九王沢(くのうさわ)さんにやっぱり誰も突っ込めない
どうも宿泊施設とは思えない分厚い鉄扉を閉めると、かちゃん、とオートロックのかかる冷たい音がした。その瞬間、僕は酔いもぶっ飛んで息を呑んだ。何かこのドア心臓に悪い。お前らやることやるまで決して外へは出さないぞ、と言ってるみたいで。いや、でもさ、何かあると困るのだ。でもでも、何かないとまた困るのだ。あああ僕は、何を言ってるんだ、自分でもよく分からない。
「那智しゃん…ここ、どこですか…?」
僕の肩につかまったまま、九王沢さんはほとんど眠っている。どうにか靴を脱がせて部屋に入ったが、寝られると分かるや、そのまま脱力してベッドの上に倒れ込んだ。その途端、テレビがついて、無遠慮な録音の声。
「ご利用ありがとうございます。ごゆっくりお寛ぎ下さい!」
「うるせえよ!!」
思わず機械に突っ込んでいた。
僕と九王沢さんはラブホにいる。もう一度言うよ、よりによってクリスマスにラブホテルにいるのだ。どうしてこうなった?いや、カップルだからいいとは思うんだけども。
「先輩、九王沢さんのこと、ちゃんと愛してあげてますか?」
いきなり根本的質問だ。なんの前置きもなく。そんな突っ込んだこと聞く依田ちゃんは、今日も抜群のキレ具合で眉をひそめている。
「愛してあげてるって…え、なにそれ一体?」
言った途端、ちっ、と思いっきり舌打ちされた。要領を得ない答えをしてしまったのだろうか、依田ちゃんの顔、亀裂が走ったような苦あい表情になって。
「まさかとは思いますけど、まだキスしかしてないとかないですよねえ?」
「いや…お前、それはさ。答えなきゃいけないこと?」
つかなんでこいつに、そんな心配されなきゃいけないんだ。
「いいから答える。て言うか去年、どうだったんですか?クリスマスデートして、お泊りだったんでしょう?」
「いや、あれはお泊りって言ったってさあ…」
朝まで深あい話をして、仲良くお蕎麦を食べて別れただけだ。その話をした途端、依田ちゃんは怪鳥のごとき甲高い声を上げて僕を威嚇したのだ。
「はあ!?やってないんですか!?一発も?」
「一発ってなんだよ!?声が大きいよ!ここ食堂!今、真昼間!」
僕はあわてて依田ちゃんの口を塞いだ。いや、なんつうこと言うんだこいつ。
「そう言う問題じゃないんですよ!?大学生の、思春期過ぎたいい大人が、クリスマスにデートして、ホテルまで泊まって、一ッ・発も・やって・ない、ってなんですか!?先輩、どこで修行してきた高僧なんですか!?ミスター・ストイックですか!?わたし言いましたよね!?九王沢さんを、がっかりさせるなって!」
「いや言ったの憶えてるし、そうしたつもりなんだけど」
「ああもういい!もぉう、いい!!」
皆まで言わせてくれない。こいつ駄目だ。駄目すぎる。とばかりに、大きなため息をつく依田ちゃん。
「ぢ、ぢつは那智さんと…まだなんです」
数日前、二人はお泊り会をしたらしい。そのときの九王沢さんの深夜の女子トークだ。
「わっ、わたし!その、カトリックですし、まだ学生でもあるわけですから、そう言うことは結婚してからでも、いいとは思うんですが」
布団に『の』の字を書きながら、恥ずかしそうに告白するパジャマ姿の九王沢さん。依田ちゃんが貸したピンクのパジャマの胸が伸びて、着れなくなったと言う。なんで一枚撮っておかないんだ。いや、そう言うことじゃなくて、あの九王沢さんに、なんつうとんでもないことを話させる後輩だ。
「キス、はしましたよ。こっ、この前もしました。おうちにもお泊まりましたし、その、順調、だとは思ってます」
