第二話
目の前に広がる赤や紫の光を放つ建物。人間の欲望やストレス、現代社会で生きる壮絶さ。そんなものを代弁しているかのように見えた。
若く挑発的で美しく着飾った女性。
その横を歩くハゲあがり腹の出た中年オヤジ。
この中にいくつ本物の恋人達が存在しているのだろう?おそらく大半は、かりそめの恋人を演じているのだろう。
そんな光景を横目に見ながら俺は以前見つけた携帯の風俗情報サイトを開く。(どこも似たり寄ったりだな。別にどこでもいいか。おっ、ここにするか。) 『初回のお客さま5000円割引!』その言葉に目を惹かれた俺は店の電話番号をクリックし店に電話をした。
「もしもし?」
想像より若く物腰の良さそうで感じのいい男の声。
「あ、えーと…利用したいんですが女の子を一人お願いしたいんですが。」 (おいおい、一人って…二人も三人も呼ぶ気かよ…。)あまりこういう受け答えに慣れていなかった俺は自分の口から出た言葉にアホらしさを感じすこし恥ずかしく思えた。
「はい、ありがとうございます。
当店のご利用は初めてですか?」 「はい、初めてですけど?」 「それでは5000円の割引になります。
どういった女性がよろしいでしょう?」 「うーん…。とりあえずかわいい感じの人を。」 そういえば何も決めてなかった事に気付いた俺は受け答えに困った。(あ!こんなんじゃあ余ってるすんげぇ女が来たりするんじゃあ!?) 「あ、あの、お薦めの子でお願いします!少しくらい待ってもいいんで!」
「大丈夫ですよ。すごいいい子がいるんですけど、今ちょうど帰ってきたところなんです。この子なら間違いないですよ。」
「あ、じゃあその子でお願いします。」
「ありがとうございます。それではホテルに入られましたらお部屋からお電話ください。」
話がついたところで電話を切った俺は手ごろな値段のホテルを探し路地に入りこんだ。(おもえば一人でラブホに入るのなんて初めてだな。)少し躊躇しながら決めたホテルに足を踏みいれた。パネルの光っている部屋番号のボタン押し、受け付けでキーをもらいエレベーターに乗り込んだ。 部屋番号を確認し鍵を開け中に入る。わりと普通の内装にちょっと肩透かしをくらいながらソファに腰を落とす。(あ、そういえば電話するんだったな。) 「もしもし。」
「あ、さっき電話した岐口ですけど。〇〇ホテルの〇〇〇号室に入りました。」
「わかりました。
それでは15分程で女の子が到着すると思いますので。
ありがとうごさいました。」 電話を切った俺はベットに寝転んだ。ふと、美香の顔が頭によぎる。(風俗とはいえやっぱりやっちゃいけない事だよな。まあ浮気するよりはずっといいか。)男の純粋な欲望を自分の意志弱さに肯定化し納得した俺は慣れない事をした緊張の疲れも手伝い少しうとうとし始めていた…。
…コンコン…
きたっ!
ちょうど気持ち良くなってきたところで起こされた無性な苛立ちを感じながらドアの前にたちノブに手をかける…。期待と不安を感じながら唾をのみ込みゆっくりとドアを開けた。
天使か…
悪魔か…。