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第五話

 お互い無言のまま歩いていく。


 ──あなたは何者なの──


 俺はこの問に何も答えられなかった。いや、正確に言えば答えていいものか分からなかった。


 俺はこの世界の人間ではない、厨二的にいうなら理から外れた存在なのだ。だから怖かった。別世界の人間であるとはなされたらサクナはどんな表情をするのか、怖がられないか、離れていってしまうのではないか。情けない話、出会って一週間そこらのサクナに依存していた。


 久しぶりに出会った俺を認めてくれる存在、それを失うことが何より怖かった。でも簡単に歩み寄ったら一瞬にして裏切られることも怖くある。というか実体験済みだ。


 まったく……なにがプロの引きこもりだ、ただのビビリじゃないか。いや、わかっていたことか。


 「着いたよ、入って」


 気がつけば部屋の前についていたようで、目の前には扉があった。


 「大丈夫だよ」


 その言葉とともに俺の手が強く握られる。不意にドキッとしてしまう俺がいる。


 「私はいなくならないよ。カズヤと一緒にいる」


 でできた言葉に別の意味でドキッとさせられる。どこまで聞かれてたんだ……まさか別世界の人間とかも……


 「よくわからなかったけどカズヤが怖がってるのはわかった。だから安心して」


 ──私はここにいるから


 「……ありがとな、サクナ」


 この感謝は、言葉にして伝えるべきである、そんな気がした。


 「ちょっと散らかってるけど気にしないでね」


 そうは言われたが、見る限り完璧に整頓された部屋が目の前に広がる。元の世界の足の踏む場所もないくらい漫画やラノベで埋まった部屋を思い出したから尚更だ。


 全体的に水色でまとめられた家具、そこは紛れもない"女の子の部屋"だった。

 あれ? もしかして女の子の部屋に入ったのって生涯初めてじゃ……


 「どうかした?」


 理解した瞬間に飛んだ意識がサクナの言葉によって現実に戻される。

 というかその首を傾げるのは癖なの? 可愛すぎてコロッといっちゃいそうなんだけど! さすがサクナさんまじ童貞キラー。略してSSMDK


 「じゃあ勉強しょっか、今日は魔法学をするの」


 魔法学か、ゲームとしての魔法しか知らないし勉強しておくに越したことはないか。


 「じゃあまずは基本的なことから話すね。知ってるかもしれないけど聞いてて」


 小さく咳払いをして教科書?を手に持ってこちらを向く。

 俺はその場に座り、耳を傾けた。


 「まず魔法は火、水、土、風、雷、光、闇、無の8つの属性から成り立っています。そしてその魔法はそれぞれ下級、中級、上級、超級、滅級、神級の6階級があります」


 ここまでは知ってることだな。ゲームと同じだ。


 「神級は現在確認されているので無属性を除いた各属性に2人、無属性神級はまだ発見されていません。でも無属性は滅級まででどのような戦闘でも対応できるので神級は存在しないのではないかと言う噂があります」


 へぇーそんな世界情勢があるのか。

 ちなみに無属性神級魔法はあるからな。


 「次は詠唱です。詠唱は使いたい魔法をイメージすれば詠唱が頭の中に流れます。しかしたった一人だけ無詠唱魔法を使える人がいます」


 無詠唱!? 短縮詠唱(スペル)でもなく? そんな奴もいるのか……


 「最後に合成魔法。現在一番すごい人は超級全属性合成魔法の『八色乱合』」


 よし、勝った。俺の最高は滅級全属性合成魔法の『灰燼(かいじん)』だからな。詠唱長すぎて使い物にならないけど。

 まぁこの世界で最強の合成魔法を使えることがわかったから収穫かな。


 「以上、サクナの魔法講座でした、勉強になった?」

 「おう、助かったわ」


 やっぱりゲームとは違うな。詠唱無効(スペル)はかなりのやつが探してたけど見つけたやつはいなかった。これも現実ゆえにってところか。


 「じゃあ次は魔法の実践練習するから庭に行こ?」


 庭……だと? 落ち着くんだ俺、プロの引きこもりのとしての信念を忘れるな。汝家から出るべからず。今は色々あって部屋から出てきているがあくまで俺は引きこもり、本来は家から出る存在ではない!


