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第十一話

 城まで残り数百メートルであることを確認して魔法の出力を止める。

 ゆっくりと減速し始めて残り100mほどの距離を残して馬車は停止した。


 「カ……カズ兄……助けて」

 「どうした?」

 「気持ち悪い……」

 「そのまますこしゆっくり待ってろ。すぐに出発したりしないから」

 「……うん」


 とりあえず酔ってるっぽいサクナは一旦放置するとしてっと。


 「どうするかな……」


 俺は目下にとある問題を抱えていた。それはこの城での人間関係をどうするかだ。


 サクナとは普通に話してるから忘れてるかもしれないが俺はコミュ障だ。会話はできないししても成り立つ筈がない。

 というか話すどころか人前に姿を晒すのすら忌避感を抱く。

 そんなやつがこんなでかい城で過ごしていくことなどできるのだろうか。いや、できる筈がない。


 「どーにかならないものか……」


 どうにもならないのはわかってるんだけど言わずにはいられない。


 はぁ……なんで俺は引きこもってないのだろうか。


 「おい、ちょっとそこのやつ」


 ……何も聞こえない、サクナのところに戻るか。


 「聞こえてないのか? お前だよ」


 サクナの体調だってもうそろそろ良くなってるだろうし話しながらどうするか決めよう。


 「無視してんじゃねぇよ!」


 流石に無理があったか……こう肩を掴まれては聞こえないふりして戻るのも無理だし。能力的には放っておいて歩くことは可能なんだけどさ。


 「よくもこの俺様を無視してくれたなぁ……おい、こっち向け」

 「いや……え……でも……」


 というかこいつはなんなんだよ。

 馴れ馴れしすぎるだろ。


 そして一人称が俺様。ラノベなら大体噛ませ犬。


 「やっぱり見慣れない顔だな。ここら辺一帯は俺様の支配下だから、城に入りたければ俺様の許可が必要なのも知らんだろ?」


 そう言って堂々と胸を張る俺様君。

 やっぱりただのバカか。国の城一帯を自分のものとか言っちゃうあたりにおつむの弱さが見える。


 しかしこんなおバカ君相手でも論破することは俺にはできない。だってコミュ障だしねー


 「あっ……そうなんですか、ごめんなさい……」

 「わかればいいんだよ、わかれば。それにしても弱々しい奴だな。

 もっとこう堂々と……」


 そこからいかに振舞うかの話が始まり、気がつけばこいつ自身の武勇伝が始まっていた。

 〜〜を一人で倒したとか、正直初心者クラスでも倒せる魔物の名前を上げられてもこっちが困る。


 しかし絶賛コミュ障発動中の俺はひたすら中途半端な相槌をうつことしかできなかった。サクナ助けて。


 そうして体感1時間ほどの10分ほどが過ぎたところで奥から様子を見に来たであろうサクナの姿を確認する。


 来た! メインヒロインきた! これで勝つる!

 ……なんでもないです。


 「…………カズ兄、お友達?」


 やめてくれよその間。俺に友達がいないことくらい短い付き合いでもわかるだろ。心読めるんだし特に。


 「ん? 妹か?」

 「は、はぁ……」


 だからなんでそんなに馴れ馴れしいんだよ……


 「用事があるのでカズ兄を返してくれませんか?」

 「別にいいけど……」


 そう言って舐め回すようにサクナを見たあとに一言。


 「お前可愛いな、今なら俺の……」

 「お前のなんだ?」

 「は?」


 こいつは何調子に乗ったことを言おうとしたんだろうね。危うく短剣が首にめり込むところだったよ。


 「え……お前何して……」

 「なんて言おうとしたんだ?」

 「俺の彼女にしてやっても……」


 よし殺そう。


 「ストップ」

 「どうした、サクナ?」

 「殺しちゃうのはだめ」


 ……たしかにそうか。


 「今すぐここから消えろ」

 「はぁ? ふざけ……」

 「 き え ろ 」

 「ひぃっ!?」


 そうして俺様君は変な声を上げてどこかへ走って逃げていった。

 結局あいつの名前わからなかったな。もう会うつもりないからいいんだけど。



 …………俺は何をやってるんだ。


 おかしいよな!? ここに来てキャラ付け? ヒロインの身を守る過保護系主人公ですか!?

 しかも簡単に殺そうとしちゃってるし。完全に危ないやつだよこれ!


