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第一話

「えーと、『岐口 樹』さんでしたね。それでは後日追って連絡しますので。」白髪頭のスーツを着た男がいう。

「はい。よろしくお願いします。」俺はそう言って軽く一礼すると部屋を出た。ビルを出て駅で切符を買いホームの端まで歩き喫煙所がないことに気付きながら当然のように煙草に火をつける。(とりあえず一段落か。)フゥーっと息と煙を吐き体の力を抜きゆっくり空を見上げる。

俺の名前は『岐口 樹』。

25才フリーター。

フリーターって言ってもいまどきの奴らみたいに就職するのがいやでチャラチャラ遊んでるようなのとは違う。

これでも一応魚屋の職人だ。

ただ今勤めているところが正社員を募集していなかっただけ。

正社員じゃなくても技術は学べる。

そう思いいい条件の会社が見つかるまでそこで厄介になっていたわけだ。

技術も一通り覚え歳もそれなりに食っちまった。

そろそろ本腰いれなきゃな。

そう思いはじめたんだ。

そう、今ちょうどとある会社の面接を受けてきたとこだ。

慣れないスーツにネクタイに革靴。

緊張も手伝ってさすがに疲れた。

(そうだ、一応メールしとくか。

)俺は携帯電話をとりだし呼び慣れた名前の女性にメールを送る。

『今面接終わった。結構いい感じだったよ。』メールを送った女性の名は『藤崎 美香』付き合って四年くらいになる彼女だ。歳は26才。幼さの中にどこか大人っぽさを感じさせる一般的には綺麗で真面目で融通の利かない女性だ。ほどなくしてメールが返ってくる。『お疲れさま。でもあんまり安心しちゃだめだよ?手応えよくても受かるとはかぎんないからね?結果でるまでわかんないよ?』

「チッ」俺は軽く舌打ちをする。

そんな事はわかってる。

でもこんな時くらい素直に喜んでくれてもいいのに…。

美香はいつもそうだ。

絶対に俺を認めてはくれない。

俺をまわりと比較し批判する。

そんな彼女に俺は時折苛立ちを感じていた。

(あいつのために就職しようって思ったのもあったのに…なんだかなぁ。

) 帰りの電車の中、俺はボーッと外を眺めていた。

(こうしている間にもみんな一生懸命働いてるんだよな。

世の中には色んな仕事がある。

その中でなんで職人を選んだんだろうな。

) 意味のないことを考えていた。

そんな時俺の目にあるものが飛び込んできた。

まばゆいばかりのネオン。

中世の城を思わせるような外装のラブホテル。鶯谷だ。世界に光と影があるように人間社会にも表と裏がある。(社会の裏の仕事…。そういえばこんな仕事もあったな。)過去風俗に行ったのは一二度程度。そんなにはまりはしなかった。(たまには行ってみるか。)なんとなくそんな気持ちになった俺はおもむろに立ち上がり電車を降りた。

その開いた扉が…こんなに大きなものだったなんて…俺は知らなかったんだ…。

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