第三話
この章は多少性的描写が描かれています。気分を害されたら申し訳ございません。
「こんばんわ。」
雪のような白い肌。肩につくくらいのストレートの黒髪。少しはにかんだ笑顔。やんわりとしたこそばゆい声色。
…彼女の外見を俺の頭が認識する前になぜかある単語が浮かびあがった。
…『黒い天使』…。
……
「大丈夫、ですか?」
「え?、ああ、もちろん。」
「よかった。失礼します。」そういってドアを閉めた彼女は靴を脱ぎ部屋の隅にあった椅子に、俺はベットに腰かけた。
なんとなく頭がうまく働かない。なぜだろう?外見は確かにかなりのものだがそれでもまわりとそんなに飛び抜けているわけじゃない。なのに…なぜだろう?
「スーツって事は今日は仕事帰りですか?」
「え?ああ…いや、実は今日面接で。普段はスーツなんて着ないんで。」
「あ、そうなんですか!?どうだったんですか?うまくいきました?」
「どうだろう?感じは悪くなかったと思うけど。」
「そっか、じゃあ受かるといいですね!」
そんなお互いをさぐるような話を少しの間繰り返す。俺は彼女をうまく直視できなかった。もともと女性とはなすのは苦手なほうだがこれは異常だ。そんな事を考えて意識が話にそっちのけになっていた俺は一気に心臓の鼓動を速めた。
彼女がベットにゆっくり近寄り俺の横に腰をおろした…そして…ゆっくりと俺の胸に顔を埋めた。
「ドキドキ…してるね?」その言葉に俺の心臓はさらに鼓動を速める。
「緊張してるの?」
「少し…。」
これは風俗特有の期待に胸を膨らませる緊張とはあきらかに違う。無性に彼女を抱き締めたくなる。性欲とは別の違う気持ち。純粋に…純粋に彼女の体温を肌で感じたく思った。
時間だけがすぎる。どのくらいこの状態でいたのだろう?痺れをきらしたのか、彼女は俺の顔を見上げにっこりとほほ笑み…そして唇を重ねてきた。
官能的すぎる口づけ。さっきまでまったくといって感じなかった性欲が嘘のようにまるで全身をつつみこむように動きだす。彼女は僕の服を脱がし俺は彼女の服を脱がす。(なんて…綺麗…。)シミひとつない透き通るような肌。まるで…本当に人間なのかと思うほどに…。彼女は俺に体重をあずけ俺はそれに従った。
俺は彼女見続けた。見ていたかった。それくらい俺の上で動く彼女を美しく思えた。いやらしい気持ちではなくなにか…幸せな気分だった。
感じてしまったんだその刻に。俺は…この人となら…
堕ちていってもいいと…。