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死神教員の観察記録  作者: 八月かずい
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除草作業

 まずは、真夏の日中に除草作業を行っていた死神教員の記録からご紹介いたします。



 肌を刺すような日射しをものともせず、外遊びを始めた子どもたち───。

 その中から少女が一人、草を抜いている教員に駆け寄っていきました。



 この少女の家では、ひいお爺さんが庭の草取りを日課としています。

 暑い日も寒い日もせっせと草取りをしているひいお爺さんに、少女は自然と、「お爺ちゃん。草取りありがとう。」と声をかけるようになりました。

 そんなひ孫のふとした優しさに癒されながら、出かけていく彼女に「いってらっしゃい」と笑顔で手を振り見送るひいお爺さん───。


 炎天下、一人で除草作業を行う教員の姿を目にした彼女が、お礼を伝えに教員に駆け寄ったのはごくごく自然な事のように感じられました。


 駆け寄った少女は、息を切らせながら教員に声をかけました。

 「先生。暑いのにいつも草を取ってくれてありがとう。」

 教員は作業の手を止めて立ち上がり、笑顔で少女に応えます。


 「あのねぇ。先生は仕事でやっているの。貴方にいちいちお礼を言われるようなことじゃないから。」



 耳が腐ります。



 さらに同日中、死神教員は少女の母親にねこなで声で話しかけました。

「ちょっとお伝えしておきたいんですけど。

 あなたのお子さんが、無駄にお礼を言い過ぎているんです。

 こちらは仕事だからやっているだけだというのに、ありがたく思われたり、お礼を言われるなんて筋違いです。言われる方の身になってください。余計なお世話だし迷惑します。

 そんなことでお礼を言われても誰もありがたみなど感じないのだから、お子さんに、日頃から簡単にお礼を言ったりしないよう、家でもきちんと注意して下さいね。」


 今日もまた、子どもたちからありがとうの言葉が転がりでないよう、死神教員が鎌を磨いて目を光らせていることでしょう。

 『感謝の気持ちを刈り取る死神教員』の記録、いかがでございましたか。




 

 

 

 






 



 


 

 



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