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ビキニアーマー

慶太は今日もいつも通りに身支度をして宿を出て門番ヨータに挨拶を済ませて街を出る。見張り番の人の視界からフェードアウトするとヘルメットを被り走ってベケタの森へとへ行く。



いつものルーチンワークをこなしている慶太に見えるが内心では動悸が激しく落ち着かないのだ。


それもそのはず、今朝の夢のせいでカーリーとアリーナさんを直視できないことに慶太は少しばかり罪の意識を感じていた









ベケタの森に到着して慶太はネピオの実をいつものように摘んでいると、激しくぶつかり合っている音がする。







ドーン


ドドーン


ガーン








慶太は神器のヘルメットの機能であるマップを活用して音がする方に誰がいるのか確認する。






最近になってこのベケタの森は命知らずが一攫千金を狙う人気の狩場スポットとなっている。慶太もそのことは知っていたがなぜなのかは知らなかった。





今日は調子の出ない慶太だが興味本位で近くへと見に行ってみることに、すると三名のパーティが魔物と戦っているようだった。







前衛の男性は革の鎧に鉄の盾に鉄の剣を持って一角ウサギと戦っていた。後衛はローブ姿と前衛と同じく革の鎧を着ていた。ローブ姿の女性は杖を持ち、もう一人は弓を持っていた男性だ。






「おい、なんでここの一角ウサギはこんなにデカくて強いんだよ」


「わからないよ、こんな一角ウサギみたことがないってか、これ本当に一角ウサギか?」







慶太は遠目で見ていたがいつも見ている一角ウサギに過ぎない。地球のウサギと違って毛が硬く大きな角が生えている






しかし、真っ白な毛のお陰で地球人でも角のあるウサギとして容易に認識することができる。しかも、ジャンプしながら走るそぶりはまさしくウサギだ。





ただ、遠目で見たらの話で実際は牛ぐらいの大きさがある。





ウサギのように素早い牛というちょっと危ない魔物だが、遠目で見ると可愛いのだ。が、戦うとなるとどうやら大変なようで前衛が盾で一角ウサギの突進を受け流すのに精一杯のようだ。






そんな一生懸命な人たちなんて眼中にない慶太は、この牛のようにデカい一角ウサギの肉の味を思い出していた。






慶太は一度だけこの一角ウサギの肉を食べたことがある。いつだっただろうか、偶然にも別の魔物と戦っている余波で一角ウサギを倒してしまったのだ。






これは食べれるのだろうかと疑心暗鬼の慶太は宿に持って帰ったところ料理長に大喜びされて、調理した肉を食べたがかなりの美味だった。慶太は一角ウサギの肉の味を思い出しているのだろう涎がでる。







慶太は涎をたらしながら別の一角ウサギを探すためにその場を後にした









慶太が別の一角ウサギを探しに行ったが、まだ先ほどのパーティと一角ウサギの戦闘は続いていた。ローブ姿の男が補助魔法を前衛と後衛に掛ける。弓を持った男が矢を放ち一角ウサギに攻撃を仕掛ける。





だが、一角ウサギは大きさの割にはかなり素早い動きをするのであっさりとかわされる。一角ウサギは怒りだして弓を持った男性に襲い掛かるも前衛の男性がすぐにカバーに回る。






とても連携のとれたパーティだ





「よし、いけるぞ」







だが、彼らは見誤った。







一角ウサギはまだ、全力ではなかった。その証拠に力をためて全速力で突進してきたのだがあまりのスピードと威力に驚いてしまう前衛男性。防御力以上の攻撃は避けるべきなのだがそれを受け止めてしまった。






その結果







「グハ」







前衛男性の盾が粉々に砕け散り突進の攻撃をもろに体に受けて大ダメージを負った







「おいおい、あいつの盾ってAランク相当の盾だろ」


「そうだよ、それを砕く一角ウサギかよ、冗談じゃない」







前衛がいなくなったせいでパーティ全滅の危機に陥った。






「冗談じゃない、逃げよう」


「え、そんな、待ってよー」







後衛二人は命欲しさに逃げ出した。残された前衛男性は一角ウサギに命を狙われて恐怖している。







「ちくしょう、ここまでか!」


「ここは、あたいに任せな」







突如、降ってわいたように女戦士が現れた。光り輝くビキニアーマーを纏い手には体がすっぽりと覆うことが出来る程の大きな盾を持っていた。








「もしかして、あんた……」


「あたいのことは気にしなくていいよ、逃げな」


「かたじけない」







前衛男性は大盾を持った女性にその場を任せて後退した






「さぁ、来い、このウサギ野郎」






大盾を持った女性は一角ウサギの攻撃を難なく受け止める。だが、一角ウサギは先ほどの前衛男性の盾を粉々に砕いた攻撃を仕掛けるべく助走をつけて突進してくる。






「気を付けろ!」






前衛男性は一角ウサギの技が危険なことを女戦士に知らせる。







ガン!







