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キル?ダイ?パーティナイト!!

「Are you ready to die?」


おどけた口調でPKらしい文句を出す黄色い服の少年。そのカモ見っけって表情、舐めやがって……。リューの肉盾を易々と乗り越えられると思ったら大間違いだぞ!


「リュー任せた!」


「おうよ!坊ちゃん僕ちゃん俺と遊ぼうぜ!!」


「ヒューッ、カッコいいー(棒)、連射。」


棒読み口調で青年の方へ矢をつがえ、弦を引き絞る。


音声入力に登録したスキルLv1の連射を発動。1、2、3。ゲージの消費が少ないがショボイ。まあね、仕方ないね。避けた先に待ち構える音のない殺し屋が短剣を振りかぶる。青年が身のこなしよく体をひねり避ける。お返しにキィ君にサーベルを振った。


赤い閃光が走り、キィ君にダメージが通ったのが分かる。


連射で青年を牽制し、ちらりとリューの方を観察する。


「かった!?なにこの人硬い!!全然通らないんだけどダメージ!?反則だろーーー!」


反則だろーの大声と共に少年が宙を舞う。あっ、チャーンス。


「毒地獄にいらっしゃーい。速射。」


番えた矢は毒矢。十分な嫌がらせになるな。着地点に狙いを定め避ける暇を与えないために速射Lv1発動。


「ぎゃっ。」


いやー、いい仕事した。あとはリューと毒にじわじわ削られるだけだなあいつ。青年の方へ向き直る。


青年が少年に気を取られ、攻撃が疎かになっているが、どうもキィ君の旗色が悪い。


傷をキィ君が付けてもなにやら青い魔法が発動して回復しているみたいだ。こころなしキィ君の動きが鈍っている。もしやサーベルに麻痺か毒でも仕込んでるんじゃないか?


「おのれ、卑怯な。」


それでは遠慮なく毒矢を打ち込んでやろう。キィ君が俺の弓の攻撃に呼応し、青年を弓の正面の方へ誘導しようとしている。しかし、青年も足払いを掛けたりサーベルの動きを大振りにしてキィ君と激しく立ち位置を入れ替えている。狙いにくい。


しょうがないのでリューとにらめっこしている少年を射った。矢が刺さった少年が激怒した顔で俺を見る。どうやら矢がもの足りないようで。威力がないので毒以外で俺の攻撃はうざいだけだ。でもうざいだろうから俺は矢を射る。


「てめーーー!!!卑怯だぞこの臆病者。」


ビシッ!バシッ!と矢が当たる。いやー動かない的はいいものだ。


「余所見してていいのかな坊ちゃん?」


リューの溜め攻撃の範囲に少年はいた。これは俺のせいじゃない、頭に血が上った少年が悪い。


「ぎゃあーーー!!」


少年は今日二度目に空を舞った。


「えっ、えげつねぇ。」


青年がそう捨て台詞を吐いて逃走する。PKにいわれたくない。


「追いかけますか?」


「いや、いいだろ。一人は倒したし、まったりいこう。」


リューがフゥーと大剣を背にしまう。


「しっかし、人の顔ばかり狙うなんて中々ひどいことしますね?結構顔を狙われるの怖いんですよ?」


「あいつ俺のことカモォって目でみてたからな。報復だ報復。」


「後で、粘着されてもしりませんよぉー。」


「肉盾がいるから問題ない。」


「ひどっ。」


「頼ってくれていいんだぜ!スイ。」


「待って、今のなし。大丈夫イベントだから。後腐れなし。」


あの少年よりリューに借りを作るほうが面倒に決まっている。危ない所だった。



1時間もすれば最初の勢いはなくなり、プレイヤー達の行動が慎重になる。PKゲームマスターの言には罠もOKとあったので十分な時間が経った今、何が仕掛けられているのかも分かりやしない。


アサシンであるキィ君が暗殺スキルの気配を使用し周囲の人の有無を確認する。普通に歩いている者は目視すればいいが、隠密や姿隠しの魔法を使われたら急所を狙われて一殺されてしまう。


今更だが、結構このイベントはギャラリーが多い。戦闘が始まると何処からか人が湧き出て囃し立ててくる。野次馬か!暇なら参加してカモになれっての。


だから、俺達の周りに人だかりができて、仕掛けてくるPKを待ち受ける構図があっという間にできた。少年を二度打ち上げたのが効いたらしい。


何かテーブルとか出して本を読んだり道具を作りながら戦闘が始まるとこちらを見物してくる野次馬諸君。本来なら俺もそっちの立ち位置だったのに。和やかにどっちが勝つんだろうねーって話している。フィードルの妖精たちも出てきて目を丸くしてキルデスパーティーの参加者を見ていた。妖精は許そう。妖精はかわいい。プレイヤーみたいに汚れてない。


クッキーあげようクッキー。


「にいちゃんありがとー。」「わぁい。」


透き通る羽をつけた二人の妖精。


クッキーをあげると喜ぶ。後方で爆発音が響く。


「YES!!KILLING!!」


俺は毒矢を射る。


「ばいばーい。」


妖精とバイバイする。


「おまっやめろって。顔はマナー違反だぞ。」


魔術師が怒る。


「ごめーん。手が滑るわー、俺初心者だから手が滑るわー。」


ハイハイ連射、連射。


「ワンキル!!ワンキル!!」


キィ君の挙動が気持ち悪いほど素早くなる。


「ぐおう。」


魔術師の打つ火の玉にリューが突っ込み怯む。その影から飛び出したキィが一撃必殺の技を放つ。


魔術師の張ってたシールドが砕けた。矢を打ち込み動きを阻害する。リューが息をつく暇のない魔術師へ大剣を振り降ろした。


「三対一は無謀だろ。」


赤く大きな閃光が起きる。急所に当たったかな?


