パーティですか?
職人ギルドに行き、カブトムシ親父に工房へ案内される。魔法のドアがギルドの奥にあり、所属するプレイヤーが開くと個人用の工房部屋につながるそうな。居辛くなって何の説明も聞かずにリューたちと狩りに行ったのはあまりよい行為とはいえなかった。
カブトムシ親父が初期説明をしてくれている。外で合成すると失敗率が上昇すること、工房で合成すると+値や属性の強化があったりする利点、職人を手伝う妖精の示唆、お茶目にウィンクして妖精が手伝ってくれたらおいしいお菓子をあげると(手伝ってくれるのは半々らしい。)喜ぶとアドバイスしてくれた。妖精との関係がよければ作ってほしい調合のリストを夜工房に置いていくと、朝には完成品ができたりするらしい。
「だからうっかり工房の机の上にお菓子を忘れるんじゃないぜ。ねずみより食い意地の張った泥棒が出るからな。」
カブトムシ親父が朗らかに言う。置けっていうことですね?分かります。
他ギルドの人間は工房に入れないので、俺一人で後の装備を作る。妖精はもう出なかった。生臭いものを持たせたお詫びに街のお菓子屋さんのクッキー缶を置く。耳長妖精はちっちゃい子供の見た目だったのですごい罪悪感があった。お菓子だよっといって生肉を幼子に渡す新しい心境を味わわされた。
工房から出て、ギルドの外で待つリュー達に合流する。時間が回りゲーム内の日が暮れて、星が見え始めていた。街の上を妖精たちが飛ぶ。幻想的だなぁ、フィードルは。
「何か言いたげな目だな?スイ。」
「幻想なんて、心の汚れた人間には関係ないなってしみじみとしますね。」
「はあ!?俺が汚れてるなら、お前はカビ菌だし。」
「どういう悪口だそれ!?この石炭!!」
「石炭!はあッ?……、コウ。石炭にみえるか?」
リューが俺の言葉に不安を覚えたらしい。やーい。
「んー、そうだねぇ、見えないこともない。」
ナイス!リュー弟!
「……ちょっと俺、装備変えてくるわ。」
「リューさんもう始まりますよ!」
キィ君が空を指差す。
「ハローハロー!グッドナイト!みなさまみなみなさまこんにちは。PKゲームマスターよりパーティーのお誘いです!!」
白い魔方陣が四角に広がり中心から映像が横に広がった。長方形の窓の中で、白い馬のような頭骨を身に着けた紫の衣装の人物が呼びかける。
「今日この日、本日の夕方六時六分六秒に開催されるKILL DEATH PARTYを、をお知らせ致します。我がギルドのPK達はもちろん、皆様の参加歓迎いたします。PK一人につき1アイテム、張り付く殺意をお届けします。KILL NIGHT DEATH NIGHT、みなさまの悪意がアイテムに変わる死の循環の夜!チームで一人で、毒殺、罠、何でもありなPKの集い!皆様を招待致しますはこの悪魔の戯れ。是非是非ご参加のほどよろしくお願い致します。あっ、PKギルドの皆さん、登録外のプレイヤーを襲ったら罰金ですからね。暗殺ギルドに賞金掛けられても掛け合いませんから。」プッ。
PKGMはノリノリで演技していたが、最後だけ素だった。
「コウ!!いきなりは卑怯じゃないか?」
金属音と大剣を構えるリュー。音もなく離れるリュー弟。うわー、いきなりやろうとしたのか。流石PK。
「三対一って分が悪いよね?」
建物の濃い影にリュー弟が入り姿が消える。
「隠密スキルです。」
キィ君も短剣を構えて警戒していた。切り替えが早い。
「お楽しみはこれからだよ。また後でね。」
リュー弟の声が遠のく。ノッテルナーあいつ。
「なんか、これ参加者とか見分ける方法あるの?」
弓を取り出して単純な疑問を聞く。
「俺たちPK以外に参加を申請した奴は、自動的にネーム表示がONになって文字が黄色くなる。PKギルドの奴はコウみたいに赤表記だ。」
「おー、言われてみれば。って隠密とかされたら分からねーな。」
「そりゃ、もう警戒するしか対処できねえって。PKの奴らの方が俄然殺意高いし。」
「にしても、ここって初心者用の町だろ?PK多いの?」
「やですねースイさん。ネギしょった初心者カモが多いんですから、えげつないベテランも集まってくるんですよー?それに惰性で初期から拠点を移さず使っている人は意外に多いんです。」
見えるぞキィ君、君は今垂れ布の奥でゲスイ笑みを浮かべているな。
「散開!!」
リューが叫ぶ。バックステップで転びそうになりながらさがる。
サーベルが三本、俺たちがいた付近に刺さっていた。
「ヤー、みなさん。キルする?」
サーベルを構えた青い服の青年と、黄色い服の少年。多分兄弟だな。遺憾なことに赤表記だ。