一角ウサギの凄まじい威力がある突進攻撃も大盾を持った女性にはどうってことのない攻撃のようだ。







「へへ、余裕だね」







この様子を見ていた前衛男性は







「こいつは驚いた。なんて防御力だ!」







ここにいたら迷惑になるだろうと仲間を追って森の外へと潔く逃げていった。





「ちっ、次が来たか」





前衛男性が立ち去った後、女戦士の前にもう一匹の一角ウサギが姿を現す。






「はっ、何匹来ようが絶対に勝つ」






かなり強気の女戦士だが、ピンチであるのは事実であった。









一方の慶太はヘルメットをかぶりマップ機能をフル回転させて一角ウサギを捕まえるべく探していたのだがあまりに数が少ないので見つけるのに苦労していた。





拡大すると切り替えが大変で縮小すると沢山の動物がいるので難しくなるというジレンマ。しかし、なんとか慶太は一角ウサギを発見する






「みっけ」






慶太の声に反応して慶太のほうを振りむく一角ウサギ。






一角ウサギは慶太を目にした瞬間に動物的本能で逃げ出した。慶太が纏う目に見えない何かに怯える一角ウサギ、まさに恐怖の存在が目の前にいるのだ。




慶太の姿は本能的に危険と感じ初動から全速力で逃げる一角ウサギ。だが、慶太にとっては取るに足らない速度なので捕獲するために追いかけて攻撃をする。しかし、狩りなんてあまりしたことのない慶太は力加減を誤る。






すぐに慶太は追いついてストレートパンチを放つ。慶太はその昔、ボクシングジムに通っていた経験を活かして引き手にしっかりと意識を集中させる。







ストレートパンチが一角ウサギに命中







ドパン!






「……あ」








木っ端微塵に吹き飛ぶ一角ウサギ。自分の拳を見つめる慶太。少しばかりだが湯気のようなものが見えた。







慶太はログを確認する








一角ウサギに###のダメージを与えました。

一角ウサギを倒しました











あまりのオーバーキルにダメージ表示がされなかった





「…………」






慶太は放心状態だった。そして、今日は一角ウサギのサイコロステーキを諦めた。








今日はもう帰ろうとした慶太だがふと先ほどの三人パーティが気になりマップで確認すると何故か同じ場所で別の人が戦っていた。








どういうことか確認するために慶太は先ほどの場所へと戻るとロングの黒髪が綺麗な女戦士が一角ウサギと戦っていた。それも二匹も相手にしているだ。





これはチャンスだと思った、あわよくば一匹ほど貰えないだろうかと慶太はすぐに女戦士と交渉することにした。交渉すべく慶太は話しかけるのだが、黒髪ロングの女戦士は一角ウサギに精一杯で慶太ほうを振り向く余裕などなかった







「あの……」


「おい、ここは危険だからあたいに任せな」







慶太はこの声に聞き覚えがあった。







だが、思い出せない……それよりも目の前の一角ウサギがサイコロステーキにしか見えない







「いえ、そのサイコロステーキじゃなかった、一角ウサギを一匹だけでいいので頂けないでしょうか」


「そりゃあ、構わないさ無事に倒せたらね」


「おお、ではお言葉に甘えて」







慶太は思い出せそうで思い出せない女戦士のことは考えるのを止めて、今度こそ力加減を間違えないようにやさしくソフトタッチで倒すことに集中する。







だが、慶太の登場に一角ウサギの動物的本能が大音量の警報を鳴らす。慶太に怯えて二匹のうち一匹は我先にと一目散に逃げだした。




「何処へ行くんだ?」


「なんの、ごちになります」






慶太は逃げ出した一角ウサギの退路上へと素早く移動して軽くチョップをして地面に叩きつける





「グギャ」






声にならない声で鳴き一角ウサギはのうしんとうを起こしてけいれん状態となる。とどめは持っていたナイフで刺し殺す。律儀にとどめを刺す際には手を合わせて命を頂くことに感謝する。








ガクガクブルブル







それを見たもう一匹の一角ウサギは恐怖のあまりその場に立ちすくみ動けなくなった。






「………………………」








女戦士も同様に先ほどまで苦戦していた一角ウサギをいとも簡単に倒すヘルメット男に見とれていた







「えっと、ありがとうございました。それじゃあ、俺は帰りますね」







そう言って慶太はそそくさと帰ろうとするのだが








「待ってくれ」







と女戦士に呼び止められる









「はい、なんでしょう?」


「あたいは盾の勇者をしている沙織っていうんだ」


「ああ!」








慶太は三か月前にレッドカーペットの上での出会いを思い出していた。ヤンキー風の沙織ちゃんってことだけはしっかりと覚えていたが、三か月前と比べると雰囲気がかなり変わっているので気が付かなったのだ。






