憂い日に
無性に、あっ思いついた!となったやつでございます。
「はぁ…憂鬱だなぁ。」
小さい溜息を吐いて、新しい教室へ入る。
新しい学校、義務教育も終わり、楽しい筈なのに…親友の照ちゃんがいないこの学校で、どうやっていけばいいんだろう。
いや、そりゃあ私が悪いんだけどさ…。私が、珀桃高校と白桜高校を聞き間違えたから、照ちゃんが行く、珀桃高校じゃなくて、白桜高校に入学しちゃったんだけど…元々、知らない人とあんまり話せない性格だから…うっう…照るちゃぁぁぁぁん。しかも、この学校ってスポーツ校だし…もうスポーツはしないようにしてたのになぁ。
珀桃高校に通っている照ちゃんのセーラー服とは違いブレザーの服を着ている人達が沢山いる教室。
それに、なんだか男の子の人口が多い気がする。
自分の名前が書かれた席を探していると、上から私を呼ぶ声が聞こえた。
「あれ?なるじゃん。同クラだったんだな。」
短髪と言っては長いような明るい茶髪の私から見ると巨人。
柳瀬颯太が真後ろにいた。
「そーた…良かったぁぁぁぁ!」
私は1人きりだと思っていたこの教室に知り合いがいることが発覚し、感極まって抱きついた。
機から見ると恋人同士みたいに見えるかも知れないが、颯太は私が何も考えずに抱きついてしまうことを知っている。
しかし、それとこれとは話が別だ。
ここは新しい教室。知らない人ばかり。故に、私達の関係(知り合い)ってことも知らない人から見て、この状況を把握すると、大変…颯太には迷惑極まりないことになってしまっただろう…。
颯太の胸の中で、このダメな状況に嫌な汗が止まらない。
ごめん!颯太!変な誤解を招くようなことをしちゃって!
「…あーーーー、知り合いがいて嬉しいことは分かったが、いい加減…抱きつく癖はヤメロって」
脳内で土下座の域で謝っていると、颯太がナイスな誤解を解く台詞を言ってくれた。
私はそれに便乗して、自然に離れる。
「す、すみまセン…」
「分かれば宜しい。」
上から先生の様な口調をした颯太が顔を逸らしているのを見たと同時に、一気に教室がざわついた。
やっぱり抱きつくことは異常の様で大変な辱めに遭っている。
ごめんなサイ。颯太サマ。気を付けてはいるのですが、どうしても体が勝手に…。
「ったく、なるの所為だぞ」
「も、申し訳ありません…」
上から見下ろして私の額を小突いてくる颯太に返す言葉も無いです。
「あははっ!なるちゃん相変わらずだよねぇ」
「うそっ!啓ちゃんもいるんだぁぁ!」
「待った。」
顔面鷲掴みきましたーーー。
いや、確かに第二の知り合いがいて、またも感極まり抱きつこうとしてしまいましたが、鷲掴みは酷くないっすか。
「なんだよー、そーちゃん。ヤキモチか?」
啓ちゃんは腕を広げていてくれたのに。
啓ちゃんは背が私よりもちょっと高くて、ふわふわのロン毛男子。
いつもパーカーを着ていて、私の抱きつきにも応えてくれる面白くて優しい男の子です。本名は森野啓
「だぁれがヤキモチだ。公衆の恥を食い止めてやったんだろ」
「ハッ、それは有難う」
確かに公衆の恥だった。
ついつい啓ちゃんを見ると抱きつきたくなってしまう…。私は言われて気付き、軽く颯太にお礼を言った。
ありがとう颯太!あのまま止めてくれなかったら同じことを繰り返していたね!本当、ありがとう!