「いやでも、そこまで来て、それ以上何もないって逆におかしいでしょう!?中学生ですか!ラブホにも堂々行ける大学生でしょ!?せめて、赤いのれんは踏み込みましょうよ!?」
「悪いか」
健全な男女交際と言うやつだ。いや、むしろ何に臆することやあらん。
「なーに言ってるんですか!?て言うか、戦前ですか!?九王沢さん、先輩のせいで悩んでるんですからね!?」
次の一言は、驚愕だった。依田ちゃんによると、九王沢さんは自分のせいだとばかりに悩んでいたのだ。
「もしかしたらわたし、まだ女性として魅力がないのでしょうか。那智さん、わたしのことまだコドモだと思ってるから…?だからそう言うこと、したがらないんでしょうか?」
「違う!絶対違う!断じて違うぞ!?」
僕が九王沢さんの傍でどれだけ苦悩に悶えているか。僕の欲望を、九王沢さんに感じている魅力を、数値化すれば分かる。きっと天文学的数値である。あんな魅力的な女の子は他にいない。て言うか、あれ以上どう魅力を引き出せと言うのだ。
「だったらなんで手を出さないんですか!?」
「いや、それはその…なんて言うか逆に?…あれだけかわいすぎると、いざって言うときにこっちが尻込みする、って言うか」
相手は、リアル聖処女だ。なのにHカップの爆乳が標準装備、と言う恐るべきツワモノだ。て言うか最終兵器だ。情けない話、とても相対する覚悟が出てくるわけない。
「へっ、『へたれ』?…そっ、それは病理学的に解決できる症状なのでしょうか?」
依田ちゃん、とんでもない言葉を九王沢さんに教えたものだ。考え込むことが好きな九王沢さんは新しい言語を与えられて、完全なる思考モードに入りかけたと言う。さすがに依田ちゃんもここは焦った。
「い、いや九王沢さん…とにかく、病気とかじゃないから安心して。先輩にっ(泣)…先輩にただっ、勇気がないだけだからっ(涙声)!」
「なぜお前がそこで泣く?」
「あんんん…まり先輩が情けないからですよ!へたれだとは思ってたけど、まさかここまで他の追随を許さないとは。九王沢さんに同情したんです。先輩には一ミリも同情してません!」
と言った依田ちゃん、バッグから取り出したのは。性欲が黄昏時のおっちゃんとかが飲む、まむしドリンクである。
「なっ、何だよこれ!?」
「医学的なものの方が良かったですか?だって、あんまり九王沢さんが可哀想だから(声を詰まらせて泣く)…いいですか、先輩。これから納会なんです。クリスマスです。あたしがどうにか突破口を開いてみせます。男でしょう!?先輩、ここで根性みせないでいつ見せるんですか!?」
と、往年の少年誌のようなテンションの依田ちゃんに迫られて、僕は勇者の聖剣を受け取った。依田ちゃんが駅の薬局で買ってきた赤まむしドリンクを。
街は今、聖夜からカップルの性夜と書いてクリスマス。対して非リアが集まると書いて、サークルの納会である。街にはサンタとカップルが溢れる中、お持ち帰られない男女が酒を求めてあてどなくさまよう。これが正しく年末の納会の醍醐味。
「皆さんで出かけるって、やっぱり楽しいですね」
九王沢さんもご満悦だ。に、しても下手な芸能人など足元にも及ばない九王沢さんである。クリスマスの街を歩くと、街頭インタビューは寄って来るわ、通りの角ごとにナンパされるわで、依田ちゃんが僕と腕を組むことを推奨した。お蔭で仲間内からも、敵意の視線と露骨な舌打ちだ。
「那智先輩が九王沢さんに手をつけてないって知れたら、どうなると思います?」
文芸部は末期の帝政ロシアのような疑心暗鬼と裏切りの無法地帯になることは確実だろうと、依田ちゃんは言うのだ。
