び、店員としてNPCが立っている。

 試しに果物が並ぶ店に寄ってみると、向こうから声を掛けてくる。


「お。お前さんオリジンに行く用事はねぇか? このりんごを向こうの桃と交換してきて欲しいんだが……」


 それは所謂お使いクエストと呼ばれるイベントだった。


「えっ? 始まりの街に果物屋なんてあったっけ?」


 既に同じタイミングでこれまでの街にも様々なNPCや店などが追加されていた。

 ただマホはまだ見ていないので実感がなく、思わずそう返してしまう。


「む? そうか、気が向いたらまた来てくれ」


 どうやら了承以外の回答にはこのセリフで固定らしく、会話も終了してしまった。


「ま、また今度にしますね」


 マホはそそくさとその場を離れる。


「これがティエりんの言ってたお使いかぁ。じゃあ、あっちも変わってるんだねー」


 そう呟きながら改めて武器屋に足を向けた。



「おう! ここは武器屋だ! 強化も任せろ!」


 武器屋に入ると筋肉ムキムキの気合いの入った親方がマホを出迎える。


「えっと、これを」


 メニューから「サブウェポンの素剣」を選択すると、「素材を選んでください」と別ウィンドウで手持ちの「モンスターの核」が表示される。


「えーっと……始まりの街の素材を……あっ、これ!」


 マホがそのリストで見つけたのは「スライムの核」。


「チュートリアルで手に入れたんだっけ。この杖もあのダンジョンだったよね……よし、こっちにしよう!」


 直感に従って、「スライムの核」を選び、杖を強化した時のように素剣と核が親方の手に渡る。

 輝く素剣を親方がハンマーで数回叩いて鍛える演出の後、マホの腰に短剣が現れる。

 そして右下に「マホはサブウェポン・魔極を手に入れた」と表示された。


「お? 魔法系っぽい?」


「ガッハッハ、とんでもない仕事をさせてもらったぜ! またよろしく頼むな!」


 実はこれ、サブウェポン限定かつ当たりセリフだ。


 ちなみにハートの時は「面白い仕事をしたぜ!」だった。


「どんな効果だろ……」


 その名前と親方の反応にワクワクしながら再びメニューを開く。


 装備の項目の中にあるそれは、「魔法攻撃補正+50%、硬直時間半減」という「極」の名に相応しいトンデモ効果を備えていた。


「わ、すごい! 硬直半分だって! あの核取っておいてよかったぁ!」


 前半の効果も相当なのだが、マホの目に留まったのは後半の硬直時間半減。

 実際マホが全開の詠唱をすると、そのダメージの大きさから相当な長さの硬直に襲われるので、これまでの経験からそう思うのも仕方のないことだった。


「よーし、今日はちょっと試して明日ダンジョン行ってみよっと」


 案内を受けた時、ここのメイン以外のピラミッドは大体2〜3時間で攻略できると聞いていた。

 なので今日からは先に食事をしてログインしている。

 流石に今日これから向かうとクリアできるか微妙だったので外に出て魔法の試し撃ちをしてログアウトした。



 そして翌日、マホはピラミッドの一つにやってきた。

 罠がなく、道を進むだけの一番シンプルなダンジョンと説明を受けた場所だ。

 ただし、木箱等もなく、モンスターを倒すだけのダンジョンで、ボスのドロップもお金固定とあまり旨味はない。

 それでも時間も短く済み、例の昇格クエストにも都合が良さそうなので真っ先に挑もうと思っていた。


「ここには誰もいないんだね」


 ダンジョンといえば鎧の男がいつも立っていたが、ここには誰もいない。

 ピラミッドの中央部に入り口があり、そこまでピラミッドの段差より細かい階段が伸びている。これは他のピラミッドでも共通の仕様だ。


「よし、行こう!」


 階段を登り、入り口から中に入る。

 しばらく進んで折り返しの階段を降り、その階の中央辺りに広い空間。

 そこにモンスターが一体待ち構えていた。

 スケルトンというネームのそのモンスターは、骨だけの人という姿で兜や鎧を纏い、剣を握っている。


「が、ガイコツ? 確か外とは弱点とかが違うんだっけ」


 この街では北側のメインのピラミッド周辺とマホ達がやってきた南側はモンスターは出ないが、他の街とは違い、東西にもダンジョンが複数あり、その周囲にはモンスターが出現する。

