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奇妙な村

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/03/09

ある村に訪ねてきた旅人は困惑した。


「どういうことだ?」


なにせ、この村の住民と来たら四六時中働いているのだ。

朝も昼も夜も。

旅人はポカンと口を開けた。

何せ、このような村は聞いたことも見たこともない。


「驚きましたかね」


村長がやってきて笑う。


「我々は体を改造しましてね。おかげで四六時中働くことが出来るんです」

「改造?」

「気になりますかな? 旅人さん」

「ええ。とっても」

「ならば、一つだけヒントをあげましょう。あの水車をご覧ください」


大きな水車が回っている。

川の流れに押されて回っているように見えたがよく見ると違う。


「これは……?」


水車は水の流れとは関係なく回っていた。


「変だな。水が当たっていないのに回っている」

「ええ。水ではなく電気で回しているんです」

「電気?」

「この村はね。電気で動いているんですよ。水車も、家も、畑も、そして我々も」


村長はそう言って袖をまくった。

腕の皮膚の下に細い光が走っていた。


「我々の体は改造されています。電気が流れていないと生きていけないようにね」


旅人は思わず水車を見た。

水車は回っている。

速く、強く、絶え間なく。


「……じゃあ、この水車は」

「発電機です」


村長は当然のように言った。


「水車が回ると電気が生まれる。電気があるから我々は働ける。働くから水車が回る」

「だから我々は止まれないんですよ」


旅人は村を見回した。

畑を耕す者。荷を運ぶ者。木を切る者。


誰も止まらない。

止まれば水車が止まる。

水車が止まれば電気が止まる。

電気が止まれば命が止まる。


村長はにこりと笑った。


「便利でしょう?」


旅人は何も言えなかった。

水車は今日も回っていた。

村を生かすために。

村を働かせるために。

そして村を止めないために。

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