「2人と一緒のクラスは嬉しいけど、女子の知り合いがいないってことが…」
「まーまー、なるちゃん。1年よろしくねっ!あ、2年生になっても同じだから2年間か…楽しもうねっ」
啓ちゃんは私の手をとってぶんぶんと振り回し、ニッコリと笑った。
そっか、2年間同じなのか…。
「あのー…」
「はっ、はい!」
「柳瀬君たちと知り合いなんですか?」
おおぉっと!小さい手を口元に当てながら、なんだか可愛いボブの女の子が声をかけて来たーー。
「知り合いですよ」
はいっ。すみません、初対面の人と話す時どうしてなのか敬語になっちゃうんです。
「友達…とか?まさか、恋人…?」
「っえ?…アハハッ無いですよ。ハッ!知り合いじゃなくて、友達でいんだよね!?」
顔をぐりんと後ろに回し、颯太と啓ちゃんの方を向き確認する。
私の顔が友達になっているのか心配で真っ青だったのか、2人に軽く叩かれた。
「自信持って言え(言いなよ)」
同時に言われると、ちょっと自信が持てたので、へらっと笑って、「はいっ」っと敬礼のポーズをした。
「ってことで、友達です」
「そっかぁ…名前で呼び合うなんて仲良いから勘違いしちゃった。」
ボブの女の子は笑い続けたまま、私を見つめている。
って名前で呼び合う?名前って言ったら、苗字の下の『名前』だよね。
えぇ!そんな風に見られていたのか!
なる…って、そっかぁ。名前に見えるもんね。
「私が名前で呼んでるだけで、2人からは苗字で呼ばれてるだけです。」
「えっ、苗字…?」
「はい。成瀬美久って本名なんです。」
あ、あれ?急になんだか静まっちゃった。
え、私の所為!?
私がこの空気の変わり様に戸惑っていると、教室の7割ぐらいが男の子と化していた。
「じゃー、俺も『なる』って呼んでいーの?」
1人の男の子の掛け声で次々と、俺も私もという言葉が降って来る。
空気を変えてくれた男の子はダークブラウンの髪にメガネで以下にも真面目そうな男の子なんだけど、周りに全然気後れしていない感じで、寧ろ、大人っぽいオーラのある人だった。
「隼人じゃねーか、なんで此処にいんの?」
颯太の知り合いなのか、メガネを掛けている男の子の肩に颯太は腕を乗っけて、楽しそうに笑っている。
「ダァホ、俺はサッカー部だ。呼ばれて『いる』に決まってるだろ」
「そーいや、何回か見に行ったなー」
「2人は友達なの?」
メガネを掛けている男の子と颯太の仲の良さにちょっと聞いて見た。
あっ、迷惑かな!?えっ、どうしよう!
やっぱりいいっと言おうとした時、メガネを掛けている男の子が颯太の腕を払った。
「家が隣の幼馴染みみたいなもんだよ。美久ちゃん?」
「へっ…」
あ、の…どちら様でしょうか。このメガネを外したダークブラウンの髪の貴方。
えっ?んっ?ほっ?
てか、あの、な、何故、私の顎を持ってらっしゃるのでしょうか…。
貴方の背が高い所為で私の首がキツくなってきたのですが…。
それに、なんだかバックに黒の羽根が舞い散って見えますよ。
少し経って顎に添えられた手は外してくれたものの、そのまま私に見向きしないで颯太の所に行ってしまった。
な、なんだったんだろう…。
私は先程のことで凝ったであろう、首をボキッゴキッと鳴らして、自分の机に全体重をかけた。
私の席は窓側とは少し離れていて、どちらかというと廊下側の席だ。
大体、真ん中よりも少し後ろで、これからの高校生活なんちゃらかんちゃらと担任が話しているのを右から左に流し、私はふわりとした風が頬を撫で、なんの引力か窓側に目を向けた。
ザッと風を切るような風が途端に宙を舞って、白のカーテンが教室へ豪快に入ってくる。
そのカーテンの影に人影が見えて、なんて言うんだっけこう言うの…。
カーテンの中から姿を現した、黒髪の男の子に目を奪われました。
人物紹介っです。
★成瀬美久
○髪はミディアム(目も薄い茶色)
○背は156cmと普通
○恋はしたいと思ってるがしたことが無い。
○知らない人とは結構話してからでないと親しくなれない。
○抱き付く癖がある
○隠された才能が…?