 その外側のモンスターに対しては属性攻撃が気候の影響を受け、それぞれ火に耐性があった。

 しかし、ダンジョン内では気候の影響はなく、弱点も異なる。


「ええと、確かああいうのをアンデッドって言うんだよね。おとーさんから聞いた話だと闇に強くて、聖なる光とか浄化とかに弱い……って、私そんなの持ってないよ!」


 ゲーマーである父親から聞いていたモンスターの種族というものを思い出すが、それと同時に有効な攻撃手段がないことにも気付く。


「とにかくまずはいつもの! ファイア!」


 普段のスタイルで様子見の火球を放つと、向かって来ていたスケルトンが燃え上がり600のダメージが表示され、HPが半分と少し削れる。

 そしてそのまま斬りかかってくるが、サブウェポンの効果で硬直が短縮され、斬られる前に横に跳ぶ。


「おおー! 前なら絶対斬られてたよね。それにダメージも……すっごい!」


 硬直もだが、ダメージが大幅に上昇していることも実感する。


「もしかして火も弱点なのかな?」


 もう1発ファイアを放ってスケルトンを倒すと、「髑髏の仮面」がドロップした。

 ボス以外のドロップは通常通りランダムなようだ。


「え……これ防具なの? いらないなぁ……」


 一瞬表示されたスケルトンの頭蓋骨だけの姿に嫌悪を示す。


「まいっか。先に行こー」


 ただすぐに消えたので気持ちも切り替わる。

 更に下に進む階段があり、その先にリビングデッドというゾンビのモンスターがいたが、こちらも火が通り難なく倒し、先へ進んでいく。

 その階はやや入り組んだ道になるが、ほぼ一本道で時間はかかるがすんなりと進めた。


 そして次の階、階段を降りるとすぐに広い部屋でスケルトンとリビングデッドが何体もうろついている。


「うげ……ここは一気に……。炎の魔剣よ 我に応え敵を斬り裂け! フレイムブレイド!」


 巨大な炎の剣を生み出し、周囲のモンスターを一掃しようと一気に横に薙ぐ。

 そしてスケルトンやリビングデッドに2000のダメージを与え倒していく中に1000という数字が出ていることに気付く。


「何かいる……!」


 その数字が出た辺りを凝視すると、宙に浮かぶスケルトン……ではなく、マントを羽織い杖を持った骨のモンスター、リッチがそこにいた。


「アレがここのボス!? 火が効いてない!」


 見た目だけならば鎧と剣がマントと杖に変わった大きなスケルトンなのだが、弱点は異なるらしい。


「立チ去レ……ダークウインド……」


「えっ?」


 突然喋ったかと思うと、突風がマホを階段まで押し戻す。

 更にHPも少し削られる。


「今の……魔法?」


 それはマホが初めて出会う魔法を使うモンスターだった。


「立ち去れって言われても帰らないよ!」


 マホは改めてリッチへ向かう。


「ナラバ……死ネ……ダークウインドスピア……」


 見えない風の槍がマホを襲う。


「効かないよ!」


 ただの痩せ我慢なのだが、そうと言えるだけの防御補正がある。

 マホにその槍が直撃するが1/10も減らない。


「こっちだって! 闇を斬り裂く稲妻の魔槍よ 我が敵を貫け! サンダージャベリン・ジャッジメント!」


 リッチに対抗するように同じく魔法で槍を生み出し放つ。


 雷自体は弱点ではなかったようで、ダメージは8000止まりだったが、リッチを倒すのには十分だった。


 ドロップ品はなく2000Gを得て攻略は終わった。



「って、なんで戻して欲しい時はこないのー!?」


 いつものダンジョンマスターの「ばびゅっと──」を期待していたマホは思いっきりツッコミを入れて、しぶしぶ入り口へ歩いて戻るのだった。

お読みいただきありがとうございます。


マホソロは久しぶりですね。

ちなみにダンジョン全ては書きません。

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