第十八話
皆様お久しぶりです
色々とあって書けない日が多く、こんなに遅れてしまいました。
久しぶりの執筆のため、今回、次回位は文章に違和感を感じるかもしれませんがご了承下さい
時間が取れれば直します
戦闘開始からすでに一時間が経過しようとしていた。
魔王の顔面にあった無数の顔の塊は半分ほど抉られ、明らかに衰退しているように見える。
……でも疲労度なら俺の方が謙虚だな。
HP、MP回復用のポーションはほとんど切れた。
それ以上に一時間も戦っているという精神的な苦痛や肉体的疲労も相まってすぐさま寝込みたい……
周りの地面も穴だらけでまともな足の踏み場所は数えれるほどしかないから回避もキツくなってくる。
一応『浮遊』を常時使用しているがそのせいで余計にMPが消えていく。
……絶体絶命、か。
正直逃げたい。
なんで俺はこんなに頑張ってるんだ? こんなの俺じゃないだろ? いつも通りに逃げてしまえばいいだろ。
そんな考えが頭によぎる。
でもそうできない理由が城にはある。
「……サクナ」
一言呟く。
それだけで頑張れるような気が……起きるわけではない。
でも守るべきものの再確認位はできた。
「ヒロインを守るために土壇場で覚醒みたいな展開は無しですか……ま、その方が俺らしいか」
主人公ではなく影として支えるって決めたんだ。
全うしてやるよ。
「ラストダンスだ!」
インベントリからラストの最上級MPポーションを取り出して握り割る。
全快したステータスを確認してから空中を蹴り、一気に飛び掛る。
「略式詠唱:
Derdhur mblidhen rreth rrënojave『瓦塊集破』」
周りの壊れた瓦礫を一瞬で集めてからこちらに向けて振り下ろされた腕に衝突させて攻撃をずらす。
「まだまだぁ!
Veshin shpatën akull『氷剣』」
大太刀に冷気を纏わせて切りつける。
白夜の追加効果もあり、体内を氷柱が貫いている音がリアルに耳へ届く。てかキモイ。
「連続詠唱:Vazhduan të qëndrojnë depërtojnë zgjeruar ehull terren『浮氷柱斬』
Këmbët e ftohjes ngrirjes lëvizje të ndaluar『氷動結固』」
クールタイム無視で連続して魔法を放つ。
一度目で地面から氷柱が伸びて足元に突き刺さり、二度目でその氷柱が太くなり、動きを止める。
「はぁ……はぁ……さて、オシマイだ」
一気に魔法を唱え続けたせいで酸素が足りてない……辛いわ……でもラスト!
「Gur dispelled lyer në shkumës, kërcejnë shkërmoqet për të luajtur. Përtej vdekjes madje edhe të ndaluar me mijëra vjet për të festuar në atë kohë 」
詠唱が終わる。
今は周りに誰もいないから被害が出ることもないだろう。
MPも殆ど空。剣先に溜まった冷気は十分。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫びながら突撃する。
「「「グギャァァァアア」」」
「がぁっ!」
無理やり振るわれた腕が横腹に命中する。
同時に骨の砕けるような音。
気を失うほどの衝撃と痛み。
「死ねぇぇぇぇぇ!『永劫領域氷結』!」
魔法名を唱えて刀を振りおろした瞬間、またも世界が凍りつく。
そしてコンマ数秒遅れて殴られたことによる衝撃で吹き飛び、壁に衝突する。
「がはっ……」
……もう体痛い、早く寝たい、フラフラするし辛い。
「でもやった……よな?」
壁から離れて重力に従い落下していく中で魔王の姿を目に入れる。
今は魔法の影響で凍りついている。でも、もうそろそろしたらポリゴン片のとなって消えて……
「「「ギャアアアアアアアアアア」」」
魔王の絶叫が、地下室を揺らした。
え、まって? なんで? 当たったよ? なんで死んでないの? ねえ? ねえ? ねえ!