「今夜はミッションだと思ってください。一次会はともかく、二次はカラオケです。抜け出すチャンスはいくらでもありますから」
まーたミッションか。僕、クリスマスはいつも007である。
一次会は駅近の、ビルの中の串焼き屋だった。例の注文ボタンも完備だ。生ジョッキで乾杯してとりあえず口開けである。
「やっぱり、来てよかったです」
と、注文を積極的に募る九王沢さん。だがふと気づいた。そう言えば彼女は、今日は珍しく疲れた様子だったからだ。
「本国(イングランドの大学だ)の研究会の発表が、年明けにあるんです。なので先週はまた、九州に行きました。日向の土豪の家から、初震姫の記録が、また出て来たんですよ?」
嬉しそうに語る九王沢さんだが、実はこの納会のために予定を切り上げて、飛行機で東京に帰って来たらしい。爆発的な好奇心と行動力のある彼女も、研究発表の準備の合間を縫って遠出の連続はさすがに堪えたと思う。
なんと珍しく、一次で潰れてしまったのだ。
部長の退屈な話のうちから、九王沢さんは櫓を漕ぎ出していた。二次会に行く頃には、夢の世界である。
皆を先に立たせると、依田ちゃんと二人で九王沢さんを介護する。あのお酒に強い九王沢さんが、ぐでんぐでんだ。たぶん、よっぽど疲れていたんだろう。
「チャンスじゃないですか」
にやりとしてあごをしゃくる依田ちゃん。
「二人は先に帰ったって言っときます。二人でゆっくり朝まで過ごして下さい。朗報を期待しています」
と、言うわけでラブホである。い、いや、ラブホ!?だって寝てるよ九王沢さん!?これ、まずいパターンじゃないか?さすがに彼氏とは言え、酔っている女の子をホテルに連れ込んで、なんてのは駄目だろう。いくらなんでも、ひどすぎる。まして相手は九王沢さんだぞ。
「出よう」
即座に僕は決意した。自慢じゃないが、家だって電車に乗らなくたって近くにあるのだ。こんな場所に朝までいるんなら、自宅で九王沢さんを寝かせてあげた方が、よっぽど安心だ。
しかし玄関に出て、はたと気づいた。形態は数あれどラブホと言うのは、料金を払わないと出ていけない仕組みのものが多い。表が分厚い鉄扉とオートロックになっているのもそのためだ。入口にある精算機で精算しないと、ロックは解除されないのだ。僕はその『精算』のボタンを押して、早速後悔した。
『料金は、六八〇〇円、です』
残金三千と四十三円。辛うじて二次会に行く費用しか、持ち出してない。
終わった。
九王沢さんが目覚めて宿泊費を出してくれるまで、この部屋を出る術はない。て、言うかラブホだ。
「ラブホテルって…どんなホテルなんですか?」
って訊かれたら、九王沢さんになんて説明すればいいのだ。前後不覚になったところを、連れ込んでいるわけである。しかもまむしドリンクだ。九王沢さんの純潔を証明するのには、言葉は余りに無力だ。
「ええいこんなものっ!」
僕はまむしドリンクを飲まずにトイレに流した。ごめん依田ちゃん。だってこれ、下手したら犯罪だよ!?いくらやりたくたってこれは無茶だ。
て言うかそんな僕の苦悩も知らず、九王沢さんはラブホの派手な回転ベッドで、日向の子犬みたいに寝こけている。あ…でもよく見るとなんて柔らかそうな肉体なんだろう。
(いっ、いや馬鹿!頭を冷やせ!)
産まれて初めて、自分で自分を引っ叩いた。まむし棄てただろう!そうだ冷静になるのだ。まず、頭を冷やそう。
「シャワーでも浴びてこようか…」
これが大失敗だった。
五分後、丸まって爆睡する九王沢さんの前で、仁王立ちするバスローブ姿の僕。
これじゃ、やる気以外のナニモノでもないじゃないか!?
