文部省、今すぐ潰れやがってください
拙作にこんな感想をいただきました。
>やたらと作中に官僚への皮肉というか当てこすりのような台詞が多いですが
>主人公の設定上は普通なのかもしれませんが話の主軸がゲーム内転生ではなく官僚主義批判なのでは?と思う程度にはそのような表現が多く気になりました
この箇所に対する私の回答。
>官僚主義批判の意図はありません。
……と答えたのですが、ふと考えてみる。
そういえば一箇所、霞ヶ関のある省庁に対して明らかにあてつけた部分があったっけ。
そのことを思い出しました。
本エッセイではそれを採り上げたいと思います。
ただしエグイです。
本件の小説もかなりエグイで評判ですが、実話な分さらにエグイです。
20年近く前の話ですが、世の中の裏側を知りたくない方はブラバしてください。
まずは拙作からの抜粋をお読み下さい。
ヒロインが教室で同級生から理不尽に土下座させられ頭を踏まれているところに、先生がやってきたというシチュエーションです。
※※※
先生がみんなに呼びかける。
「みなさん──」
あたしも横目で先生を視界に入れる。
「今日のホームルームはイジメについてです。この学園、いやこの国にイジメは存在しません。仮に存在するように見えるのであれば、それはイジメられている様に見える側が悪いのです。例えば今回の二葉さんと田中さんに非があるように──」
ゆっくりと諭す様に、それでいてどこか高圧的に話す。
一体どこまで二人を庇うつもりですか。
「──仮に何かあったとしてマスコミから聞かれれば『仲良さそうだった』とか『じゃれあっていた』と、あなた方の見たとおりに答えなさい──」
何が見たとおりですか。
「──これは文部省からも内々に伝えてきていることです。世間に誤りや誤解を正す、こうした不断の努力によって、調査におけるイジメ『件数』は減っていくのです」
文部省、今すぐ潰れやがってください。
※※※
この先生の会話が、ほぼ実話を元にしてます。
現実の舞台は官庁訪問(いわゆる就活の官庁版です)。
話したのは文部科学省(当時は文部省)キャリアの係長。
退職していなければ今頃は局長クラスかと。
以下、会話を再現します。
紅茶:私 文部:先方です。
※※※
文部「君、どうして文部省を志望したの?」
(本気で志望して訪問してるわけじゃないので、適当に)
紅茶「イジメ問題を解消したいと思って志望しました」
文部「はあ? イジメ? 何言ってるの君。この国にイジメなんてないよ」
(はあ? 想像すらしなかった台詞に面食らう)
紅茶「だって新聞やテレビでも報じる社会問題になってるじゃないですか」
文部「そんなのマスコミの作り話じゃないか」
(いったい何言ってるの?)
紅茶「作り話って、自殺した子だって出てるじゃないですか」
(文部、溜息をつく)
文部「いいかね? それは自殺した子がイジメと思い込んだだけの話だ。仮に……もし仮に一見してイジメと考え得る状況だったとしても、それは自殺した子にそうした原因がある。いわばイジメられるように仕向けた自分の自業自得だ」
(無茶苦茶言いやがる)
紅茶「いじめた方は何も悪くないと言うんですか?」
文部「だって論理的に、いじめる理由がなければイジメないだろ?」
紅茶「加害者が楽しむためって理由があるじゃないですか」
文部「そんなしょうもない理由でイジメを行うのは合理的じゃないだろう。あくまで逆恨みした子供が遺書に書いただけの話。それなのに一方的に加害者扱いされてマスコミから叩かれる子供達の方がよっぽどかわいそうだよ」
(むかついた! こいつ、人間じゃねえ!)
紅茶「学校にいじめは存在します! 現に私だっていじめられた経験があります!」
文部「君、ここにその子達を告げ口しにきたわけ?」
紅茶「……(日本語すら通じないのか)」
文部「それにだね、統計の数字は『イジメはない』とはっきり物語っているんだよ。まあ、わずかにあることはあるが……この『数字』をどれだけ減らせるか。その『指導』に尽力することこそ私たちキャリアの仕事だ」
(ああ……まさにお役所仕事だ)
紅茶「おっしゃりたい趣旨はよくわかりました。でも、その上で申し上げさせていただきます。仮にも国民の教育を司る文部省は、他省庁と異なり、たとえ綺麗事であっても理想を追って仕事すべき官庁なんじゃないですか?」
文部「行政は数字が全て。その数字に出てないんだから国民にとって何の問題もないだろう? キャリアに理想なんていらない。現実はそんなに甘くない。私たちキャリアが考えるべきなのは、何が文部省にとって一番利益となるか。君も文部省に限らずキャリアとして霞ヶ関で働きたいなら、そのことは頭によく焼きつけておくといい」
(文部省、今すぐ潰れやがってください)
紅茶「肝に銘じます。ありがとうございました」
文部「他に質問はあるかね?」
紅茶「何もありません、失礼します」
※※※
イジメがなくならないわけだ。
心底、そう思いました。
大津いじめ事件がなければ、文部科学省はずっとこんな調子だったのではないでしょうか?
今でも思い出すとむかっ腹が立ちます。
現在、文部科学省の体質がどうなのかは知りません。
ただ一国民としては……少しでも変わっていることを祈らんばかりです。
なお「紅茶大好き」というペンネームの由来は、その時待機室でナンパした女の子が紅茶を飲んでいたからです。
銘柄は、今はなき「ピ○ー」。
美味しかったし、CMなごんだのになあ……。
発売中止になったのは2001年だそうです