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LUCK -9999  作者: シェイフォン
3章 決戦に向けて
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11話 挙動不審

2日以上空けるのは避けたいので、

とりあえず昨日から書いてあった原稿を手直しして投下します。

「何というか……作為を感じるな」


 ベッドから起き上がった俺はそんなことを呟く。


 本来のリズムなら俺はすでに起きており、朝食を食べているはずの時間なのだが俺はまだベッドにいた。


 実は昨日の夕食時、ほぼ全員が所用によっていなくなるのでいっそのこと休みにしようという採決が決まってしまい、ベルフェゴールがついでということでこの屋敷を今日一日は立ち入り禁止としてしまった。


「困ったな、やることがない」


 振り返れば俺はこの大陸に飛ばされてから今まで休んだ記憶が無いことに気付く。


 ふと気になってLUCKを確認してみると。


 現在LUCK -349800


「……何時見ても思うが、なんだよこの数字は」


 ため息を吐きながら額を抑えるがその原因は分かっている。


 現在このイースペリア大陸では抑圧されてきた亜人達が反乱を起こしている最中であり、その仕掛け人がこのエクアリオン共和国であるためそのしわ寄せが俺の所に来ている。


 何せ人が1人死ぬたびにLUCKが-10である。


 まあ、下手すれば数千万人に届くかという数の者を巻き込んでいるのだからそれぐらいの死人は出よう。


「唯一の救いは民間人を巻き込んでいないことか」


 実行部隊の隊長であるソルトは民間を敵に回すと後の統治が面倒だということに知っているので、彼が動くときは一瞬であり、あっという間に軍政の中枢を掌握していた。


 まさしく電光石火。


 ベルフェゴール直属の部隊による手引きがあるものの、その行動力は味方でいて良かったと痛感する。


 そして、現在のイースペリア大陸にある国の総数は50いくつ。


 革命が成功してエクアリオン共和国の傘下、もしくは同盟国となった国は10。


 まだ革命が成功していないにしろ政情が不安定な国は20。


 完全に人間の支配下に置かれている国は10。


 そして、マルスのクオーター宣言によっても静観を決め込んだ国が残る10国だった。


「はてさて……これからどう動くか」


 情報によると向こうの陣営は各国の思惑と利権争いが絡んで団結することが出来ず、後手後手に回っているのに対してこちらの陣営は統一された生き物の如く動いているので全ての局面において優勢を保っている。


「ベルフェゴールの手腕には舌を巻くよ」


 ベルフェゴールの組織した諜報部隊によって内部分裂を起こさせ、または団結しようと橋渡しを試みる者を暗殺するという数々の謀略に人間の陣営は見事に嵌められた。


 この一連の徹底した動きからベルフェゴールが時々恐ろしく映ることが多々ある。


「……絶対に敵に回したくないな」


 俺は神人に名を連ねている魔族という種族の凄まじさを改めて認識した。




「お、おはようコウイチ」


 少し物思いにふけっていたようだ。


「ああ、ショコラか。おはよう」


 俺はショコラの遠慮しがちな声で我に返る。


「い、良い天気ね」


「まあ、そうだな」


 何というかショコラは最近様子がおかしい。


 いつもは気兼ねなく接していたのに、何かあったのかおどおどして俺との距離感を掴めていないように見える。


 尻尾もせわしなくあちこちに動いているし。


「朝ご飯が用意出来たわよ」


「……何の冗談だ?」


 普段のショコラなら自分が作ることはしない。


 俺を叩き起こして作らせるはずだ。


「い、いいじゃない別に」


 しかも大変失礼なことを言ったのに怒りもせずそう返してくる。


 なので俺も調子が出ず、俺の中の何かが空回っているような違和感に悩まされていた。


 幸いにも今日は俺もショコラもやることがないから聞いてみるのもいいかもしれない。


「よし、それなら食べようか」


 朝食の席でそのことを訪ねてみよう。


 俺はそう考えてベッドから降りた。




「……おい」


「ご、ごめんなさい。ボーっとしていて」


 俺は口の中を清潔な飲料水で漱ぎながら縮こまっているショコラをじと目でにらむ。


 ショコラは俺が和食好きなのを知ってか、この地方では珍しい米を使った料理を披露してくれたのだが、悲しいかな俺の見よう見まね。


 碌なものが出来るわけがない。


 が、それでもショコラが頑張って作ってくれたのだ。


 黒焦げの魚は許そう。


 出汁の取っていない味噌汁もまあ許容範囲だ。


 だがな……米を洗剤で洗うことだけは許さん。


「ショコラよ、お前はパエリアやリゾットなどを作ったことがあるだろう。なぜ今回に限って米を洗剤で洗う?」


 俺の問いにショコラは手をもじもじさせながら。


「いえ、コウイチが作るご飯って白いじゃない。あの白さは普通の研ぎ方からじゃ無理だと思ったから洗剤で洗って白くしたの……」


 俺はそこまで白を求めん!


 と、俺はすんでのところで出かかったその言葉を何とか飲み込む。


 逆に考えよう。


 ショコラはまだ洗剤で洗ってくれたんだ。


 だから俺が開発した漂白剤を使わなかったことを喜ぼう。


 深呼吸深呼吸。


 よし、落ち着いた。


「……とりあえず簡単な物を作るぞ」


 ショコラがコクリと頷いたので俺は席を立って厨房へ向かった。




 日課として俺は毎日薬を調合しているのだが、何故か今回ばかりは何者かの視線を感じる。


「……」


「(そわそわ)」


「…………」


「(びくびく)」


「……………ショコラ?」


「は、はい!?」


 ピーンッと尻尾を一直線に伸ばして返事をするのは隠れていた(少なくとも本人はそう思っている)ショコラ。


「いったいどうしたんだ?」


 俺は手を止めてショコラにそう尋ねるのだが。


「ごめんなさい! 急に用事を思い出したわ!」


 ショコラは俺の問いに答えず、そんなことを宣言して大急ぎでその場を離れた。


「本当にどうしたんだよショコラは」


 俺はため息をついた後、気分を切り替えて薬の調合を行っていると。


「(そわそわ)」


 またもや俺を見つめる視線を感じるのであった。


「……落ち着かない」


 俺はもはや呆れの溜息しか出なかった。

こんな事をしているから俺は駄目なんだろうな。

分かっているのに止められない自分が嫌になる。


さて、そろそろ研究室の戸締りをしてもう家に帰ろうか。

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