大方ワープでやばくなったら逃げようと思ったんだろうが、リューとキィ君相手じゃそんな余裕はできないだろう。魔術師がエフェクトと共に消えた。これで少年に続き2kill目。他の奴は大概二人組み三人組みでやばくなったら逃げていった。リューとキィ君がどうやら強いようです。初心者を狙うゲスイベテランといってもいっていいんじゃないかな。


辺りが一瞬で暗くなる。


「目眩ましの魔術だ!!」


キィ君が焦った声をだす。魔法を防げないのが痛い。状態異常を回復する薬も。毒系は用意したが、魔法による異常を解除するものは持っていない。


「お待ちかね。パーティナイト。」


聞き覚えのある声。リュー弟だ。


「俺の鎧を破れるもんならやってみろ。」


リューが威勢よく吠える。


「にいちゃんは最後。仲間がいなきゃただのノロマだもんね。」


スキルLv3、索敵を発動。続いて聞き耳Lv1発動。


視界の黒を赤が囲む。敵の中りつけはPKにも発動されるようだ。大体の距離と方向。こちらに近付いてきているのが分かる。リュー弟だな。視界が無いというのは中々怖いものだ。


敵から距離を取るため下がる。


「あっちは行き止まりだよ。」


聞き耳で喋るのは妖精か?石か?何かの声がざわざわと会話している。


「右の方であくびしてる。」


誰がだよ。


「左の方で魔術師が悪さしているね。」


「キィ君!!左のほうの奴を狙え!」


「へぇっ!?」


すぐ傍に忍び寄っていたコウが驚く。


「ていっ。」


キックしてみた。


「いたぁっ。」


あたった。まぬけか。


「左!?もうわかんないよ。誰に当たっても知らないからね。」


キィ君が叫ぶ。シュッと風を切る音。


「ギャーース!!」


俺のケツにナイフが刺さった。チームメンバーだからダメージはないが……。


「左っていったじゃん!!」


「当てずっぽうじゃ無理だよ!」


「よしっ!俺が行く!!」


「リューやめて!俺嫌な予感がする。お願いだか……。」


「うわあーーー。」


リュー弟が叫ぶ。


「なに!?リュー弟!?何が起きてんの?」


目の前の何かにしがみつく。多分リュー弟の体だろう。


「ちょっ、離してよスイにいちゃん。」


「コウ!早く離れろ!魔法が打てない。」


コウと組んでるPKの声だろうか?思ったより近くにいるようだ。


「無理だって!離してよ。」


「コウ、俺は逃げ……あっ。」


俺の視界が晴れた時、不思議な浮遊感が体を包んでいた。星がやけに近く、魔術師装束の男とリュー弟が俺のすぐ下に見えた。手がゆっくりと宙を掻いている。


落下するまでの一瞬に俺の体は重力から解き放たれ、やけにクリアに世界が見える。


こちらを見上げる見物客。何が起きたのか分からずキョロキョロしてるキィ君。

建物に突き刺さったリュー。


体を重力が引っ張る。地面が見る間に大きくなっていった。


リューの突進で吹っ飛ばされたんですね、本当にありがと……


グシャッ。


落下ダメージはチームメンバー関係なく食らうようです。リュー弟、魔術師、俺、三人仲良く死に戻りをして俺達のキルデスパーティーは終わりました。楽しかったけどPvPはもうやりたくないです。





終わり



※以下おまけ


ヘッドギアを外して息をついた。


「またやろうなー。」


「いやだ。」


「あっ、コウの奴からビデオ通話が着てる。」


プッ。


「にいちゃん。お母さんに迎えに来てもらえないか聞いてくれる?」


「えー、電車で帰ってこいよ。」


「もう帰る気力ないや。」


「わがままいうな。」


「だってさコウがんばれ!あっ、こっちでは初めましてですね、スイさん。」


「キィちゃん。うちの弟叩き出していいからなー。」


「はーい。」


「?どうしたスイ。さっきから固まって。」


「……キィ君がスカート穿いてる。」


「お前、本気でネカマだと思ってたのか?」


「男の娘?」


「頭沸いてんのかお前。」


「これはちょっと傷つきますね。」


「あははっ、スイにーちゃんの冗談面白いねー。」


「コウ、あの目は本気だと思うよ。」


「スイ、現実を受け止めろ。コウには女友達がいるが俺達にはいない!!なんだこれ、俺の心が抉れる。うわあああああ。」


「いやー、ちょっと面倒くさくなってきました。というか友達認定されてなくて更に傷つく。」


「気付いてないだけだと思うよ。」


「でしょうねー、それじゃあまた遊びましょう。バイバイ。」


ツー、ピン。


「ハァー。俺、妖精でいいや。」


「いや、それは駄目だろ。」


こうして俺達四人はカミールのPvPに嵌ったのでした(半強制)

妖精は癒しです。






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