第十三話
俺達は今、玉座の前で王様らしき人と向き合っている。
何を言っているのかわからねーと思うが俺もわからん。
「そなたら、娘を助けてくれたそうだな。ハルヴァン城国王として礼を言う」
「はぁ……」
「こちらのミスでそなたらに剣を向けたことに関しては謝る。どうか水に流して欲しい」
「はい……」
「そもそも……」
そう言って話し続ける国王。
どうしてこんなことになってるんだよ……。
遡ること数分前。
「とりあえず姫が目覚めてから事の成り行きを聞こうと思っている。それまでお手数だがこの部屋で待機していてくれないか?」
大男のリーダーこと騎士団長さんが案内してくれた部屋はベッド、タンス、ソファ等生活用品が揃っていた。奥を見れば台所らしきものまである。
ここで生活できそうだな……でも日当たりがいいからだめだ。
俺の部屋は暗く、光の入らない部屋じゃなければ……
ふふふ
「な、何か不満に思うところがありましたか?」
「なんでもないので気にしないでください……この人は少しヘンなんです」
サクナがやけに辛辣です。
まあしたかない。ヘンなのは事実だからね。
「そ、そうか。ならばゆっくりしていてくれ。言ってくれれば簡単な食事も用意する」
そして騎士団長さんすごいいい人。
ごめんなさい、殺そうとして。
騎士団長さんが扉を閉め、サクナと二人っきりになった瞬間、肩の力が抜けていくのを感じる。
いやー疲れた。
「カズ兄は何もしてないよ……? 私を巻き込んだあとから全部私に任せっぱなしだった」
「それに関してはほんとにごめん」
「ちょっとだけ怒ったよ?」
そう言いながらも相変わらずほとんど表情の変わらないサクナマジ可愛い。
今となっては変化がわかってきたけどね。
「ごめんって」
そう言いながら頭を撫でてやる。これで多分解決する。
「そんな……私は、単純じゃない」
そういいながらも嬉しそうに撫でられてるじゃないか。
見逃してもおかしくないような少しの変化だけど。
「むぅ……」
拗ねたようにほっぺた膨らませるサクナたんマジ天使。
「からかわないでよ……もう」
「お二人さん、イチャイチャしてるところ悪いんだけど」
突然の背後からの声に思わず数メートル飛び退く。
ってかほんとに広いなこの部屋。なんで数メートル飛び退いても大丈夫なんだよ。
「あれ? あの時の……」
「どーも、姫様です!」
「……」
俺が思い描いていた姫様と違う……もっとお淑やかで上品なんじゃないの?
「まずは自己紹介ね! ボクはミキって言うんだ。姫様やってまーす」
軽いよ、この姫様すごい軽いよ。
良く言えばフレンドリーだけど姫様としてはどうなんだこれ。
「私はサクナ。よろしく」
「カズヤです」
「サクナちゃんにカズヤ君ね、よろしく!」
そういって駆け寄り、俺たちの手を握って笑うミキ。
その笑顔はいうなら太陽みたいで……一瞬ドキッとしたのは内緒だ。
……ごめん、冗談だからそんな目で見ないでサクナさん。
『ロリコン死すべし慈悲はない』って目が語ってるから。
「突然だけど二人は恋人なの?」
「「違う」」
「わぁー、息ピッタリだ!」
……なにがそんなに楽しいんだろうか。
ふとした瞬間にあのクラスメイトに重なる。別に似てるわけでもないのになんでだろうな。
いや、アホみたいな笑い顔が少し似てるかも。
「……要件は?」
「なんだよーつれないなー」
頼むから、そうやって明るさを振りまかないでくれ。
明るさにやられて灰になるから。
「えっとね、さっきの要件を話したら父上が話をしたいってさ。だから付き合ってあげてくれないかな?」
姫様の父上…………国王?
無理っすわ。
「ごめん……それは……」
「あー拒否権はなさそうなんだ、ごめんね?」
1日に2回も拒否権発動を受け付けられないなんてふざけてる。
「私は関係ないからここにいていいかな?」
なっ、サクナ逃げるつもりか!?
「別にいいと思うよー」
「だめだ、連れてく」
「ここにいたい」
「道連れだバカ」
「ひどい」
そんな不満そうな顔されても知らない。俺が行くんだ。サクナもついてきてもらわないとな。
……本当にこの国が親父さんを殺したなら相手を把握しておくに越したことはないから。
「……わかった、ついていく」
「なんか恋人というより……夫婦?」
「「もっと違う」」
「やっぱり息ピッタリだね!」
そう言ってまた楽しそうに笑う。
可愛いとは思うのに……やっぱり苦手だ。
「わかった、じゃあ行こ?」
「りょうかいです……」
そうして初めの国王様の長い演説に戻るわけで。
改めて注意深く見てみると。
格好は髭をはやし、いかにも王様って感じだな。
話してる内容は助けてくれたお礼みたいだかどうにも感情がこもってない。
端的に言うならすごい嫌な奴、ってかんじだな、ミキには悪いけど。
「……ということだ。では下がって良いぞ」
観察してるあいだに話は終わったみたいだな。
サクナが失礼しますと言うのを確認して後についてく。
いやー長かったなー。
「立ちっぱなしで少しだけ疲れた……」
「ほんとだよ、同じ話を何回かしてたし、どうして一番偉い人ってのは話がないのかね」
校長然り国王然り。
「あ、お疲れ様ー」
そう言ってミキが走りよってくる。
「お疲れ様、随分と長いこと話してたみたいだね」
「正直うんざりだ」
俺の素直な意見に一瞬ぽかんとしたあと笑い出すミキ。何がおかしいんだ?
