カーリーを探せ
次の日の朝、慶太は久しぶりに一人で目が覚ました。今日はどいうことかカーリーが起こしに来ないのだ。階段降りて下の食堂へと足を運ぶ途中に宿の入口でアリーナさんと出会う
「あ、おはようございます、アリーナさ……」
慶太はアリーナの姿に目を疑った。目の下にはくまを作り、髪の毛はボサボサで服は泥だけに汚れていた。
「あ、おはようございま……」
アリーナも慶太に気が付き朝の挨拶をするのだが
「アリーナさん!」
糸が切れたように力尽き地面に倒れこみそうになる。慶太はすかさずアリーナに近寄りアリーナを受け止める。
「大丈夫ですか」
「ありがとうございます」
アリーナの声はとてもか細く聞き取るのがやっとだ
「何があったんですか?」
「カーリーが……娘のカーリーがいないんです」
「……へ?」
慶太はすぐにアリーナを部屋へと運んだ。途中で宿の女性従業員に声を掛けて医者を連れてくるようにと旦那であるクレスを呼ぶようにもお願いした。しかし、クレスは隣町へ仕事で出かけていて留守らしい
慶太はアリーナに一声かけて探しに行くことにした
「アリーナさん、後は俺に任せてください、だから、ゆっくりと休んでくださいね」
「ああ、ありがとうございます。慶太さん」
慶太は部屋に戻り聖騎士沙織に事情を話す
「わかった、あたいも手伝うよ」
快く承諾してくれてた。慶太はマップを使って街周辺で異常がないかチェックを始める。慶太はすぐに異常個所を発見する。
「あった、ここかも」
「どこだよ」
「えっと、マップ使える?」
「もちろんだよ、神器使える奴は皆、使えるよ」
「そうか」
「マップの共有をしよう」
「どうやってやるんだ」
「こうするんだよ」
聖騎士沙織は強引に慶太の手をとり指を絡ませ手をつなぐ。するとマップの視点が聖騎士沙織が見ているマップの視点に切り替わる。これがマップの共有をしている証拠だ。
「で、何処なんだ?」
「ここだよ」
「ここって、この規模だと村かな」
「ああ、確かに村だ。だけど、一か月前に水害があって皆、このナギへ移り住んでいるんだ」
「なるほど、本来なら誰もいないはずなんだね」
「ああ、やっと移住が終わったばかりなのに戻るってことは考えにくい」
「どうやら行き先が決まったね」
「よし、行ってみるかな」
「今すぐ?」
「当り前だろ」
「……わかった」
聖騎士沙織はあまりに強引な慶太に少し驚いていた。慶太は早く行きたいので身支度が出来た聖騎士沙織を抱きかかえて大急ぎで廃村へと向かう。
抱きかかえられている沙織は恥ずかしがるが、今の慶太にとってはカーリーが心配なので一刻も早く到着できる手段を選ぶ。
「ちょ、まった……」
「待てない」
慶太は強引に沙織を抱きかかえて超特急で廃村へと向かう。二人は手の指を絡ませたままマップ共有で確認をしながら廃村にいるヤツに気が付かれないような場所に一旦止まり作戦を考える慶太。でも、聖騎士沙織は廃村から離れている場所で立ち止まる慶太に疑問を感じる。
「さて、ここからどうするか」
「何でここで止まるんだ、まだ先のはずだろ」
「もし、本当に誘拐とかだと人質にとられてこっちが手を出せなくなるだろ」
「ああ、なるほどな、慶太は頭いいな」
「いや、そんなことより、君はどうするつもりだったんだ?」
「もちろん、すぐに廃村の奴らをやっつけるに決まっているだろ」
「もし、俺たちが探しているカーリーとかいなくて全然別の人だったら?」
「その時はその時じゃね?」
「……君は凄いよ」
「そうか!まあ、即断即決を心情にしているからな、ワハハ」
「ああ、……素直に凄いよ」
少しずつ近づいていると人相が悪そうな男が歩いていた
「隙あり、シールドバッシュ!」
「ん?なんだ……グハ」
バタン
人相の悪い男は聖騎士沙織のシールドバッシュに倒れる
「よし、まず一人」
「おい、いきなりかよ」
「悪人に情けは人の為ならず」
「いや、まず、こいつがどういう奴か悪人かすら分からないだろ」
「こんな顔してたら悪いやつだよ」
「はぁ……」
聖騎士沙織の脳筋っぷりには目に余るものがある
「おい、どうした、何かあったのか?」
「凄い音がしたぞ、こっちだ」
どうやら慶太と聖騎士沙織は人相の悪い男の仲間に見つかってしまったようだ。流石、人相の悪い男の仲間だ、こいつらもかなりの凶悪犯罪を犯したことがありそうな顔をどいつもこいつもしている。
そして、風呂に入ったことはいつの日のことか思い出せないのではないかと思うぐらい汚れていた。
「おいおい、えらく別嬪さんがいるじゃねえか」
「おれ、最近やってないんだよな」
汚物AからCはすぐに聖騎士沙織を見て興奮していた。汚物には聖騎士沙織のビキニアーマーはとても刺激的で食指をそそるようだ
