奇妙な村
ある村に訪ねてきた旅人は困惑した。
「どういうことだ?」
なにせ、この村の住民と来たら四六時中働いているのだ。
朝も昼も夜も。
旅人はポカンと口を開けた。
何せ、このような村は聞いたことも見たこともない。
「驚きましたかね」
村長がやってきて笑う。
「我々は体を改造しましてね。おかげで四六時中働くことが出来るんです」
「改造?」
「気になりますかな? 旅人さん」
「ええ。とっても」
「ならば、一つだけヒントをあげましょう。あの水車をご覧ください」
大きな水車が回っている。
川の流れに押されて回っているように見えたがよく見ると違う。
「これは……?」
水車は水の流れとは関係なく回っていた。
「変だな。水が当たっていないのに回っている」
「ええ。水ではなく電気で回しているんです」
「電気?」
「この村はね。電気で動いているんですよ。水車も、家も、畑も、そして我々も」
村長はそう言って袖をまくった。
腕の皮膚の下に細い光が走っていた。
「我々の体は改造されています。電気が流れていないと生きていけないようにね」
旅人は思わず水車を見た。
水車は回っている。
速く、強く、絶え間なく。
「……じゃあ、この水車は」
「発電機です」
村長は当然のように言った。
「水車が回ると電気が生まれる。電気があるから我々は働ける。働くから水車が回る」
「だから我々は止まれないんですよ」
旅人は村を見回した。
畑を耕す者。荷を運ぶ者。木を切る者。
誰も止まらない。
止まれば水車が止まる。
水車が止まれば電気が止まる。
電気が止まれば命が止まる。
村長はにこりと笑った。
「便利でしょう?」
旅人は何も言えなかった。
水車は今日も回っていた。
村を生かすために。
村を働かせるために。
そして村を止めないために。




