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溺死
それはあたしがこの街に引っ越してきて二ヶ月が経った、梅雨の時期の出来事だった。
「うわー、雨ひっどいねー」
窓を打ち付ける大粒の雨水を見ながら、隣を歩いていたマキが眉間を寄せる。
「夕方から雷も鳴るってお天気お姉さんが言ってただけのことはあるわー。メイ、ちゃんと傘持ってきた?」
「うん、もちろん。ほら」
肩にさげていたバッグの中から赤い折り畳み傘を出すと、マキは
「あっれえ、意外にしっかりしてた」
とけらけら笑った。
たしかにあたしは抜けている方だと思うが、これだけの大雨が降っていれば(通学手段が地下鉄とは言え)傘ぐらい持ってくるに決まっている。
「ひどいなあ。あたしのことバカだとでも思ってるの?」
「うん、思ってた」
「うわあ、さいてーい」
なんて、未だに女子高生気分が抜けきらないような会話を繰り広げつつ、あたしとマキは次の講義がある教室に向かって歩いて行った。