「いやだ……なんで……」
絶叫しながらこちら側に飛んでくる魔王。
もう無理だって。
俺の体は動かない、だって疲れたし。
だから死んでよ。
必殺技みたいにかっこよく決めたのにさ、なんで邪魔するの?
「………………死にたくない」
そんな思いとは裏腹に魔王の腕は振り上げられて、狙ったかのように先ほど殴られた場所へと吸い込まれるように振り下ろされていき、
「死なせはしないよ!!」
ギリギリのところで間に割って入ってきた少女の蹴りによって弾き飛ばされた。
「やああああああ!」
そうして魔王に向けて掌底を一発入れると、奥の壁まで巨体が吹き飛んでいく。
赤いオーラを纏って。
「え…………ミキ、か?」
「ボクがほかの誰かに見える?」
間違いない、可愛いのにボクっ娘のレア属性な少女なんてミキくらいしかいない。
「いや、お前はお前だな」
「あったりまえじゃん!」
そう言って笑うミキ。
少し前に不快感を覚えていたのに、今は底なしの安心感を与えられる。
「なんかごめんな」
「なにがー? あ、助けに来たことはお礼なしね! 出会った時の恩返しってことで!」
「変な奴に襲われそうになってた時か。なら礼は言わないでおく」
「……お礼なしって言われてほんとにお礼しないのは珍しい傾向だと思うよ」
「気にすんな」
「りょーかいっと」
無駄話をしながらも魔王へと視線を向ける。
吹き飛ばされたことによる怒りか、ただひたすら叫び続けていた。
うるさいなぁ。
「助けに来たのはいいけど残念なお知らせ。ボクのこの状態長くは続かないから早期決着でお願いね。気絶する前に終わらせよ」
「りょーかい」
返事をして、残っていたMPポーションを握り割る。
MPは殆どないから無駄に使うこともできない。
そうなると火力特価で火属性魔法使うか。
「得意じゃないんだけどなぁ」
「なにが?」
「こっちの話だ。それよりもこいつに物理ダメ効かないからダメージソースは全部俺になる」
「……よくあんなにでかいやつをあそこまで、魔法だけで消耗させられたね」
「チーター舐めんな」
「……良く分からないけどカズヤくんしかダメージ与えられないのはわかった! なら全力で援護させてもらうからデカイのぶち込んでよ!」
「おーけー、んじゃいくか!」
声を掛けて一緒になって飛び込んでいく。
てか良く見たらミキは姫様バージョンの格好のままだし、あんなので戦えるのか?
「やぁぁぁぁあ! 甘い! まだまだぁぁ!」
叫びながら対等に渡り合っていた。
いやホントあの子何者だよ……赤いオーラみたいなの関係してるんだろうけど……まあ後から聞けばいいか。
残りのMP、敵の消耗度から考える最適の魔法……
「長編詠唱:魔力節約」
略式詠唱の逆、詠唱を長くすることによって魔力節約をして威力を据え置きする。
あのミキならきっと詠唱中にこちらに近づけるようなことはしなさそうだし……信じていいよな。
「Provoni të djegur nga djegia Zjarr i pjekur në skarë paguajë të gjitha flaka『煉獄』」
火属性中級魔法。
目の前に火の玉を生み出し敵にぶつけるだけの簡単な魔法。
普通なら大した威力は出ないはず。
「でもチートスペック舐めるな。
ミキ、引け!」
「了解……ってこの大きさなに!?」
そう、普通なら1メートル程だが、生み出されたのは5メートルはありそうな巨大な火の玉。
慌ててミキが逃げ、すぐ後に魔王へとぶつかり、直後爆発音。
そしてかなり大きいポリゴンが砕ける音が響き、今度こそ魔王が絶命したのを知らせる。
「今度こそ終わっただろ……」
呟いた瞬間にMPが尽きて、当然ながら浮遊も切れて。
「お、おちてるっ!」
「危ないよ!」
魔王が生み出したクレーターとも言えるものに激突する寸前でミキに抱きとめられる。
さ、最後まで締まらねぇ……
