第九話
「あれ? これの名前知ってたんだ。そうだよ、これは『パソコン』」
知ってるなんてレベルじゃないが……そんなもの今はどうでもいい。
性能はどうなんだ? ネットは? てかこれあるなら教えてくれればいいのに。それだけで俺の引きこもりライフは完璧になる……
「でもなんで知ってるの? これって国の極秘機密だよ?」
………なんてごまかそうか。でも考えてることバレるからごまかしても意味ない、というかこの思考も読まれてるんじゃ?
……国の極秘機密を知っているサクナもサクナがだよな。
「カズヤは時々おばか?」
……おバカさんの代名詞みたいな子に言われましたよ。サクナはおバカさんっていうより抜けてるこだけど大して変わらないだろう。
「おバカさん呼ばわりはひどいよ」
自分で俺に対して言ったことは棚に置くんですね。えぇ、知っていましたとも。
「それはともかく使い方はわかる?」
ともかくって……
「見た目的にはXPだな、わかるぞ」
「えっくすぴー?っていうのがが何なのなわからないけど使い方教えて」
「りょーかい」
ちょっと前に8に買い換えたけどXPの使い方も暗記してるので記憶をたどりながら起動する。
うん、起動画面もXPそのままだ……なんでこんなところにこんなものがあるんだろうか?
「これはね各国で二台ずつ保有されているの。今回は長期間の遠征任務だったから貸し出されてたんだ」
それは理解できた。しかしこの世界にパソコンがあるのが問題なんだよ。しかも古いが性能は元いた世界にあった機種と全く同じ。
パソコンがこの世界でも開発されてしかも性能が全く同じだった可能性は考えてたがその可能性はないだろう。だって見た感じパソコンなんて作れる技術力はなさそうだし。
「どうかしたの?」
「……なんでもない」
気にしてもしょうがないか。俺のオタク知識に『ある可能性』が引っかったが……その真偽を確かめるすべはない、気にしてもしょうがないか。
「開いたぞ」
サクナに声をかけながら自分も画面を見る。そこには仕事と書かれたファイルと研究と書かれたファイルの二つが存在していた。
「仕事開いて」
言わるがままにファイルを開く。そこには一日おきの日付とともに報告書があった。
「お父さんの仕事はここら一帯の環境調査……だけどそれは名前だけでお父さんを国から遠ざけるために遠征任務をだしたって、言ってた」
遠ざける……? なにか問題でも起こしたのか? でもそんなことするような人には見えなかったし……
「お父さんがやっていた研究は『魔王の存在とその生態調査』」
魔王って今回のアプデで追加される予定だった魔王か? でも生態調査ってそんな簡単にできることなのか? 魔王を生け捕りにでもしないと無理な気が……
「弱い魔王もいれば強い魔王もいる。だから弱い魔王の生態調査をしてた」
なるほど……って
「え? 魔王って一人だけじゃないのか!?」
「うん、私が知ってる限りだとひとつの国の領地に10~20人くらいいたはずだよ」
まじかよ……この世界の勇者って大変だな。よかった、勇者として召喚じゃなくて。おかげで引きこもりとしての職務をまっとうできてる。
「話を戻すね。それでなんでこれを見せたのかというと文字を呼んで欲しいから。私はあまり学校に行ってなかったから読めない文字があるんだ。だからお願い」
「そんな程度なら」
でも読んで面白いものなんて入ってるのか?
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to.なし
今日からこの地域の環境調査をするハメになった。理由はわかっている。だが、確実な証拠はない。さっさと見つけて早く国に帰ろうか。
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to.国王
もう環境調査を初めて1年経ちました。調べ残したところも残りわずかです。帰国資料の準備をお願い致します。
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to.国王
なぜ帰国させて貰えないのですか? 調査資料も全て提出しました。早めに帰国して研究を進めたい所存です。
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to.シュバルツ城
魔王に関するもので、我が国が違法行為をしていることが判明しました。早急に対処をお願いいたします。
証拠資料も一緒に添付しました。
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to.なし
カズヤ君がうちに来た。元気がなかったサクナもこの頃よく笑うようになっている。なら俺は俺自身のやるべきことを全うしなければ。
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to.なし
これは間違った選択だったかな。まさか違法行為をしているのがうちの国だけではなかったとは。
下手なことをされる前にみんなを連れて逃げた方がいいかもしれん。
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「これは……」
正直予想を遥かに上回っていた。
国への報告書に日記のようなものが混在していたのはどうかと思うが。
「もしかして」
見れば今までに見たことのないような青い顔をしたサクナが床に座り込んでいた。
「お父さんたちを殺したのって、国の人?」
……やっぱりわかっちゃうのか。
状況だけ見ればそうだ。違法行為を気づかれたことによる口封じ。魔物を送り込むことによってあくまで周りには事故のように見せる。
単なる予想だが当たらずとも遠からずと言ったところだろう。
「でもどうやって魔物を従えてたの?」
そこなんだよな。全くわからない。テイムスキルなんて見つかってないし……
「ねぇ、カズヤ」
「どうした?」
「復讐したいって言ったら、どうする?」
見ればサクナの目はいつも通り無感情だったが、本気でいるのは伝わつてくる。端的に言うなら今までに感じたことのない人が放つ"殺気"というものを目の当たりにしていた。
「ついて行く」
普通ならここで止めるだろう。こんなに小さなひとりの少女が、国を相手にして復讐などできる筈がない。だが俺には止めるという行動に責任が取れない。両親を殺された怒りなんて俺には測れない。だから止めることはしない。
だが守ることはできる。
ひたすらにサクナには思うように走り抜けさせて、後から追って行くくらいはできる。そしてそれが俺にできる最大の恩返しだ。
「ありがと」
「別に」
……やっべー何カッコつけちゃってんの? 柄にもないことしたせいで汗かいてきたよ。なれないことはするもんじゃないね、うん。
あれ? 俺がなれてることってなんだっけ?
「じゃあ行こ?」
「ちょっと待ってくれ」
「なに?」
慣れてること……そうそう、これだよ。
「もうちょっと休んでからにしないか?」
すまん、ここ最近で再度身についた引きこもり魂はそう簡単に外出を許さないんだ。
というわけで慣れてることとは引きこもることでしたー……
「はぁ……」
激しい自己嫌悪によって漏れるため息は、少し残念そうな目をしたサクナが生み出した沈黙によって部屋に響いた。
誤字脱字などがあれば教えてくださるとありがたいです。