酔いを醒ますためとは言え、シャワーを浴びたのがまずかった。やってもうた。そして服を脱いだら、いやあな汗を掻いたせいか、濡れた下着を身につけるのが嫌になったのが追い討ちだ。それで備え付けのバスローブ。戦闘準備万端である。でもこれ不可抗力だ。だって、そこにあったから。なんて言い訳通用するか。よく考えてみろ。
九王沢さんにしてみれば、泥酔して目が覚めたら知らないホテルの部屋で、バスローブ一枚の彼氏。どんだけ男性経験がなくったって、何かあったことを疑う。いや、何もしないけど、状況証拠はばっちりだ。何もしないけどね!?
「な、何もしないのか…?」
思わず自問自答してしまったが、その途端、丸まっていた九王沢さんが仰向けに寝返ったのだ。そのときに腕から解放されたふかふかの黒のセーターの下の爆乳。決して型崩れしない左右対称のHカップ。谷間はロッキー山脈より深い。こんもり膨らんだ二つの頂きは、人類最高峰、最難関、カラコルムK2の頂きだ。あれがノーリミッツで一般解放されたのだ。
恥ずかしい話、ごくり、と音がするほどに僕は息を呑んだ。
「ぢ、ぢつは那智さんと…まだなんです」
九王沢さんは、依田ちゃんに言ったらしい。彼女だって、恋人なのに肉体関係がないのを気にしていないわけじゃないのだ。
「もしかしたらわたし、まだ女性として魅力がないのでしょうか。那智さん、わたしのことまだコドモだと思ってるから…?だからそう言うこと、したがらないんでしょうか?」
そんなことはない。て言うか、逆にありえないよ、九王沢さん。こんな魅惑のHカップと、あんなにぷるぷるした美しい潤いの唇が目の前にあって、それに触れてみたいと思わない男なんていない。いっくらへたれだってそれはありえない。ありえないんだからね、九王沢さん。
知らず知らずに手が動く。指がわきわき、あの豊満な胸の形に屈まる。やらしい。あそこに指を埋めてみたい。これは理性で堪えがたい原始的な衝だ。本能だ。その抗いがたい力に否応なく動かされかけて、僕はおっぱいまであと一息。そこではたと気づいた。すっかり忘れていたじゃないか。
最後にして、最難関、最重要セキュリティシステムの存在を。ロジャーさんだ。九王沢さんは常に、シークレットサービス並みのSPに守られているのだ。
まだあれを突破していない。て言うか、突破不可能じゃないか。来るんじゃないか。うかつにも僕がこのおっぱいに手を触れた瞬間、警報装置が作動し、開かないはずの鉄扉が開くんじゃないか?
(落ち着け)
どちらかが。どっちかが当たりだ。そうに違いない。押したら警報が作動するのは、右のおっぱいか、左のおっぱいか。いや、左右関係ないし!て言うか爆弾じゃねえし!?何考えてるんだ僕は。何かもう、自分が。何をしたいのか分からない。
(今夜はクリスマスなんだ)
恋人同士が一線を踏み越える。それがニッポンの聖夜じゃないか。
「男でしょう!?先輩、ここで根性みせないでいつ見せるんですか!?」
心の中の依田ちゃんが火を点ける。そうだ、もうへたれなんて言わせない。九王沢さんだって悩んでるんだ。ここは九王沢さんを起こしてでも、一発決めるしかない。
その途端だ。
「那智さん」
はっきりとした声だった。九王沢さんが、僕を呼んだ。まだ、眠ったままで。でもはっきりと、話しかけて来た。
「もう一度言ってください。お願いします。あのときみたいに」
そう言った九王沢さんの眉は、切なげに潜められた。
「また、ランズエンドで。わたしが好き…だって」
「九王沢さん…」
僕は言葉を喪った。いつも、なのだろうか。九王沢さんは、夢の中で僕に、こんなにも切々と語りかけていたのだ。
