カミールの再来
VRMMO[Camille]
カミールの再来というゲームが流行っているらしい。ヘッドギアを被って遊ぶ、今時の子供の受けを狙ったゲームだ。
家に帰ってヘッドギアをセット、電子の世界にダイブ!というわけで、親御さん達の反応は芳しくない。何しろ家族の団欒そっちのけでゲームにうつつを抜かすわけで、12才以下の子供は親の同伴なしにアクセスが禁止されてしまった。
まぁ、不健康ではあるだろう。体を動かさず、登録した生体電流を読み取って電子データを動かすわけだから。
現実世界でもゲーム内の感覚で体を動かし、つんのめったり転げて骨折なんてこともあってニュースで問題にされていた。
「ははは、んでさ。俺の弟がゲーム禁止になったんだ。」
「知ってる。学生の間ゲーム禁止と言われて魂抜けてるの見てたし。」
「うんうん、で、俺の家にヘッドギアが一つあまるわけだ。」
「そうだね。」
「カミールやろうぜ?」
「お断り。」
「なんでだよ。」
「リューの弟が骨折してるのに、できるかって。」
「寝ぼけて二階から飛び降りるのが悪い。」
「……いや、まぁ。うん。」
普段のプレイングの姿が透けて見える行為だ。というか、はっちゃけすぎだ。
「カミールのイベントで面白いのがあるんだよ。で、限定アイテム出るから回収協力してくれ。絶対面白いから、な?」
リューは度々遊びに誘ってくる。自分が面白いと思ったなら何でも誘ってくる。ヨーヨー、ベーゴマ、野球に草刈りゲーム。草刈りなどゲームでも何でもない。近所のよく草刈りしているおいちゃんが草刈りゲームなぞほざいてリューをだまし、何が楽しかったのか誘いに来て、断ったのになぜか親に草刈りボランティアの連絡が行き、近所の爺さん婆さんに感謝されるというわけの分からない体験をしてきた。
リューと遊ぶ時は慎重に吟味しなければならないのだ。何をやらされるか分からないからな。よく迎合してくるリュー弟は兄と一緒になると奇天烈さが倍プッシュされる。この兄弟が何か企んでる時は近付きたくない。
「ところで、残念な弟さんはどうやってゲームに参加するんだ?」
「友達の家で古いの貸して貰うから問題ない。みんなで協力プレイだ!」
「やるか馬鹿!」
これですよ。親にチクったりはしないが反省という二文字が頭にない。まぁ親の方もいい加減拳骨やお預け以外の罰の付け方を考えた方がいいと思う。俺のために。
「じゃあそういう事で、土日空けとけよ!俺の家10時集合。」
「いやー、残念だなぁ。その日は予定があるんだ。」
「はぁ?聞いてないぞ。」
たった今できた用事だ。そうだ、水族館にでも行こう。優雅な海の遊泳者達が俺を待っている。
「水族館に……。」
「キャンセルだ。」
「イルカ……。」
「キャンセルだ。」
「土日と書いて休日と読む。俺のオアシスはお前の家にはない。」
ドンッと机に拳を叩きつける。海洋生物万歳だ。
「オーケー、ちょっと落ち着こうか。何が嫌なんだ?そんなに一緒に遊びたくないのか?」
「ああ、特にお前らとはな。」
「ひっでぇ。だがお前に拒否権はない。」
「……何を企んでやがる。」
「既にお前のおばさんから、宿泊許可を頂いている。」
「なんでだよ!」
「いいじゃないか!ただでお前の家庭教師やってやるんだぜ。むしろ感謝しろ。」
こいつ妙にうちの親に受けがいい。どういうことなんだ。
「するわけないだろ!俺の親をどう言いくるめてやがるんだ。」
「逃げたら自動的にお小遣いが下がる仕組みになっています。お前もうちょっと真面目に勉強しろよ……。」
「踏んだり蹴ったりすぎる……。」
くそがぁっ、俺の個人情報が親と友人に行き渡ってやがる。
「なので10時から3時まで勉強、後はゲームでスカッとしようぜ。」
リューの野郎……、やること成すこと馬鹿の極みを行く癖に成績いいのは詐欺だろう……。