異世界入り
「ここ・・・どこぉ?」
自分で言うのも何だが拍子抜けするような声を出してしまったと反省、だけどしょうがないと思う
だって目の前に有るはずのない大きな湖が広がっていたのだから
「俺、谷に落ちたんだよな?・・・あの近くに湖なんてないし・・・」
実際、富士演習場で湖が見える場所は有るのだがそこからだいぶ離れているし、それ以前に落ちてきた斜面が無くなっている
「ま、まさかな・・・」
嫌な汗が垂れる、と言うのもこの状況が全く理解出来てないとういわけではなく逆に理解してしまったからと言うのが近いかもしれない
「そっそうだ携帯!」
今回のような大規模演習中に携帯を持つのは御法度だが伊織はこっそりリュックの中に忍ばせていたのだ
「誰でも良いから電話しt・・・マジかぁ」
自分の非常事態を伝えようとして取り出した携帯をみて唖然とする
「圏外って・・・嘘だろ?」
圏外、携帯の電波範囲外
「じ、GPSは!?」
スマホ「衛星を受信できません。ヒャッハー」
圏外だけならわかる、GPSが使えないってのは明らかに異常だ
携帯が壊れた?最近変えたばかりだぞ?
「やっぱり・・・あれか?」
伊織は薄々感じていたが有り得ない事だと思って心の中で否定していた
あんなの小説とか漫画でしかよんでないし!それに一人だけって!?ほかの小説だったら中隊規模だろ!?武器もないし!
だけどここまで来ると・・・
「俺、異世界にとばされた?」
「銃、銃剣、弾倉・・・異常なしっと」
最初は混乱していた頭だったが冷静になってくるとまず装備の確認を始めた
転がった衝撃で小銃のパーツや破損がないか不安だったが大丈夫なようだ
89小銃は軽く丈夫だが一つ一つの小さなパーツが落ちてしまう時がある
そんな小さなパーツでも無くしてしまったら一大事である
銃のパーツを無くした部隊は見つかるまで地面とにらめっこ
昼夜問わず捜索するはめになるのだ
異世界に来た俺にはどうでもいいことだけどいざというときに銃が使えないのは困る
念の為の点検だ
「だけどなぁ・・・」
弾嚢に入っている弾倉を取り出す
弾倉には金色に光る小さな筒のようなものが入っていた
「空砲が100発、預かってたMGリンクが200発か・・・」
大規模演習とは言っても使うのは実弾ではなく空砲
もし本当に異世界入りしたのであれば空砲だけと言うのは余りにも頼りなかった
「小説みたいに化け物とか出てきたらアウトだな・・・」
実際使える武器というのが小さな銃剣くらいしかない
もし小説とかのように化け物や敵対する人間が出てきたとき太刀打ちが出来るのだろうか?
(グギュルル・・・)
「腹減ったな‥‥」
とりあえず腹ごしらえだ!一緒にとばされてきたリュックの中から自衛隊演習のお供「ホ○ソーセージ」を取り出した
「ガッガッ・・・モグモグ・・・うめー!」
演習中には手軽に食べられて空腹が満たされる食料が求められるのだがその中でもカロリー○イトなどのブロック状のお菓子や魚肉ソーセージは大人気だった
俺は元々魚肉ソーセージは嫌いだったのだが演習中空腹で倒れそうになっていたとき上官から貰ったソーセージを食べて好きになったのだ
「マヨネーズあったらもっとよかったのになぁ」
俺はこの時空腹を満たすことに夢中で気づかなかった
異世界は小説のようにはいかない
ガザッ
?「あれは?」