作りませう!
敵モンスターを倒す事、10数体目だろうか。
「もうそろそろ何か作れるんじゃないか?」
リューが傭兵ギルドの固有スキルを使いテントを張る。テントには簡易なギルドの機能や自動回復がついている。更にスキル使用者のレベル以下のモンスターは寄せ付けない優れものだ。レベル以上のモンスターには襲われるのかよ!?という突っ込みは心の中にしまい獲得アイテムを並べる。
「鱗に脱け殻、猪の白皮、蒼蛇の毒。獣の鋭い骨に蛇の牙。うーん、何が作れるんだろう。」
システムウィンドウを開き、職人ギルドの機能を呼び出す。
作成リストが出てくるが、ほとんどが赤字表記で作成不可だ。白字の作れるものが分かりやすい。
「蒼蛇の弓に白猪の靴、白猪のベストって所か。獣骨のナイフ……、弱い……。」
「へー、どれどれ。んー、弱い!」
「まぁ、でも一撃で死ぬのはもうないんじゃないですか?」
「そうだよ。あとはもう根性で乗り切れば大丈夫だね。」
「一番役に立ちそうなの蛇の毒だな。」
毒を塗った矢が当たると、猪の動きが鈍り大分狩りやすくなった。人にも同じ効果が出るだろうからキルデスパーティーでも後方支援ができるだろう。
「攻撃するより毒が強いって。結構あるよね……。」
リュー弟だけでなくキィ君も肩を落とす。毒で何かあったのだろうか?どうせ藪蛇なので聞かない。
「まずは蒼蛇の弓を作成っと。」蒼蛇の鱗と弓、脱け殻を出しウィンドウの作成を選択する。
針やトンカチ、はさみが輪を描いて頭上に浮いた。
「ninininini!!」
その輪の中心に、ポーンと耳の長い妖精が現れる。ストンと胡坐をかく俺のひざの上に降りた。
「わっ、かわいいですねこれ。」
「おう!?何だこいつ。」
キィ君が喜び、リューが驚いた。その様子を見るに職人ギルド固有の機能っぽいな。
「ninininini!」
妖精が針を取り出して、俺の手に向けてちょいちょい振る。
「手が勝手に!?」手がきもい高速の動きで鱗や弓、抜け殻を加工していく。
「nini!!」
シャラーンと音がして、青い鱗で装飾された弓ができた。俺の手で、きもい動きで。
えっへんといった様子で妖精が胸を張る。そしてなにやらきらきらした目で俺を見つめてきた。
「えっ、どうすればいいの?これ?」
三人に助け舟を求めるもさっぱりお手上げと傍観してくる。何か案だせよ。
ごそごそとキィ君が懐を探る。
「君?いる?」
なにやら干したフルーツの欠片のようだ。じっと耳長妖精はそれを見たが、×印を胸の前に作りそっぽを向いた。そしてじーっと俺を見る。時折フルーツの欠片をみながら。
「これは……。」
苦い顔をして俺は道具袋を探る。パアっと妖精の顔が喜ぶ。罪悪感が半端ない。
俺はそれを差し出した。
「それはねーよスイ……。」
リューの不憫がる声。妖精がちょっと涙をこぼして俺からアイテムを受け取った。
蒼蛇の生肉……青臭い肉。焼けば食える。
「もってねーよ菓子類とか!!」
一旦妖精を返し、街へ帰ることになった。妖精へのお礼はフィードルでの一般的な慣習のようで、菓子類は普通欠かせないものらしい。三人はPvPにどっぷりつかり、妖精の国のいろいろから離れていたのでお礼をする発想に行き着かなかったらしい。なんかもう、申し訳ない気持ちになった。