上位ジョブチェンジ
目の前の真っ黒な人間はナギの住人ということ。そして、朝からカーリーが行方不明ということ。その条件から考えられるのは目の前の真っ黒な人間はカーリーであると言える。
「クソ、遅かった」
「そんな……」
聖騎士沙織もカーリーの変わり果てた姿に顔色を悪くする
「さあ、実験じゃ、世界を支配する前準備にそいつらを殺してしまえ」
「……」
真っ黒な人間は地面を蹴り慶太に向かって物凄いスピードで慶太の背後に接近する。しかし、真っ黒な人間は慶太の背後を取ったにも拘わらず近寄るスピード以上でその場を離れるのだ。
「どうしたというのじゃ……まさか、怯えているのか」
老人が言うように真っ黒な人間は怯えていた。
「クソ、もう一段上げる必要があるな」
「……」
呪術師の呪術により真っ黒な人間は声にならない声を叫ぶ
「〇!×※△〈§Θ!□!」
叫ぶような金切り声が終わったかと思えば慶太の正面に瞬間移動をする。そして、かなり強いパンチ攻撃を繰り出す。慶太は真っ黒な人間の接近に対しての反撃はせずに交わした、がこの真っ黒な人間の技はかなりのもので攻撃を受けてしまう慶太
ダメージを1受けました。経験値を5獲得しました
大したことのないダメージなので何度攻撃を受けようが問題ないのだが、経験値が増加されることに驚きを隠せない慶太。最近は経験値を得ることが出来ない状況に苛立ちを募らせていたのだ。だけど、本来なら喜ぶべき事象に顔をゆがませる慶太
「……」
「なんと、今の攻撃を受けても立ち上がるのか……」
真っ黒な人間も呪術師である老人も慶太に驚いていた。
「仕方ない、最終実験をここで試してみるかのう、ひゃひゃひゃ」
「……………!」
老人は更なる呪術を真っ黒な人間に掛ける。するとみるみる姿が変わり、人間の影の形から化け物の形へと変化する。
「クソ野郎が」
慶太は呪術師の老人が行っていることに腹を立てて呪術師の老人に襲い掛かろうとするが化け物の影の形をした生き物とと呼んでいいのか分からないようなものが超高速で慶太に接近する。
「ちっ」
慶太は化け物の攻撃を何とか交わそうとするがいつもの癖で受け止めてしまう。
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
またも経験値を獲得する慶太
だが、これ以上の攻撃は受けるべきではないと思っている今のところはパッシブスキルのオートカウンターが発動していないがこれ以上は確率的に高くなるからだ。だが、相手はそんなことは一切、関係ない。慶太は反撃もせずに受けることも怖がるので絶好の攻撃チャンスに思える真っ黒な化け物。
「やれ、殺すのだ、ひゃひゃひゃ」
呪術師の言うとおりに攻撃を行う真っ黒な化け物
「頼む目を覚ましてくれ!」
慶太の訴えに一切に応じそうにない状態の真っ黒な化け物。すでにカーリーの面影はないのだが戦闘することが怖いと感じる慶太。だが、相手の容赦ない攻撃を食らうわけにはいかない。
「ちぃ」
慶太は避けようとしているのだが相手の技術が高く確実に当ててくるのだ。
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
ダメージを10受けました。経験値を50獲得しました
ジョブレベルが上がりました。
新しいスキルを獲得しました
上位ジョブチェンジが可能になりました
条件を照合しています……照合確認完了
遊び人から遊び超人へと上位ジョブへ変更されました
慶太は上位ジョブへチェンジして遊び超人となり上位職業へとたどり着いた。
だが、今はそれどころではなかった
あと一回、ダメージを受けると真っ黒な化け物の命が危ないのだ。慶太は経験上十回に一回はかなり高い確率でカウンターパンチが発動しているのだ。最初のパンチから数えて次が十回目になる。
いつ発動するか分からないない殺人パンチが元カーリーに当たったなら一生悔やまれるだろう。アリーナにも顔向けできなくなるのは必須だ。
「アリーナさんが待っているんだ、帰ろうよ」
「お願いだ、目を覚ませよ」
聖騎士沙織も訴えるが効果はなかった。良い策が思いつかない以上、これ以上の攻撃を貰うのは避けるために慶太は真っ黒な化け物との距離を取る。ある意味、絶体絶命のピンチだった。ヘルメットの下は汗でびっしょりの慶太。
「カーリー、愛してるよ」
慶太は覚悟を決めた。どうなっても慶太は責任を取るつもりだ。
だが、転機が訪れる。