「にしても、隣のはなんだ、何だろうイライラするやつだな」
「こっちの変な格好のやつは……たぶん男だな。よし要らないな」
この汚物たちはヘルメットをかぶっている奴の性別を瞬時に見抜く能力があるか、すぐに慶太を男と認識した。
「殺してしまいますか」
「「おうさ」」
一致団結してぶっ殺すと勢いづく汚物たち。だが、聖騎士沙織は汚物たちに怒りを覚えていた。
「お前たち、恥ずかしくねえのか、女の子を誘拐して!」
「……一体、どこでその情報を」
「おい、バカ……」
あまりにストレートな言い方に度肝を抜かれる男ども。汚物たちの反応はどうみても黒だった。
「ふぅ、どこまで知っているのか知らないが無事に返すことは出来そうにねえな」
「ふん、あたいが相手になってやるよかかってきな」
汚物Aはクルセイダー沙織が逃げないようににじりじりと近づいていた。汚物のB,Cも刃物を持ち出して戦闘姿勢をとる。
「死ね」
汚物Bは斧を振り被って攻撃してくる。だが、この汚物、ただの汚物ではなさそうだ。
「ブーストアックスパワー」
なんとスキル技の所持者だった。物凄い勢いでクルセイダー沙織に斧が振り下ろされる。だが、聖騎士沙織もただの聖騎士ではない。
「この程度、何も問題ないね」
ガガン
聖騎士沙織は大盾で凄まじい威力のスキルの力が乗った斧を簡単に受け止める。
「なんだと!」
「一角ウサギの突進に比べたらへでもないぜ」
男前のセリフで聖騎士沙織は汚物Bを挑発する。それを見ていた汚物Cは驚きと同時に本気のスイッチが入る。汚物Bの斧を防いでいると汚物Cが棒の先にナイフを括りつけた槍でついてくる。
しかも、この汚物Cもスキル技の所持者だ。
「閃光刺し」
心臓めがけて一直線に槍を突き出す汚物Cだが聖騎士沙織にとってはなんてことのない攻撃だ。大盾の向きを少しばかり変えて斧と槍の両方を受け止める
「こいつ、ただのおっぱいじゃねえ」
汚物AはB,Cに注意喚起する。だが、聖騎士沙織の攻撃は汚物B,Cを圧倒する。
「逃がしはしないよ、シールドバッシュ」
ガツン
斧を持っていた汚物Bに聖騎士沙織のシールドバッシュが炸裂。槍の間合いまでは届かなったため汚物Cはなんとか避けることが出来た
「ちっ」
だが、先ほどのシールドバッシュによって槍は砕かれる。
「ちくしょう、このまま死んでたまるか、ウィンドランナー」
汚物Aはどうやら魔法が使えるようだ。補助魔法を使って脚力を増加させて聖騎士沙織とは真逆の方向へ走り出す。少し離れた場所にいた汚物Aは逃げ出した。
「往生際が悪いね、あたいからは逃げられないって、シールドブーメラン」
聖騎士沙織は自分の体より大きな大盾を投げ飛ばす。
素晴らしいコントロールで聖騎士沙織の大盾はかなり離れた汚物Aにぶつかり、その衝撃で汚物Aはその場に倒れこみ動かなくなる。そして、不思議なことに聖騎士沙織の元へと帰ってくる。
「あとはあんただけだね」
「……」
汚物Cは武器である槍も砕かれ先ほどの見事な遠距離攻撃も見せられることで逃げることを諦める。
「殺せ……」
そこで汚物Cの前へ出てきたのは慶太だった
「カーリーという少女を探している、ナギの街に住んでいた子だ、知っているな?」
慶太の声は怒っているのか少し震えていた
「名前なんて知らねえな、呪術師の依頼で条件に合う子を連れていっただけだ」
「連れて……どこへだ」
「この先の廃村だよ」
慶太の読みは完全に当たっていた。慶太はすぐに廃村へ向かおうとした
だが、その時
「慶太、危ない」
慶太の側面に突如として現れた真っ黒な人間
その真っ黒な人間は本当に真っ黒で人間の影がそのまま動いているような物体だった。聖騎士沙織は慶太と真っ黒な人間との間に間一髪入り込み攻撃を受け止める。しかし、聖騎士沙織と慶太はあまりの衝撃に数十メートルほど吹き飛ばされる。
「大丈夫か?」
「う、う……」
今の攻撃は大盾で受けた衝撃があまりにも強かったせいで聖騎士沙織は大きなダメージを受ける
「ひゃひゃひゃ」
甲高い声で笑う老人が廃村のほうから現れる。
「これじゃ、こやつこそこの呪術に相応しかった。これほど適応したヤツがいたとはな、ひゃひゃひゃ」
どうやらこの真っ黒な人間は本当に元人間でしかも呪術によって力を引き出した状態である
「……」
この真っ黒な人間はかなりの強さであると慶太は踏んだ。それと同時にもしかしてこの真っ黒な人間はカーリーではなかろうかという疑念が頭をよぎる
「ナギの街にこんな逸材がいるとはな、ひゃひゃひゃ」
それを聞いた慶太と沙織は絶望に打ちにひしがれる
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