蛇と猪
暗く湿った空気が体に張り付く。蒼い影の差す、草木が囲む地。
「よっしゃ。狩るぞー。」
リューの明るい声が森を渡る。
「猟師のスキルってどんなのあります?もう使えるのありますかね。」
キィ君が聞いてくる。
「えと、そうだな。聞き耳Lv1に、索敵Lv1があるけど……。」
「やってみてくださいよ。」
「じゃあ、索敵を。」
スキルポイントを消費して索敵を行いました。視界の端に表記が出て、ステータスのスキル欄のゲージが減る。
「ぬっ!?」
ゾワゾワと体に嫌な感覚が流れ、気配を感じる事ができた。近場に5、6体。視界を赤色が囲み危険を伝える。
「えー、近くに何かが居るのは分かった。」
「それじゃあモンスターの所へ案内してください。」
「にいちゃん、スイにいちゃんがモンスター見つけたってー。」
「よっしゃ、俺の大剣が唸るぜ!」
三人がせっつく。視界が相変わらず赤い。ゾワゾワする感覚は間断なく全身に発生している。これってやっぱり、俺のレベル足りてない感じ?
「あっちの方に多分2体居る。」
藪の奥を指し示すとリューが、ウオオオオオと突っ込んでいった。楽しそうだなー、こいつ。
アサシン二人組みも、今まで外していた顔の覆いを装着し直すと体を低くして音を出さずにリューの後を辿った。
「やべっ。」
離れると俺が危ない。死なないようにやり過ごして三人のお手並み拝見だ。
視界の赤が薄れていく。索敵効果が切れたのだろう。二、三十秒って所か。藪の奥で何かの悲鳴とだっらーと叫ぶリューの声が聞こえる。
藪の影から覗くと蒼い鱗の蛇が輪切りにされてエフェクトと共に消えていく所だった。
「ブォッブォッブォーー!」
アサシン二人は白い猪を相手にしていた。二人で前と後ろを抑え、猪の背ががら空きになれば攻撃するえげつない戦法だ。
「あっ!」
キィ君が叫ぶ。リュー弟が背を向けた猪に急接近し、その首にダガーを打ち込んだのだ。ビクリと白猪がするとエフェクトが発生してその体が消えた。鮮やかなお手並みだ。
「ちょっとコウ、あんたが倒したらスイさんに経験値入らないじゃない。」
キィ君がムキーっとなっている。
さっきからピローン、ピローン、ピローンっとレベルアップしてるので問題ないです。これ攻撃掠ったら一発退場するじゃん俺。いや、分かってたけど。
「手に入ったのは蒼い蛇鱗と猪肉か。」
リューが蒼い鱗を放り投げてくる。
「肉は装備に使えないねー。」
リュー弟はそういいながらもアイテム袋から肉の塊を取り出しこちらに投げようとしている。
「いらないからな!!投げんなよそれ!」
嫌がらせか!いや、これは素だな。リュー弟は考えなしに兄に倣うことがある。このように。
リュー弟は聞き入れアイテム袋に肉を直した。
「次いきましょう次!」
キィ君が弾んだ声でいう。血のエフェクトのついた短剣を両手に持ってサリサリすり合わせでいる。胸に悪い光景だ。
「はい、じゃあ索敵。」
スキルで消費したゲージが回復していた。しかも前は三分の一消費していたのに、今度は四分の一くらいしか減らない。サクサクですな、索敵しかしてないけど。
五体、六体と蛇と猪を狩っていく。試しに矢を射ってみたら猪に突進されてアクロバティックに横に跳んだりした。
「1ダメージー。」
三人が矢のショボい攻撃力を笑う。俺は迷い無くヴァイパーの落とした毒を矢に塗る。あわよくばあいつらに刺さんないかな~?
「うわっ、スイさんが悪どい顔してる。」
「あれは流れ矢を射る目だ。」
「当たんなければ易いもんねー。」
モロバレだった。