最終形態の化け物でも倒せないと慶太に恐怖を感じる呪術師の老人。老人は奥手を使おうとしたがそれが破滅への道だった
「き、きさま、大人しくしろ。さもなくば、ナギの街で次の実験用に捕まえた少女をここで殺してやる」
「「………………」」
慶太と沙織は目を疑った。老人が刃物を突きつけている少女こそ探していたカーリーだ。手足は魔道具で封印されており猿ぐつわでうまくしゃべれずに
「んーんーんーーーー」
と、何を言っているかわからない。が、真っ黒な化け物がカーリーでないことに一安心する
「貴様、この状況がわからないのか、どのみちギルドから派遣されたものだろう」
「ギルド?何のことだ?」
「とぼけるなよ、その強さは異常だ、私が錬金術師に高い金を積んで錬金術と呪術の融合に成功した非検体と互角に戦うなどあり得ない」
「そっか」
どうやら目の前の真っ黒な化け物は本当にただの化け物のようだ。慶太はカーリーをすぐに老人から引き離すことに成功する。しかしながら、真っ黒な化け物は攻撃を待ってくれない。
老人からカーリーを引き離すことは簡単だ。だが、この真っ黒な化け物を相手しながらとなるとそうは簡単に問屋が卸してくれない。真っ黒な化け物が高速パンチをしてきたのでカーリーを抱えたまま老人の後ろに回り込む。
すると、真っ黒な化け物の高速パンチは老人にクリーンヒット
「な……」
老人は見事なまでに砕け散る。真っ黒な化け物は老人を手に掛けても特に何も感じていないようだ。理性や敵味方の区別はないようだ。慶太はカーリーを抱えているために動きの制限を受ける。
真っ黒な化け物の攻撃を避けることが出来ないと思った慶太はカーリーにダメージを受けないように攻撃を受け流す。いつの間にそのように華麗な技を身に着けたのか慶太自身驚く。
慶太はすぐに聖騎士沙織の元へ行きカーリーを沙織に任せる。
「ちょっと待っていてくれ、すぐに終わらせるから」
カーリーは声を聴いて妙に親近感のある声だと感じた。カーリー猿ぐつわをされ手足を拘束された状態のままヘルメットを被った人に興味を持つ。
そして、一気に勝負に出る慶太は本気で真っ黒な化け物と戦う。だが勝負というものは一瞬にして決着がつくものだ。
慶太は真っ黒化け物を上回るスピードで近づくとそれに驚いた真っ黒な化け物は慌てて慶太に高速パンチを慶太に放つ。しかし、慶太はその高速パンチを紙一重で避けると化け物のボディに左フックを当てる。
よろけた真っ黒な化け物はくの字に折れ曲がる。
今度は左手をしっかりと後ろに引きその反動で出る右ストレートを真っ黒な化け物にぶつける。右ストレートの威力は想像を絶するものであれほど強かった真っ黒な化け物ははじけ飛び見るも無残な姿へと変わり果てる。
「す、すごい」
それを見ていたカーリーと聖騎士沙織はヘルメットを被った慶太に目を奪われた。ただ、カーリーは慶太がヘルメットを取るまで誰なのかわからずに他人行儀な言葉遣いに面白くすぐに正体をばらさない慶太であった。
そして、三人は無事にナギにある宿へと帰還する。
宿についてすぐ出迎えてくれたのは人妻アリーナだった。
「よかった、カーリー。心配したのよ」
「ごめんね、お母さん」
二人は出会うなり抱き合い無事に帰ってこれたことを喜ぶ。人妻アリーナは慶太と聖騎士沙織にもお礼を言う。
「二人ともありがとうございます」
「いえ、当然のことをしたまでです」
「あたいも当然のことをしただけだから気にせんでいいよ」
人妻アリーナは二人の言葉に感極まって涙を流す。そして、慶太に朝のお礼をする。
「慶太さん、貴方には娘だけじゃなく私の世話までして頂いてどれほど感謝をすればいいのかわかりません」
「いえ、そんな大袈裟ですよ」
「大袈裟ではありません。その……」
人妻アリーナは慶太の頬にそっと手を当て目を潤ませる。
「慶太さん……」
人妻アリーナの行動に慶太は心臓が飛び出そうなほど興奮していた。いい雰囲気をぶち壊したのは聖騎士沙織だった。
「こほん、えっとそろそろいいかな?」
「……」
「あら、ごめんなさい」
慶太も自分の状況の異常さをやっと感じて人妻アリーナから一歩下がったところへ移動する。このときカーリーも涙目になっていたのだが、慶太は舞い上がっており気が付いていなかった。
「愛してっる言っていたのはうそだったの、グスン……」
カーリーはどうやら慶太の叫びを聞いていたようだ。
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