 「ついてきてくれないの……?」

 「もちろんついていく」


 再度言おう、可愛いは正義だ!

 そしてサクナのSSMDK力に勝てるわけなかったね。



 ******



 家から出る瞬間、若干の寒気と恐怖心はあったが、サクナのおかげでなんとかなった。正確に言えばサクナが手を繋いでくれたおかげでなんとかなった。なんだろ、すごい恥ずかしい。


 「サクナは魔法はどれだけ使えるんだ?」

 「風魔法と光魔法の上級、ほかの属性は中級まで。無属性は初級。合成魔法は中級の3つまで」

 「それって凄い方なのか?」

 「凄いのかどうかはわからないけど、魔法だけなら高等部の人にも負けない?」


 高等部……? あ、あれか。見た目中学生だけど年齢は高校生的な? だってサクナそんなに強そうじゃないし。


 「失礼な、私強いよ」


 そう言って少しほっぺたを膨らませる。何この生き物超可愛い。

 お持ち帰りしたいくらい可愛い、でも今は俺の家はサクナの家でもある。やったねカズや君、合法同棲だよ! 親公認だよ!


 これだけ見たら人生勝ち組みたいに見えるからすごい困るね。


 「ちなみにサクナは何歳なんだ?」

 「女の子に年を聞くのはマナー違反」

 「た、たしかに……ごめん」

 「でも特別に教えてあげる、私は今年で14歳、中等部の2年生だったはず」


 ということは……日本年齢で中学2年生か。見た目通りだな。


 「あれ? ということは中学生なのに高校生と対等に戦えるってことか?」

 「うん、魔法ならだけど。ちなみに最高成績は中等部1年生のときに高等部3年の生徒会長に引き分け」


 ヤダこの子、すごいエリート。今理科室登校してる人を保健室登校してる人と同類にして仲間意識を抱いていた人を思い出した。今の俺、そんな感じ。

 なんだよこの分かりづらい例え。


 同じコミュ障引きこもりかと思ってたけどサクナはコミュ障エリートか、見てくださいこの圧倒的ッ格差! サクナさんは同類どころか雲の上の存在でした、勝手に同類にしてすみません!


 「どうかしたの?」


 違う、サクナの使える魔法は俺より格下だった。つまりこの世界なら俺はエリート! いや、エリートどころではない。この世界に数人しかいないレベルの人間だ! 完璧じゃないか!


 「カズヤ」


 物思いに耽っていると腕に申し訳程度の柔らかさを感じる。見るとそこには俺の腕に抱きついているサクナが。あってないような胸だか押し付けられると柔らかさは確かに感じ取れて……


 「おまなにやってばか離れ落ち着け!」


 軽い発狂状態に陥っていた。

 だってしょうがないよ、最後に女子と会話した日もわからないくらいなのに抱きつかれて、なおかつ胸を押し付けられては俺の童貞パワーが炸裂するではないか。何それすごいいらない。SSMDKだよ。これ何回目だよ


 「カズヤが落ち着いて」

 「あのな! 胸! 当たってる!」

 「あっ」


 そう言うと少し俺から離れる、そして俺の目を見て一言。


 「エッチ」


 助けてくださいおまわりさん、今とてつもないような冤罪を押し付けられました。でもこんな可愛い子を警察に突き出すくらいなら自分が捕まるかも。


 どうしよう、サクナのせいでロリコンに目覚めそうだ。コミュ障引きこもりのロリコンとか救いようがないな。これは犯罪者予備軍呼ばわりされても仕方かがないかもな。そんなこと自覚したくはなかったけど。

ロリコンの引きこもりを貰ってくれる優しい人はいませんかね……?

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