表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

№1 漆黒の魔王 

 

 ヒュルルル――。

 風の音が彼ら達を呼び覚ました。


 夕暮れに二つの大きな影――。

 いや、集団と言ったらいいのだろう。

 

 7時のチャイムが鳴り、校庭には集団以外、誰もいなかった。


 「おいおいおい、待たせてんじゃねーよ」

 片方の、ピアスだらけの顔に金髪の男が言った。目つきは鋭く、イラついていた。

 その灰色の制服を着た集団の反対側には、漆黒の制服を着た集団がいた。

 肩に金属バットをのせ、クチャクチャとガムを噛んでいる。

 「悪ぃーな。この前の借り、返してやるよ」


 漆黒の髪・目・制服という姿のリーダー格の男が言った。その姿は、悪魔のようだった。


 「ぶっ殺してやるよ。行くぞ、テメェら!」

 灰色の集団は一気に押し寄せてきた。

 リーダーの男の横に不良とは思えない、眼鏡の男がいた。

 「奴ら、結構鈍いね」

 「俊、お前は下がってろ。頭脳派は引っ込め」

 はいはいと俊と言われる男は、背を向け、引っ込んでいった。

 「さて、8分・・・いや5分で片付けるか」

 男は、灰色の集団に突っ込んでいった。


  * * * *


 ――5分後。

 景色が一変した。

 灰色の集団はみな倒れ、男はケガ一つなく立っていた。

 「虫ケラめ」

 そう吐き捨て、見下した。


 西秋高校。

 漆黒の魔王として、恐れられている番長・神田朔夜は2年制ながらにして西秋を支配している。

 この辺りは、不良が多くて有名な場所として知られている。

 

 「ちょっと、何やってるんですかっ!」


 すると、突然少女の高い声が聞こえた。

 朔夜は、その少女の方を見た。


 少女は、校庭を走り、朔夜のもとまでやって来た。

 「はぁ・・はぁ・・。ケンカはいけませんよっ」

 息を切らしながらも、注意した。

 少女の胸元には、生徒会のバッヂがついていた。

 朔夜は、無視して背を向けた。

 「ちょっと、聞いてるんですかっ?」

 「――うぜぇ」

 朔夜は、振り返ると、ガッと少女の胸ぐらを掴んだ。

 服がめくり上がったが、少女はキッと睨んだ。

 「二度と近寄るな」

 「やめてくれるんですか?」

 朔夜は、もう片方の腕を振り上げ、殴る体勢をしていた。

 しかし、少女は泣きそうな顔をすることなく、ずっと朔夜を見ていた。

 朔夜は呆れて、少女を放り投げると、校庭から去って行った。

 「待ってっ!」

 朔夜は立ち止まった。

 「そんなに良い子ちゃんがいいのか?」

 「違います。任務です。」

 「は?」

 「詳しくは言えませんが・・・生徒会副会長としての仕事なんですっ」

 「――フッ。バカだな」

 そして、また歩き始めた。

 「ケンカは外でやってくださいっっ!!」

 背後から、少女の叫ぶ声が聞こえた。


  * * * *


 翌日。

 朔夜は、俊と屋上でサボッていた。

 朔夜は爆睡、俊はお菓子を食べながらパソコンをしていた。

 

 すると、突然屋上のドアが勢いよく開いた。

 その音で朔夜は、目を覚ました。

 現れたのは、昨日の例の少女。

 少女はフェンスに頭を何度もぶつけ始めた。


 「おいおい、あの子ヤバイよ」

 俊が鼻で笑った。

 すると、少女はフェンスを登り始めた。

 「わ、自殺。」

 俊が目を丸めた。

 朔夜は、まさかと思い、起き上がると少女の所へ行き、腕を引っ張った。

 「きゃっ」

 少女はバランスを崩し、朔夜にぶつかり、朔夜は尻餅をついた。

 「――て。お前――」

 「あなたはっ」

 少女は、急いで朔夜から離れた。

 「自殺か」

 「はい?何言ってるんですか。フェンスに頭をぶつけた時、バッヂを落としたから取りに――」

 朔夜は、呆れてため息を吐いた。

 「でも、何で頭?」

 「聞いてくださいっ。新中央高校の不良達が西秋の生徒をケガさせたんです。何か、悔しくて――」

 「お前、真面目だな」

 「いえ、私のバカ兄弟も不良なので、仲間がケガさせられたりしたら腹が立つんです。」

 「そうか。じゃぁ、新中央潰すか」

 「え?」

 朔夜は平然とした顔で言った。

 「俺もアイツら嫌いだしな。ここは一つ、いくつか同盟組んで潰すか。お前、バカ兄弟に頼んでくれ」 「お前じゃありません。桃野美桜です。」

 少女・美桜はニッコリと笑った。

  「やれやれ」

 ずっと、横で聞いていた俊はため息を吐いた。

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