 「大丈夫?」


 あー久しぶりに見た気がする、サクナの首傾げ。癒されるわ。


 「大丈夫だ、若干自分のキャラが分からなくなっただけだから」


 よくわからなというような表情を浮かべるサクナは置いておくとして、本格的にどうするか考えなきゃな。

 こんなことが起きる度に問題起こすorサクナに助けてもらうじゃ情けないし。


 「どうするの?」

 「なんかいいアイテムでもないかな。他人から見えなくなるアイテムとか」

 「そんなのレア中のレアアイテム。国で保存されてるのとかだよ」


 他人から見えなくなる……あれ? 何かあった気が……あ。


 「草の巨人のドロップアイテム」

 「ん?」


 慌ててインベントリを開いてあのアイテムを確認する。



 自然の腕輪:魔物以外を対象として姿を消すことができる。

 軽い衝撃で元に戻る。



 「完璧じゃないか……」


 ごめんなさい、草の巨人さん。貴方は僕と違って役立たずではありませんでした!


 「いいものあったの?」

 「おう、ちょっと見ててくれ」


 興奮気味にサクナに声をかけてから腕輪を装備して効果を発動させる。


 そうすると感覚的に自分の体が消えていることが理解できた。目の前の少し驚いたようなサクナ表情を見るからに完璧に消えているだろう。


 「……でも姿消しただけで解決になるのかな? 宿とか取るとき大変そうだけど」

 「そこは、ほら。サクナ頑張ってくれ」

 「私も話するの苦手なのにズルイ……」


 これは拗ねてるのか……最近少しずつサクナの感情がわかるようになってきてる。とても嬉しいです。


 「……わかった、頑張ってみる」

 「悪いな……」

 「お兄ちゃんを助けるのも、妹の仕事」


 そう言って小さく笑うサクナに、またドキッとさせられるがそれを悟られないように……姿が見えてるわけじゃないから大丈夫か。


 「まずどうするの?」

 「んー宿だけでもとっちゃうか。当分この街だろうからいいところにするか」

 「じゃあ探そ」


 なにか忘れてる気がするな……当たり前に必要な物が足りないというか……


 「……お金は?」

 「そこのところは問題ないよ。お父さんのお仕事で溜まっていたのを貰ってきたから」


 わかっちゃいたけど、俺なんかよりしっかりしてるよな……情けなるばかりだよ。


 「じゃあ行こう?」

 「りょうかい」


 そうしてサクナに先行されて宿探しが始まった。



 ******



 「ここにしていい?」


 小声でサクナが聞いてくる。特に問題もなかったので無言で頷き、受付へと歩を進める。


 「いらっしゃいませ、何泊でしょうか?」

 「とりあえず1週間お願いします」

 「わかりました。では銀貨10枚になります」


 一週間で10枚……日本円なら1枚100円とか? ここまでボロボロの宿なら妥当なところかもな。


 「ではお部屋へ案内します」


 そう言って先導してくれる若い男に連れられて奥へと案内される。


 軽い衝撃で直るって書いてあったから周りとぶつからないように気を付けなきゃいけないのが地味に疲れるんだよな……コミュニケーション取るよりは楽だけどさ。


 「こちらの部屋になります、それではごゆっくりお寛ぎください」


 そう言って一礼し、出ていく受付の人、びっくりするくらい礼儀正しいな。


 「もう直してもいいんじゃない?」

 「確かにそうだな」


 腕輪の効果を切ってから部屋を見渡す。

 そこはなかなかの広さがあり、家電とかがない以外は現代日本でも通用するんじゃないかというくらいの豪華さだった。


 「カズ兄、失敗しちゃった」

 「何がだ?」

 「ベットが一つしかない」


 ……考えてみれば姿消して一人分料金で泊まったんだからそうだよな……でもこれってどうなんだよ!?


 年頃?の男女が部屋で二人っきり! そして一つしかないベット! どんなギャルゲ展開だよ! いや、エロゲか……なんでもないです。


 「なら俺はそこのソファで寝るから気にするな! 大丈夫!」

 「……このベッドおおきいよ?」

 「頼む、何を言いたいのかちゃんと言ってくれ。変な勘違いをしそうだ」

 「一緒に寝よ?」

 「はいアウトォ!」


 だからそういうのはダメんなんだって! 頼むからこれ以上童貞をからかわないでくれ……


 「からかってないよ。そんなところで寝ても体痛くしちゃうから」


 サクナはあくまで無感情に、そう告げる。

 なんかテンパってるのが馬鹿みたいだな……


 「わかった、言葉に甘えさせてもらう」


 あくまで兄妹として、うん。


 「じゃあ街に出て夜ご飯食べに行こ?」


 サクナに先導されて街へと繰り出していく。

 今日寝れるかな……

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