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LUCK -9999  作者: シェイフォン
3章 決戦に向けて
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3話 憎悪

場面的には中編といったところでしょうか。

「お初にお目にかかります。私の名はファラウェン=バーキシアン=ランカローでございます」


 鳥人族の代表団として左から鷹人、鷺人そして鷲人と3名が俺と相対し、そのうち真ん中に立っている鷺人が一歩進み出てそう前口上を述べる。


(堕天使という表現がぴったりくるな)


 鷺人であるファラウェンを一目見て抱いた感想はそれ。


 白き翼と輝く髪など容姿そのものは隣にいるハクアをそのまま大人にした印象なのだが、瞳に宿る暗い炎が全てを台無しにしている。


 いうなれば穢れた聖女。


 全てを憎み、根絶やしを望む妄執の念が他の白い清らかな部分とコントラストを描き、一層際立って見えた。


「っ……」


 ハクアも俺と同じ印象を抱いたのだろう、隣で息をのむ音が聞こえた。


「一つ聞かせてもらうのだが、構わんか?」


 ベルフェゴールの言葉によると俺は畏まる必要がなく、普段通りの口調で接してやればいいらしい。


「今回の相手に上っ面だけの敬語は禁物よ」


 そう聞いたときは燻しかんだものの、実際にその場面にあってようやくその意図が分かった。


 おそらくファラウェン相手に表面上だけの態度や言葉を使えばそれだけで話はご破算となり、下手すれば護衛かと思われる両隣の2人によって喉を掻き切られている可能性がある。


 常識的に考えればそんなことなどありえないが、ファラウェンの発する破滅的な雰囲気を鑑みればそうなってもおかしくはないと思わされてしまった。


「ええ、お構いなく」


 ファラウェンから了承が出たので、俺は遠慮なくハクアとの関連性について聞くことにする。


「ファラウェン殿は内のハクアとよく似ていてな、何かの親戚関係と考えているんだが違うかな」


 俺と面会した鳥人族の者は数多いが、それでも鷺の亜人が出てくることはなかった。単なる偶然かもしれないが、ここは聞いておくべきことだろうと考える。


 するとファラウェンは俺とハクア、そしてアロウを順に睥睨したのち、こう言い放つ。


「ハクアは……いえ、ハルモニアは私の妹であり鳥人族を束ねる鷺の亜人です」


「やはりな」


 アロウがファラウェンの眼光に身を縮こまらせている中、俺は納得したように頷いた。




「私達鳥人族の本拠地は神聖ガルザーク帝国の東にありました」


 ファラウェンが語り出す。


「私達は非力なれど空を飛べるという利点から人間達にも一目置かれ、帝国も空からの警護や郵便配達などを鳥人に任せるなど友好的な関係を築いていたのですが」


「ダグラスが皇帝に代わった時から変化したと」


 ファラウェンは頷く。


「はい。最初は国が鳥人族を使うことを止めさせ、次に民間も禁止させるなどと徐々に私達と距離を置き始めたのです」


「不可解だと思わなかったのか?」


 俺の言葉にファラウェンは唇を噛み締めながら。


「……当時は帝国以外にも取引している国があったため、帝国を単なる1国としか見ていませんでした」


 話は続く。


「帝国がグエン宰相の指揮によって亜人達を弾圧し、処刑しているという情報は私達にも入っていましたが、父も母も重臣達は対岸の火事としか考えていなかったことは悔恨の極みです」


「自分達は攻められることなどないと錯覚していたと」


「はい。私達鳥人族は情報伝達の速さの他に空を支配しているという絶対的優位がありましたので、まさか国が攻撃してくるはずはないと高を括っていました、が」


 その当時を思い出しているのだろう。体をワナワナと震わせているファラウェンの美しい顔が醜く歪んでいく。


「帝国は対鳥人のために雷を操る魔法を開発し、バサラ元帥率いる軍によって鳥人族の兵は次々と撃ち落され、空を封じられた私達はなす術なく滅ぼされて父や母を含む多くの鳥人が処刑されました」


「「「「「「……」」」」」」


 ファラウェンの言葉を最後に沈黙がこの場を満たす。


 ハクアとアロウも当時の状況を思い出しているのだろう。


 アロウは拳を握りしめて俯き、ハクアは口に両手をあてて嗚咽していた。


「……よく生き延びることができたな」


 このまま沈黙を続けていても空気が悪くなるばかりだと判断した俺は重い口を開けて問う。


「私とハルモニアは両親の手引きによって帝国の兵が攻めてくる前に城を抜け出したので九死に一生を得たのですが、帝国の追手は執拗だったので私とハクアは離れ離れになってしまいました」


「なるほど、だからハクアがアロウとともに奴隷として売られていたのか」


 おそらくハクアが逃亡中にアロウと出会い、そして2人で逃避行を続けている最中に奴隷商人に捕まってしまったのだろう。


「ハクアを探そうと思わなかったのか?」


「……ハルモニアは死んだ者として考えていました」


 酷い話だな。


 という言葉を俺は全精力を持って飲み込む。


 確かに妹を死んだ者として扱うのは褒められる出来事ではないが。今、ここでそれを俺が追及したところで意味はあるまい。


 それはファラウェンとハクア、そしてアロウの3人だけで話し合うべきことだ。


「過去話はそれぐらいにし、本題に戻ってよろしいでしょうか」


 ファラウェンの言葉に俺は我に返り、構わないとばかりに頷く。


「亜人王、私ファラウェン率いるバーキシアン国に属する鳥人族はあなたの傘下に入ります……ただ」


「ただ?」


 こちらも無条件に数千の鳥人が仲間に入ってくるとは考えていない。だから問題はどこまで向こうの要求を呑めるかだ。


「1つはバーキシアン国の再興です」


 まあ、これは当然だな。


 ベルフェゴールにもそれは許されているので俺はこの場で約束する、が。


「そして2つ目……帝国に住む人間の皆殺しを約束して下さい」


 暗く、低い声音で言い放つファラウェンの口から出た2つ目の約束にアロウとハクアは凍り付き、逆に向こう3人は当然というばかりの面持ちだった。 

短い投稿が続きますがどうか寛容なお心でお許しください。

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