街にむけて その2
「その服もう一着ない!?」
やばいリエルがおかしいことを言い出した
「いや、車両に私物のバックがあったからもしかしたら制服もあるかも知れないけど・・・・着たいの?」
「うん!!」
いや、そんなとびきりの笑顔でうなずかれても・・・・
「だって、街に行って伊織君だけが貴族みたいな姿だったら隣にいる私が一般人の服じゃ怪しまれるよ?だったら同じ服装でいたほうがいいと思うし」
「そんなもんなのか?」
まあ、確かにさっきのリエルの貴族に対しての反応を見る限り俺の横でリエルが今の服装だとこの世界では怪しまれるかもしれない。
下手をするとほかの貴族に目をつけられる可能性もあるとリエルは言う
「んじゃ、ちょっと探して見るからちょっと待ってて」
「うん!!」
リエルは欲しかったゲームを買ってもらったときの子供みたいに目をキラキラさせていた
うわーこれで制服なかったら気まずくなるだろうな~なんて事を考えながら伊織は高機動車に積んであった私物のバックを漁るのだった
「~♪♪」
リエルと伊織はククル村を出発しここから車両で1日ほどかかる街に向け前進していた
隣に乗っているリエルは伊織が見つけた自衛隊の冬制服(階級 陸士長)を着て上機嫌のようだ。
伊織はリエルに頼まれた制服を探すべく高機動車に積んであった私物のバックを漁っていたのだが、ほんとに出てくるとは思わなかった
それも男性用の制服ではなく女性用の制服で、サイズもぴったりだったのが驚きだ。
だが入っていたものが女性用の制服だったので伊織の罪悪感は限界まできていた。その理由がはいっていた物が制服だけではなかったからである
ご丁寧にきれいに畳まれ、ジップロックで防水処置された”カラフルな布”を見てしまった伊織はものすごい罪悪感に押しつぶされそうになっていた
「ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・」
伊織のこの欝状態は運転中に鹿のような動物を跳ねそうになってリエルに怒られるまで続いた。
リエルの服装
頭 制帽
体 冬制服 (スカートではなくズボンタイプ)
足 戦闘靴
車両を走らせて半日過ぎたあたりで伊織はあるものに気がついた。リエルも同じくそれに気がついたようだ
「なぁ、アレって・・・・・・」
「うん、何かの残骸・・・・馬車か何かだと思う」
車両から約100m先の道に何かの残骸らしきものが散乱していた。車輪のようなものが確認できるので馬車か荷車だとリエルは言う
近くまで車両を寄せるとやはり馬車だったようで近くには馬の死体が転がっていた。車両の中から確認できる限りだと馬は死んでから
日数が経っているようで、一部腐敗していたが良く見ると矢が多数刺さっており、切り傷も確認できた。
「多分山賊に襲われたんだとおもう。街に行くにはこの経路しかないから山賊は近くを通る商人の馬車を狙って襲ってるのかも」
リエルの言うとおり道端をよく見ると馬車の残骸がいたるところに放置されていた
最近のものではなく朽ち果てているものも多く確認できる
そんな光景をみて伊織は気になることがあった
「なぁ、こんなに襲われてるのにこの国は対策とかしないのか?商人が狙われたら街とか決行打撃うけそうなもんだけど?」
これだけ商人が襲われているのにもかかわらず、山賊の被害が続いている。自警団や軍が動いてもいいくらいだと思うのだが
ここまでくる途中に屯所や、自警団の巡回も無く対策がされているともおもえなかった
「結構な数の村が山賊に襲われてるんだよね。私たちの村もそのひとつ。だから大国は村や街は各自で山賊から身を守りなさいって事になったの。
もし本当にだめな時は軍や自警団が動きますよって形になってるんだよね。私たちの村が襲われたときも本当だったら自分たちで山賊を倒さなきゃいけなかった
んだけどもともと戦える人が少なかったから倒せなかった。そして近くの自警団や常駐している軍があるのが今から行く街だけだから・・・・」
もし俺が武器をもっていなかったらリエルの村は全滅していた
「それに軍のトップは貴族で構成されてるからあまり動きたがらないってのもあるかな。大きな街が襲われれば軍は動くけど小さな村が襲われてもあまり
気にしないみたいなんだよね。商人もそう。大商人クラスの商人は山賊に襲われるのを考慮して護衛を雇ったり、大口の物流ラインだから軍からも警護されるときも
ある。だけど、経済力の無い小さな商人は護衛を雇うことができないから山賊に襲われやすいんだよね。」
つまりこの大国はなくなっても自分に被害が少ないものは見てみぬふりをする。だがなくなると困るライフラインは守りますよという考えらしい
確かに通信手段もないこの世界では大国をすべてカバーするのは不可能だとおもうがやり方によっては今よりもカバーできると思うのだけど・・・・
現状だと国のトップにあたる貴族が献身的に動かなければ変わることはなく、その貴族が一般人を見下している+無関心の時点でこの情勢が良くなることは
望めないだろう
「この国終わってるな・・・・」
「伊織くん、間違っても貴族の前でそれ言っちゃだめだよ。」
そんな会話をしながら車両を進めていると前方でなにやら黒い煙が上がっているのに気がついた
伊織は双眼鏡を手に取り確認する
「んー・・・・・ってやべぇ!馬車が襲われてる!」
「え!?」
伊織が見たのは走る馬車の周りを馬に乗った山賊らしき集団が追走しているところだった
馬車には火矢が刺さり一部燃えていた
「リエル馬車を助けるぞ、戦闘用意だ!」
伊織はそういってアクセルをめいいっぱい踏み込んだ




