プロローグ
※この物語はフィクションであり、作者自身理解の及ばないところや勉強不足なところ、自己の想像で書いてる部分もたくさんあるかと思いますが、生暖かく見守っていただけると幸いです。
その日は青い満月の夜だった。
閉じ込められている部屋の鉄格子の窓からその陽が差した、高い位置に設置されているその窓からは自身の身長ではとても届かず、逃げる気になどなろうはずもなかった。
今日は月が綺麗ね、綺麗すぎるくらいだわ。
石造りで鉄格子のはめられている罪人を入れるかのような牢屋に入れられている少女は何の気なしにそう思う。
「おい、大丈夫か雪、ぼーっとして今日は一段とひどくやられたみたいだな」
「そんなことないわよ、いつも通り、 いつもどおり、ね。」
自身より少し背の高い茶髪の褐色肌の女の子が心配そうに顔を覗き込んできた、私の傷の具合と気分が少し低いのが原因だろう、実際気分が低いわけではないのだが今日はなんとなく嫌な予感がしている。
「雷、今日はなんだか嫌な予感がするの、なぜかしらね…。」
「あぁ?嫌な予感?そんな事俺に言われてもな…。」
雷と呼ばれた少女は困ったように頭をかいた、いきなりそんなことを言われて返答に困るというものだ。
「いきなりこんな事を言ってごめんなさい、あなたを不安にさせるようなことを言ってしまうなんて、私はあなた達七人のお姉ちゃんなのにね」
雷の困り顔にはたと気が付き、謝りつつ安心をさせるよう微笑んだ。
ここは尋問や拷問を生業としている者達が住む村、【コルトト】、尋問や拷問を嗜好として享楽にふけるために存在している者達、家庭環境や自身の環境にワケがありここに留まざるを得ぬ者達、そんな者たちが寄り集まって出来た小規模の村である。
雪たち八人の姉妹はゆえあってここに連れて来られてしまった、それからというもの毎日のように尋問や拷問にかけられ、そろそろ三年が経とうとしていた。
「いつまでこんな日々が続くのかしら、お母さん…元気かな…。」
雪はため息混じりにそうつぶやいて、薄っぺらい布にくるまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ーーー今から三年前…。
「陛下、失礼致します!」
荒々しく大きな扉が開くと、無精髭を生やし、身体がよく肥えた男が王の玉座があるその部屋に押し入ってきた。
「マルドス!貴様、陛下の御前であるぞ!」
どうやら押し入ってきた男の名は【マルドス】というらしい。
その男は女王の後ろに立っていた男を今気づいたかのように一瞥すると小さく嘲笑った。
「これはこれは宰相殿、何分急をようすることで。至急陛下のお耳に入れねばと思いまして…!」
いくら火急の知らせがあったからといって、いくらなんでも無礼であろうと、宰相と呼ばれた男は怒声を吐こうと目を吊り上げるが、それを女王が片手で制した。
「ウィズ、別にいいわ、で?マルドス、そこまで急いでいるとはそれはそれは大変な要件なのでしょうね?で、どういう要件なのかしら…?」
ウィズと呼ばれた宰相は何か言いたげに主君である女性を見るがやがて小さな声で了承すると静かに後ろに下がる、女王は無表情でマルドスを見下ろすと頬杖をついて続きを促した。
(ちっ、小煩い宰相め、今に見ていろ…いずれそんな口は聞けなくしてやるからな…。)
マルドスは一瞬宰相を睨んだかと思うとすぐに表情を一変し、玉座に座るこの国の女王に向かい気持ちの悪い笑みを浮かべるとゆっくりと話し始めた。
この男が言うにはこの国【クリストラ王国】に存在している未来視の能力を持つ神による予言がもたらされた、その預言によると【現在から数年後、八つの凶星により神都アイテールは滅びを迎えるであろう】という預言であり、これによりマルドスは急ぎ対策を取るために王の間まで駆けつけたのだという。
男は自分の言葉に酔いしれているのか、自身が話す内容を聞いていくうちにだんだんと女王の目つきが鋭くなっていくのにまったく気づいていない様子だった。
「神都アイテールが八つの凶星により滅亡、にございます陛下。……おや?確か陛下の子は八つ子…でしたかな?」
マルドスはニタァと粘着質で気持ちの悪い満面の笑みを浮かべて、女王に問いかけた。
この時、アイテール国内において女王に傅いて世の中を統治するのを目的とした“女神派”とそれをよく思っていない“野神”派とが覇権を争っていた、実質的な権力は女王が握っていたため、今までは水面下で押さえつけられていたが、女王に子供が生まれ、女王の弱点になりつつあるのは火を見るよりも明らかであった。幸い、神種の成長は早く、今は女王の手から離れ肉体精神共に十歳程には見えるようにはなってきた。しかしそれでもまだ子供、女王や腹心が目にかけなければいけない時期でもあった。
「マルドス、それは私の子どもたちの事を言っているのかしら?私の命よりも大切な子どもたちがいずれ国を滅ぼすとでも…?」
女王の背から強大な圧力と殺気がマルドスに向けて放たれ、近くにいた宰相は冷や汗をかきながら女王に落ち着くように促している、しかしマルドスはひるむことはなく言葉を続けた、気持ちの悪い笑みを浮かべたままで。
「いいえ?陛下、私はそんなことはおっしゃいません、しかし、八つの凶星、陛下の八子のお子、出来すぎてるとは思いませんか?」
「もういい、あなたの戯言はもう十分です、下がりなさい、しばらく顔も見せないでくれるかしら?」
女王が苛立った様子で右手をマルドスに向かって仰ぐと、マルドスはものすごい勢いで扉の外に吹き飛ばされ壁に激突、そのままの勢いで扉も閉められた。
「ぐおあっ!……ちっ…!あんのクソ女が…まぁいい、やつの余裕も今日までだ、すべての準備は整ったのだ…楽しみにしていろよ、【峰藤 天】…!」
小さく不気味な笑いを浮かべながらマルドスはその場をあとにした、いずれ預言がそのとおりになるとは知らずに…。
その日の夜、女王の八人の子どもたちは誘拐され、誘拐されたことは事実だったのだが痕跡は皆無、行方不明となる。
子を無くした女王は三日三晩泣き喚き、そしてその後、姿を消したのであった。
誤字脱字は気づいたときにちょいちょい直して行こうかと思います、駄文とか気にいらないところはスルーしてください…
プロローグは次の章まで続きます、読みづらい等々あるかもですがしばしお付き合いいただければと思います。