「わたし、あなたの新しい特別になれるでしょうか…?」
そこで僕の、時間が停まった。
思い出した。
九王沢さんはもう、僕のただの恋人じゃないのだ。
忘却し、棄却された彼岸から、僕の大事なものを拾い上げてくれた存在。僕が愛した果恵は死んだ。そこから産まれた新しい果恵にはその果恵の正答があった。それに気づかせてくれた欠けがえのない人。そして僕が生きる、新しい世界と新しい答えにたどり着かせてくれた、ただ一人の女の子。
あのとき僕は思ったのだ。
その答えは僕が一人であったなら、たぶん一生を懸けても、解明できなかった。あのブラックボックスの意味を、空白を。それがただ一人、僕の前に現れた、空前絶後の直感を持った九王沢さんが、時間の呪縛から解き放ってくれたのだ。
九王沢さんはあのランズエンドとは違う、もう一つのランズエンドの彼方から来たのだ。
彼岸で出逢った僕たちは新しい世界に生きると決意したのだ。
「あなたが好きです」
僕たちはその言葉を交わし合った。
あれは正しく、僕が九王沢さんとそこへ、歩んでいくために決意した言葉だったじゃないか。
「いないよ」
誰にも聴こえていないのに、口をついて出た言葉は、九王沢さんが呟いた寝言の答えだった。
「そうだったんだ。九王沢さんはとっくに、僕のかけがえのない特別だ。もう、誰にも替われない。なんでも新しいことを、するなら二人でだよな。だって」
あなたが、好きだから。
続く言葉を、僕は胸に仕舞った。それは九王沢さんが僕に与えてくれた、新しい世界で最初にして、何よりもまず、大切な言葉だったから。
「那智さん、那智さん!」
すっごいテンション高い声に、起こされた。はっとして起きると、ベッドが回転していた。あれから寝落ちしていた。もう朝だったのだ。九王沢さんがはしゃぎながら、僕が乗ったベッドを動かしている最中だった。
「わたし、こんなベッドで寝たの初めてです!また那智さんに素敵な場所、教えてもらいました!那智さん、わたしこれと一緒に写真を撮りたいです。那智さんと撮った写真をイングランドの両親にぜひ送らなくては!」
「わっ、わああああやめろっ!」
朝から気絶しそうになった。やっと、我が理性が勝利を収めたのだ。そんな写真送信されたら、今までの努力が水の泡だ。
「ごめんなさい。昨夜は、とても疲れていて」
九王沢さんはまるで気にしていなかった。だって日本のラブホ知らないのだ。当然だ。ほっとしたけど、いや、九王沢さんにラブホのシステム説明しないと外に出られないんじゃないか?
「お金を払わないと出られない仕組み…なんですね?変わってますね。あ、飲み物以外にも自販機がありますよ?これは一体」
「興味を持たんでいいっ!」
僕は初めて大声で突っ込んで、九王沢さんに泣かれた。
それでもだ。
こうして九王沢さんの純潔は、辛くも守られたのだ。へたれじゃないぞ。焦らなくたっていいじゃないか。だまし討ちじゃなくて僕たちはちゃんと、結ばれるのだ。九王沢さんだって何が何だか分からないうちにことが済んでしまうなんて、どんなことであれ、嫌がるに違いない。
「今度こそ…今度こそはッ!」
「どっ、どうしたんですか?」
僕はクリスマス明けのビルの向こうの朝焼けに誓った。九王沢さんにびっくりされたけど、個人的な誓いだからこれでいいのだ。
「クリスマスが終わったら年明けですね、那智さん」
朝陽に輝く黒い髪を、なびかせて神々しい九王沢さんは今日も僕に微笑みかける。僕はそれに寄り添う。今年も、来年も。そしてそれがずっと続けばいい。ただ、僕たちは新しい世界に寄り添って行く。
九王沢さんは今日も、天使の笑みで僕に言った。
「来年もどうぞ、よろしくお願いしますね☆」