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剣の勇者の恭也

ナギより西側にある村は非常に平和な村だった。林業が盛んで小さな村ながらナギへの中継地点としても機能する村で人通りがあり活気のある村だった。







だが、その村に魔物の脅威が襲い掛かる。






ナンバーウルフの70越えナンバーが現れて大騒ぎとなる村人達。本来なら20~30ぐらいが村の近辺のナンバーウルフの強さであるが突然変異で現れたナンバーウルフ。このあまりに強いナンバーウルフの対処に腕自慢たちが集められたがことごとく討伐には失敗する。






だが、この状況を打破するべく王都からやってきた男がいた。そして、その男は村近くの森の中で強ナンバーウルフと戦闘に入る







「さあ、この聖剣の錆にしてくれよう、このいぬっころめ」


「ガルルルル」


「お、やる気満々って感じだね、にしても70程度か、三桁越えの俺からしたら楽勝だね」








しかし、この強ナンバーウルフはかなり戦闘慣れしていた。周りの木々を足場にして自分の得意分野であるスピードで敵をかく乱して攻撃を与えるスタイルを瞬時に取った。どうやら自分より格上の相手だとすぐに本能が反応したのだろう。







「いいねいいね、スピード勝負か、だけど、この俺にスピード勝負を挑むにはまだまだレベルが足りないんじゃないかな」








そう言って聖剣を持った青年は強ナンバーウルフの背後を取る







「ガゥ」







強ナンバーウルフはスピードを決して落としていない。だが、聖剣を持った青年はまるで、遊んでいるかのごとく強ナンバーウルフの背後を取り続ける。





聖剣をもった青年が戦っていると……突如、強ナンバーウルフは動きが止まってしまう。





だが、それは聖剣を持った青年には絶好の攻撃チャンスだった







「おや、もう終わりかい、それじゃあね」









聖剣をもった青年が強ナンバーウルフに踏み込んだ時だった。





「なっ」






急激に自分の体重が重く動けなくなるのだ。







「クソ、どういうことだ」






強ナンバーウルフと聖剣をもった青年の勝負は元気な少女の一撃で決まった。












「インパクト」









その瞬間に強ナンバーウルフと聖剣を持った青年は脳天に激しい衝撃を受ける。両者ともに死に至ることはないが気絶寸前まで追いやられる







だが、レベルが高い分、聖剣を持った青年は耐えていた








「痛っ……何があった?」








グラビティの魔法が発動しているのにそこに突進するおバカな聖剣を持った青年は辺りを見回すととても可愛く可憐な美少女の手を握るヘルメット姿の人間を目撃する。しかも、可憐な美少女とヘルメット男の仲睦まじい姿を確認する








「く…そ…」







そこへ大きな寸胴鍋を持った聖騎士沙織がやってくる。聖剣をもった青年は何とか耐えていたものの意識が薄れていく中、元同郷の沙織を確認したのが最後、意識が続かずについには気絶してしまう。






「あれ、恭也だ」


「あ、やっぱりか、剣の勇者だっけ?」







聖騎士沙織は到着してすぐに聖剣をもった青年を恭也と気が付く。なぜこんな場所にいるのか不思議そうに見ていた。また、聖剣をもっている割には大したことなさそうなので慶太は聖騎士沙織に恭也のことを聞く






「この剣の勇者はあまり強くなさそうだな」


「ああ、それにさ、あまりに自分勝手ばっかりするから皆で放置していたんだよ」


「そっか」






聖騎士沙織は恭也のことはどうでもよかった。それよりも持っている寸胴鍋を慶太に渡したくて仕方のない様子







「それよりも慶太、あたい、作ってきたんだ」


「何を?」


「お弁当」


「おお、それはありがたい」


「あたしの分は?」


「ないよ」


「むぅー」


「まあまあ、カーリーも一緒に食べていいよね」


「冗談だよ、もちろん構わないさ」






慶太はヘルメットを脱ぎ嬉しそうに寸胴鍋を受け取る。女性が作ったお弁当を食べるなんてなかなかない経験の慶太。だからこそ、弁当なのに何故か寸胴鍋を持ってきたことにつこっみを入れない。







そして、寸胴鍋のフタを開けて中を確認すると寸胴鍋の中で地獄絵が完成していた







「えっと沙織さん、これって何?」


「何ってもちろん普通の鍋だ」


「普通の鍋?」


「ああ、こっちに来て食べてないだろ?」


「いや、その……」


「それとも……あたいの作った飯が食えないのか?」


「あたしは要らない」


「……」







カーリーは正直に要らないという。しかし、どうすればいいのか悩んだ慶太は







「一応聞く、これって食べれるんだよな?」


「当り前だろ、食べれるものを入れているんだ」


「ヨシ分かった」








慶太はすぐにスプーンを取り出した。覚悟を決めて、地獄絵の一部をすくい上げる。地獄の一部を救い上げるとなぜか、その物体はケラケラと笑っているように見えた。








覚悟が決まらない慶太はなかなか口に運ぶことが出来ない。すると、なんということかすくいあげているスプーンが解け始めていた。これはヤバいと覚悟を決めた慶太。








そして、恭也の口の中に放り込んだ。







「ああ、何してんだ、恭也にやるなんて言ってない」







次の瞬間、恭也は口から泡を吹き始めた。







「「「……」」」







一同は恭也の反応に毒物である可能性を確信へと認識を改める。







「いやー食べれるものしか入れてないから食べれると思ったんだけどな」


「いやいや、おかしいだろ、お前は料理長に料理習った方がいいかもな」


「……ぉぅ」








恭也の反応に素直になる殺人料理人沙織








「あ、ここにいましたか」


「あ、お母さん」








すると今度はアリーナが慶太達の元を訪れる。そして、手にはお弁当箱を持っていた






「はい、慶太さん、どうぞ」


「わあ、もしかして、俺に?」


「ええ、もちろんです。いつもお世話になっておりますから」


「ありがとうござ……」






慶太は自分の目を疑った。人妻であるアリーナなら料理なんて朝飯前だろうと思っていたのだが目の前にあるのはどう見ても物体エックスだ。






清楚で思慮深い見た目に穏やかな雰囲気の人が殺人料理人だと信じたくなかったからだ







「あ、あたしは要らない」


「そういうと思って作ってないわ」






カーリーの態度で慶太は確信した。「これ」はやばい物体であると……







「それでは慶太さん、召し上がってください」


「……」







慶太は大変、ピンチになる。そして、慶太はまたスプーンを取り出した。勢いよく物体エックスをすくい上げる。









慶太は覚悟決めて…………恭也の口の中に放り込んだ








次の瞬間、恭也は口から泡を吹くのを止めた。そして、何か白い「モヤ」のようなものが恭也の体から抜けているように見えた。







「「「「…………」」」」


「アリーナさん……」


「あら、おかしいですわ、美味しそうな食材を選んで入れたのに」








どうやらこの二人の料理をする際の思考回路はほぼ同一目線のようだ。慶太は誓った、この二人に料理をしなくていいように自分がやろうと。





そして、この二人が料理をしなくてはならない状況を作ると死人がでるなと確信する慶太だった

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