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第十二話

 「美味しかったね」

 「おう」

 「明日の朝は何食べる?」

 「サクナの好きなものでいいぞ」


 正直こっちはそれどころじゃないから。


 「なにかあるの?」

 「ああ、なんでもないから気にするな!」


 むしろ気にされたらこっちが困るまである。


 「へんなの? んー……眠いから寝ていい?」


 来てしまった……


 「おう、俺のことは気にせずに……」

 「ダメって言ったよ?」

 「……はい」


 ちょっと凄みながらも悲しそうな顔なんてされら断れるわけないじゃないか!


 「じゃあ……寝よ?」


 サクナは俺を萌え死にさせるつもりですかそうですか。


 「じゃあ……失礼します……」


 電気を消し、サクナと同じ布団に入る。

 途端に会話がなくなり、沈黙に包まれていく。


 落ち着け、沈黙には慣れてるじゃないか。いつも通りだ。

 隣にサクナがいたところで何も変わることがない。だって俺にはこの状況で襲うような度胸はない。よってオールグリーン。


 「ねぇ、カズ兄」

 「な、なんだ?」

 「……いなくならないでね」


 ……馬鹿みたいだな、俺。

 一緒に寝てるのは深い意味はない、ただ不安なだけじゃないか。


 「当たり前だろ、ずっと一緒だ」

 「そっか……ねぇ、手貸して?」


 無言でそっと手を差し出す。

 するとサクナはその手をとって握り、胸元で抱きしめる。


 「お休み」

 「おう」


 そのやりとりを最後に、落ち着いた鼓動で眠りに落ちていくサクナ。


 「絶対守るから」


 余った手で頭をなでながらつぶやく。

 しかしどうしたものか。


 「寝れる筈ないよな……」


 眠る中学生女子と同じベッドで寝れるほど俺の精神力は強くないんだよ……



 ******



 激しい太陽の光を感じて目が覚める。

 なんで朝日が……カーテン閉め忘れたのか? まだ俺の行動時間になってないんだけど……


 「おはよ、カズ兄」


 ……事後?








 じゃない! 落ち着け、まだ慌てる時間じゃない、素数を数えるんだ。2.4.6.8……これは偶数だ。


 「落ち着いて?」

 「俺はちゃんと落ち着いてる。心配ない」


 そう、今は家にいるわけじゃないんだ。そして部屋をとったらシングルベッドで、仕方なく一緒に寝た。おっけー思い出した。


 「今日はどうするの?」

 「えっと……とりあえず軽く観光するか?」

 「いいの?」

 「お前がそれでいいならな。親父さんの件に関してはもう少し調べてからの方がいいだろうし」

 「うん、そうだよね」


 ……あまり嬉しそうではないな。

 年頃の女の子とはいえやっぱりこの国で遊ぶのは抵抗あるのか?


 「じゃあ行くか」

 「うん。あ、姿消さなきゃ」

 「危ない……忘れるところだった」


 流石に店の人も入っていった客一人一人なんて覚えてないから大丈夫だろうけど。


 「油断しちゃダメだよ?」

 「はーい」


 若干めんどくさい……


 「どこ行こっか」


 宿屋をでてから少し歩き回る。

 この辺は昨日の夕食の時に見て回ったが目立ったものは特になかったしな。

 別にお前の好きなところでいいからな。行きたいことろ特にないし。


 「んーとじゃあ……」

 「痛っ!!」


 いきなり背中に衝撃が走る。

 それと同時に隠密が解けて姿を消す効果が消え去っていることを自覚する。ってまずい。


 「あいたたた……」


 この子からしたら何もない空中でぶつかって気がついたら俺がいたことになる。


 「あっ、えーっと……」


 街中で姿を消してるなんて犯罪臭しかしない。訴えられて捕まるかも……


 「ごめん! ボクちょっと前見えなくてさ。お兄さんは大丈夫?」


 前を見てなかった……た、助かったのか……?


 「へっ? そ、そんなに痛かったの!?」


 突然崩れ落ちた俺を見てぶつかったことが痛かったのかと勘違いして慌てる少女。というかボクっ子だと!?


 「あ、いや……だいじょう……ぶ」


 しかし俺にはボクっ子とコミュニケーションを取るすべがない。ちゃんと言語は通じる筈なのになんでなんでしょうね。コミュ障だからだろ知ってるよ。


 「あ、ボクちょっと急いでてさ。また今度お詫びするね!」

 「そんな……」


 気にしないで……って走っていってしまった。なんだったんだ?