その元ヤンキー沙織は頬を赤く染めて慶太と話をする







「もし、その、よ、よかったら……」


「はい……」







何やら元ヤンキー沙織の雰囲気がおかしい。もじもじとしながらためらっていた。慶太はもしかして好きとか惚れたとか言われるのではなかろうかと次第に慶太も内心落ち着かない様子になる。






元ヤンキー沙織は唇を噛みしめて決心する







「あたいを……弟子にしてほしい」


「嫌でも俺にはアリーナさんとカーリーがって…………へ?」






想像もしなかった申し出に困惑する慶太







「迷惑なのは分かっているんだ、だけど少しでも強くならなきゃいけないんだ」







涙目になりながら、かなり力が入った言葉に慶太は何があったのか聞いてみた。だが、どうしてもビキニアーマーに目が行ってしまう。しかし、ビキニアーマー沙織の言葉が重かった。スタイルのいいビキニアーマー沙織の胸の谷間に興味はあるが慶太は一瞬にして真剣に聞かざるを得なくなる







「落ち着いて、どうしてそんなに強くなりたいんだ?」


「実はあたいと同じ出身地の人が死んだんだ」


「それは……」







一体、誰のことだろうかと慶太は考えた。なんとなくだが高校生の誰かということを考えるといたたまれない気持ちになる慶太







「あたいらは強くないと生きていけないって言われた。だから、死に物狂いで戦って強くなろうとしているんだ。だけど……」


「頭打ちかい?」







慶太はビキニアーマー沙織の言葉にとても共感できた。自分の現状とよく似ているからだ。








「ああ、そうなんだ。だから、この危険度が高いベケタの森へ来たんだよ」


「そうか、あ、それよりさ、一角ウサギは逃げたみたいだけど」






慶太とビキニアーマー沙織が会話している間に逃げた一角ウサギ。だが、ビキニアーマー沙織にとっては強敵過ぎたようでホッと胸をなでおろしていた。






「うん、わかってる。だけどさ、あたいにはまだ早すぎたみたいだ……それよりも!」







話が長くなりそうだと感じた慶太









「えっと、よかったら一緒に町へ行って一角ウサギのサイコロステーキでも食べませんか?」


「本当か?ただ、町って言っても王都かい?ここからだと結構遠いんだが」







どうやら、ビキニアーマー沙織は一番近いのは馬車で5時間かかる王都だと思っているようだが、慶太はナギのほうが近いという。しかし







「一番近いナギの町なら直線的に行けば近いですよ」


「え?ナギって直線的に行くには龍の山脈を超える必要があるはず」


「あ、はい。超えればすぐですよ」






元ヤンキー沙織は慶太についていこうとするがバランスを崩して倒れこむ






「イタタ……」






ナギへ戻ろうとしたのだがどうやら元ヤンキー沙織は足を怪我しているようだ






「大丈夫?」


「これぐらい……」






強がっている元ヤンキー沙織。ただ、慶太は急いで帰り支度をしていた。背中に一角ウサギを背負いひもで括り付けていた






「あー、ウサギの肉は鮮度で味が変わるからいいかな?」






慶太の言葉足らずのせいで元ヤンキー沙織は誤解していた。それもかなりの言葉足らずだから元ヤンキー沙織は泣くことになる






「構わない、その、あんたの名前を教えてもらえないか?」







ビキニアーマー沙織は名前と待ち合わせ場所を聞きたかったのだが慶太は急いでいたので行き違いが生じる






「ん?俺は慶太って言うんだ。それじゃあ失礼して」


「え、ちょ、待って……あんた……あたい……」






慶太は軽々と元ヤンキー沙織をお姫様抱っこしてナギへ向かって走り出す。その速度は元ヤンキー沙織の想像を遥かに超えていた。慶太も気を使ったのだろうが元ヤンキー沙織にとっては恐怖だったために我を忘れて、かなり強くしがみついていた。








そして、龍の山脈と呼ばれる標高の高い山を越えるのだが、ある特定の断崖絶壁を上り下りすればすぐに山の向こう側まで行ける場所があるのだ。この山を越える体験は元ヤンキー沙織の恐怖体験の中でベストテンに入るほど怖かったと後で語る。






ただ、登るときはよかった。






ジャンプ一回で高い山の八合目まで飛ぶ跳躍力には驚いたもののしがみついていれば特に問題がなかった。だが、問題は下りだ






標高七千メートル級の山の山頂から断崖絶壁をダイブして降りるのだ








「ちょ、まて、なあ、待てって、頼む……まっ…キャアアアアア」









元ヤンキー沙織は女の子が絶叫マシンに乗った時のような声を出す。そんな彼女の意識が半分失いかけた頃、穀倉地帯の中心町ナギの近くにある小屋へと到着する。

貴重な時間を使って読んでいただき

ありがとうございます。

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