「いやー一国の王に対してそんな口を聞ける人なんてそうそういないよ? 面白い人だね」
「生憎と礼儀なんて学ぶ暇もなかったからな」
学んでたとしても尽くす気はないけど。
「キミたちならいいかもね」
「っ!?」
ミキの小さなつぶやきに対して過剰に反応するサクナ。
読心関係っぽいな、後で聞いておくか。
「じゃあ今日はお城で休んでいいよ! お風呂とかはミエルに説明させるからー」
「ミエルって?」
「あーえっと、騎士団長って言ったらわかるかな?」
「うん」
「じゃーそういうことで僕は自分の部屋に戻るね! また明日!」
そう言い残して嵐のようにさっていくミサ。
その瞬間、肩の力が抜けるのを感じる。
思ったより気を貼ってたのかな……
「なんであんなに嫌そうだったの? 悪い人には見えなったけど。お父さんの事をが原因?」
「いや……気にするな」
そして思考停止。考えが読まれる以上下手に探られる訳には行かないからな。
「むぅ……」
「そう拗ねるな。だれだって隠し事の一つや二つあるんだから」
性癖とかトラウマとか黒歴史とか思い出とか。
後半はほとんど一緒だな。
思い出とトラウマが同じ分類なのは俺特有。
「なら聞かない」
「助かる」
「でもお前だって一瞬だけひどい反応してなかったか?」
「あ、あれは……」
タイミング悪く部屋に響くノック。
「どうぞ」
「失礼する」
そして何も言わなくても俺の代わりにノックに反応してくれる都合のいい女の子サクナって痛いから脇腹つつかないで!
「姫様の命によって二人にはここに泊まってもらうことになった。宿をとっているようだったら今日の分は支払うから姫様の横暴を許してあげてはくれないか?」
「い、いえ。そんなこと」
ほんとにいい人だよ団長さんもといミエルさん。
「す、すこし聞いていいでしゅか?」
噛んだ! だけど会話できた!?
「ええ、答えられることなら」
「なんで姫様はあんな城下町を走り回ってたんですか?」
聞いた途端に固まるミエルさん。
まずいこと聞いたか……
「……少しお転婆な方なので、お気になさらず」
嘘だな。
聞いた途端に固まった笑顔。
どう答えるべきか探して泳いでいた瞳。
強ばった体。
深くは追求しないでくれという思いが伝わるこの威圧感。
嘘をついてるやつの典型みたいなもんだな。
てか怖いんでその威圧感引っ込めてください。
「……そうですか」
「はい、では入浴に関する説明をさせていただきますね。この城では……」
・・・
「……となっております」
長い三行
……にまとめよう。
1.風呂は一つしかないので時間交代制。
2.姫様の意向で客人専用の時間割を作ってくれたのでその時間内にはいってくれ。
3.ただし後が詰まるので30分だけ。
4.男女の仕切りはないから一緒に入ってもいいんだよbyミサ
……最後以外は理解できたわ。
そして三行はむりだった。
「わかりました」
「早速なのですがもうそろそろお二人の時間なので準備をお願いいたします。着替えは簡単なものを用意さてもらいますのでお気になさらず」
まさに入れたり尽くせたりだな。
こんなにいい国なのか。永住したい。この白に住み着きたい。ひきこもりたい。
あ、やっぱり俺の思考はそこに辿り着くんだ。
「では、失礼します」
扉が閉じて、静寂に包まれる。
さて、現実逃避もこれくらいにしてこの空気の原因を考えよう。
ミサの余計な一言だな。ハイ解決。
「カズ兄……」
「な、なんだ?」
落ち着け、期待するんじゃない引きこもりの屑野郎。『一緒に入いろ?』みたいなラブコメ展開はないんだ!
てかこれサクナに聞かれてるんじゃ……
「一緒に……はいる?」
「いや、でも……問題が……」
「……」
「……」
気まずい……死にたい。
「と、とりあえず行こう! 時間もないし!」
そう言ってサクナの手をとって歩き出す。
あっ、って声が聞こえた気がするけど気のせいだと信じたい。
「とりあえずサクナは入ってろ! 俺は……一緒に入るか考えるから!」
勇気を出してサクナに告げ、風呂と説明されていた部屋の扉を開ける。
「あ」
「あ」
「あ」
三人の声が共鳴する。
そこには日本でよく見られる銭湯のような形になっている脱衣所があり、そこにはどこがとは言わないが全体的にフラットな体型をした少女がいた。
栗色の濡れた髪を指でいじりながら同色の瞳を驚きに染めていた。
長々と説明したが端的に言おう。
ミサがいた。
「すっっっっみませんでしたぁぁぁぁぁ!」
無駄に高いステを使った。高速土下座を放つ。
王族の着替えを覗く、か。
これ……死ぬかもな。