 「ねえ、カズ兄」

 「なんだ?」

 「あの子……」

 「ちょっといいかな?」


 サクナがなにかを言おうとした時に背後から声をかけられる。

 振り向くとそこには大男が四人……ごめん、逃げたい。


 「さっき女の子とぶつかっていた様だがその子がどこに向かったかわかるか?」


 無言で走っていった方向を指さす。

 早く居なくなってくださいおねがいしますなんでもしますからぁ!


 「そうか、ありがとう」


 そう言うと少女が走っていった場所に同じく走っていく大男達。


 助かった……のか?


 「あの子……」

 「あ、ごめんなサクナ。なんだって?」

 「苦しんでた。泣いてた」


 …………なるほど了解した。


 「サクナはここで待っててくれ」

 「ありがと」

 「なにがだ? 俺は少しだけどこか行くだけだからな」

 「……そっか、なら早く戻ってきてね」

 「了解」


 お姫様の頼みは断れませんからね。


 さて、なれないこと(ひとだすけ)、してみますか。


 「『瞬動』」


 小さくスキルをつぶやき、一瞬で大男たちを抜きさり、少女の走っていった方向へと急ぐ。


 状況とサクナの言い分から察するにあの大男達に追われていたと考えるのが自然だろう。

 なら抜きさった今は脅威となるものはないはず。


 追われている理由が何にせよ助けてあげるくらいできるだろ。


 「こんなことするキャラじゃないのにな……」


 ええ、サクナの頼みじゃなかった断ってましたよ。


 「『索敵』」


 どこだ……逃げてるなら路地裏とかか?


 「いた!」


 そして残念なお知らせ。

 もう一人変な男がいる。武器も持ってるみたいだし大男軍団の仲間だろう。


 よし、斬って問題ないか。


 インベントリから小刀を取り出して裏路地に突っ込む。


 「くそっ、なんでこんなことに!」


 少女の悪態をつく声が届く。


 これは急がなきゃいけなさそうだな。


 「『瞬動』そしてさようなら」

 「えっ?」


 男の素っ頓狂な声と同時に首が飛ぶ。

 こんな雑魚相手なら小刀でも一撃か。


 「な、なにが……?」


 ってまずい、この子の目の前で首飛ばしちゃったよ。SAN値ピンチだよ。


 「かっこいい!」

 「は?」


 チョットナニイッテルノカワカリマセン。


 「どうやってやったの? 目にも止まらぬ早さってやつだよね!」


 興奮したように俺の手(血塗れ)を取る。


 この子はバーサーカーかなにかなのかな。戦闘狂かな?戦闘民族かな? 怒りで髪が金色になっちゃったりするの?


 「ってこんなことしてる場合じゃない! ちょっと着いてきて!」

 「あっ……ちょ……」


 何この子強引。


 「今とある人に追われて……」

 「我々がいるのをわかっていながら愛引きですか? 姫様」

 「やっば」


 俺も同じ気持ちだよ。というかもっと危ないよ。俺は血塗れだし。


 「その男は……!?」


 うん、血塗れなの気づかれたね。

 まあさっき殺したやつの仲間だろうし、殺しても問題ないよね。


 「貴様姫様に何をしたぁ!」


 そう言いながら一人の男が剣を抜き、飛びかかってくる。


 おっそーい! 止まって見えるぜ!

 冷静に回避して袈裟斬りを……


 「だめ!」


 斬りつける刀が止まる。見れば少女が素手で俺の刀を掴みとっていた。


 赤いオーラのようなものを体から噴出させながら。


 ……え?


 「なぜ止めたのですか、姫様!?」

 「この人は……私を……助けてくれ……た……」


 そこまで言うと、気を失ったのかバタリと倒れる少女。


 ごめん、状況が全く理解できない。

 てか今更だけどこの子姫なの!?


 「……おい、お前」

 「じ、じぶんですか?」

 「お前以外に誰がいる?」

 「そ、そうですね……」


 これやばいパターンだろ……どうするんだよ。


 「確認したいことがある、城まで付いてこい」

 「な、騎士団長!?」

 「異論があるのか?」

 「くそっ……ありません」

 「よろしい、さあ付いてこい」


 拒否権はないんですかそうですか。

 というかサクナ置き去りなんだけど!!


 「あの……」

 「拒否権はないぞ」


 知ってるよクソが。


 「連れが一人なので……連れて行ってもいいでか?」

 「……合流してから城へ向おう」

 「ありがとうございます」


 緊張したぁぁぁあ!

 死ぬかと思ったよ! 簡単には死なないけどさ! こんな状況で会話出てきてるのが奇跡だよ!


 サクナ……お兄ちゃんを助けてくれ……


 巻き込んで済まないと思いはしたが俺はもう一人でいられない。

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