「って魔王は?」
「大丈夫みたい、煙も晴れてきたけど何も残ってないよ」
たしかに上を向いてみてもにも目には入らない。
「……終わったぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
自覚した途端に、激しい疲労が襲ってくる。
「え……ちょっと!?」
慌てるようなミキの声も耳に入るが反応する元気もないわ……
「お休み……」
意識がブラックアウトする寸前で思う。
普通なら主人公が抱きとめる側だよな……
*******
カズヤが気を失い、ミキに支えられているのを横の暗い小部屋から眺める人が三人。
国王、騎士団長、そしてサクナの三人。
「……まさかあれを倒すとはな。強いのはわかっていたが流石に予想外だった……」
思わずと言ったように騎士団長が呟く。
それもその筈、あの魔王はこの国が生み出し、そして管理することすらできなく封じ込めていた謂わばこの国の負の象徴。
そんなモノを倒したというのはにわかに信じ難いだろう。
「まあ助かったわい。有効活用することもできなく邪魔だったものだ。いたずらに兵を消費することなく存在を揉み消せたのだ。礼を言いたいくらいだ」
そう言って小さく笑う国王。
「だが、揉み消すには存在を知ってしまった者が多過ぎる」
そう言い、騎士団長の隣にいるサクナに目を向ける。
サクナもまた睨むことなく何時も通りの無感情な目でじっと国王を見ていた。
「騎士団長よ」
「……はっ」
「ワシは今からこの研究所を埋めて無かった事にする。貴様はそこの餓鬼を殺せ」
躊躇いもなく少女を殺害する旨を告げる。
だがそれ以上に騎士団長には気になることがあった。
「姫様もそこにいます。今研究所を埋めたら姫様まで埋まってしまいますよ」
言葉遣いは丁寧に、しかし明らかな悪意を込めて問い詰める。
「まあしたがないだろう。どうせ女なのだ。王位を継承するつもりもない。そのまま埋める方が利点は大きいだろう」
淡々と告げながら杖を取り出す国王。しかし最後まで言葉を聞くこともなく騎士団長は剣を抜きサクナへと
「ぎゃあああああああああああ! 手がぁぁぁぁぁあ!」
振り下ろすことなく、杖を持った国王の右手を切り飛ばしていた。
舞うポリゴン片、響く絶叫。
しかし気にせず騎士団長は告げる。
「今まで貴様の言いなりになってきた。それがこの国のためだと信じていたから。でも今貴様は姫様を殺すと言った」
ひと呼吸置き、そして叫ぶ。
「俺の一番の優先事項は亡き王妃の遺言である"姫様を守ること"だ! それだけは曲げるつもりはない!」
「ひぃ!?」
言い放ち、ハッとしたようにサクナに目を遣る。
「見苦しいところをお見せしました……」
「大丈夫です……それより、このままだったらこの人死にますよね?」
国王をこの人呼ばわりしている事に疑問を抱きつつも答える。
「ええ、部位欠落の継続ダメージでHPが切れるでしょうね。ですが助けるつもりはないですから」
「助けてあげるつもりもないです。なら剣を少しだけ貸してもらえませんか?」
サクナの言葉に戸惑う騎士団長。
この剣は国王殺害の凶器、易々と貸していいものなのかと。
(しかしこの圧力はなんなのだ……こんな小さな少女のどこからここまで殺意と呼ぶのに相応しいものが……)
「……ええ、少しだけなら」
圧力に押されて貸すことを決める。
そして次の瞬間にはその決断を後悔することとなった。
「お、おい! 我を助けるのだ! 褒美は渡す、だからそこの娘よ早く助けガッ!?」
受け取った瞬間に国王へと駆け寄って胸元へとその剣を突き刺したからだ。
小さく息を漏らして国王は絶命。
体全てがポリゴン片へと化して空気中に溶けていく。
「なっ……」
戸惑う騎士団長には目もくれず、虚空に向かって、いたって冷静に呟く。
「お父さんとお母さんの、仇」




