第四話 「雑用ロボット」
※ 本作品は、一部に生成AI(ChatGPT&Gemini)を活用して構成・執筆を行っています。設定および物語の方向性、展開はすべて筆者のアイデアに基づき、AIは補助ツールとして使用しております。誤字脱字または展開の違和感など、お気づきの点があればコメントをいただけると助かります
「お、おおおーー!!」
アメリアの驚嘆が室内に響いた。それもそのはず、魔導工学科第三棟の三階、その一角を占める研究室には、こいつの好奇心を刺激するものが動いているからだ。
「うぉほー! のほほー!」
「アメリアって王女なんだよな?」
「この国に並び立つ者はいらっしゃいません」
「誰も並び立ちたくはないんじゃないかな」
アメリアの他には、世話係の女にガーウェンディッシュの婚約者がいた。彼らもまた目を見開いて、眼前の光景を興味深そうに眺めていた。
俺たちは研究室の扉の前で固まっていた。『奴ら』の邪魔をしないために。
「」
三つの顔のない人影が忙しなく動いていた。鉄製の表面をした者たちは、一人は床に散らばっていた紙を拾い机の上に集め、一人はそれらをまとめていく。三人目はこれまで作ってきた装置や物質を持ち上げ、隅へと丁寧に並べ置いていく。
命令を下さずとも一人一人が役割に徹しており、自らの使命とばかりに従事していた。
「ロボットたちだ」
磨き上げられた真鍮や銅を用いて外装を整えた。目や鼻、口といった部位のない顔無し人間のようだが、素材そのものの色と質感が生かされている。内部では歯車、ロッド、シリンダーなどが複雑に噛み合い、人間を模した動きを再現している。一週間前に北の奴らに見せたらアメリアのように興奮していたな。ライゼルなど目を輝かせていた。あいつらからの指摘を取り入れ挙動の改善点を日ごとに行い、今では滑らかな挙動や仕草が可能になってきた。それでもまだぎこちなさはあるがな。
「名前! 名前決まってる!? どうやって動いているの! 核は魔力? 近くで見ていい!? 一つもらってってもいい!?」
矢継ぎ早に質問してくるな、少しは落ち着け……ふっ、作り手としてこういった反応は喜ばしいがな。
「名前はまだだ。雑用ロボとしか呼んでいない。核は玉石だ。市販価格と魔力蓄積効率にはこれが適している。胸と腹に一つずつ埋め込んでいる。近くで見る分にはいいぞ。行動を阻害しないなら触ってみてもいい。譲るのはもう少し待ってくれ。量産化は視野に入れているが、こいつらは試作機だからな」
「うん、わかった! ありがとう! もらってくね!」
「話聞いていたか?」
それほど求められると俺としてもやぶさかではないが、まだ調整が必要だ。何しろ実用化にはまだまだ修正と改良を重ねなければならない点が出てくるだろうからな。
「これ、どうやって命令しているの?」
はしゃぐアメリアに苦笑を交じえたハルデンが尋ねてきた。
この男とは、面と向かって話したことはないな。あの鬱陶しい女の婚約者と聞くだけで辟易しそうなものだが、あまり我を出す性格ではないらしい。
「命令はしていない。自動で動くようプログラムしただけだ」
「ヴェルディック君の魔法ではないんだ」
「核とは別に、内部に数十の魔法式を組み込んである。そして、これを使って操る」
真顔で答えながら、ポケットから長方形の制御盤を取り出す。簡素な造りの装置で、表面には押しボタン式スイッチだ。
「オンにすると核の部分から魔力が全身を通り、動き出す。オフにすれば回路が停止する」
「へえ、遠隔でも操作できるんだ」
「なかなか思い通りにいかなかったがな。確実に止めるなら、うなじ部分のスイッチを押すことだ」
ロボットの実現化までに四カ月を要した。発想から設計までは練り上げていたが、想定以上に難航したな。他の発明や開発も並行していたせいもあるが、何とか作り上げた。
「名前の通り、配膳や掃除といった雑用をこなすロボだ。ゆくゆくは料理すらもこなし、生活の補助として市井への普及を考えている」
「す、っごい。機械型使用人ってところかな」
「自律型でしょうか。例えば、侍女の代替となることも……」
「複雑な作業は現状不可能だ。『重い物を持つ』『移動する』といった単純な命令しか遂行できないからな。もっと複雑な事柄にも対応できるようにしていきたいものだが」
「僕も、土から人形を作って何かさせたりすることはできるけど、その度に魔力を介して指示を伝達しないといけないから。自分で勝手に動く、なんてのはできないかな。本当に凄いよ、これら」
再三にわたって褒めてくるハルデンに、俺は内心で僅かに驚いていた。
ガーウェンディッシュであれば、まずは粗探しから始まる。教師の許可は取っているのかだの、安全性はしっかりしているのかだの、しまいには外見の美醜について何かしら難癖をつけてくるような奴だ。
これほど素直に感想を述べてくるとは思いもよらなかった。世辞も多少は入っているのだろうが悪い気はしない……どちらかといえば、アメリアの感性に似通っているのかもな。
あの女の婚約者なんだよな? 何故あの女を選んだ?
家同士の決定だからか、少なからず同情はするが、貴族社会とはそういうものだな。
「少し、君を誤解していたかな。てっきり、武器とかを作る方が好きなのかと」
「兵器なぞ作るつもりは毛頭ない。気が乗らない限りな」
「作れはするんだ」
ハルデンに警戒を張る必要はなさそうだな。土人形を創造すると口にしていたところから察するに、他人の造り上げた物には敬意を表するような奴だ。生みの苦しみを知っているわけだからな。
俺にしたって、人間的な感情は僅かながら内在している。指摘なら快く受け入れるつもりだが、言いがかりじみた物言いをしてくる奴など億劫でしかない。
こういった人柄の方が話していて実になる、それに楽しいからな。
「全部が同じ設計なのですか?」
「大部分は同じだな。だが、一体だけ。重量のある物を運んでいる奴だ。あいつだけは少し違う」
「腕に何か着けているようですが」
「【怪力腕】と呼んでいる。簡潔に言えば筋力を増強する装置だ」
今日は来ていない二人と改良を重ねた篭手の開発品は、あれ以来一度たりとも暴走していない。性能は少々抑え、たとえ予期せぬトラブルが起ころうとも対処できるように施した。
「取り外しは可能。他のロボに取り付ければ、そいつにも同様の効果が表れる。最大出力ならば薪割りどころか岩をも砕けるようになるはずだ」
「雑用の範囲を超えていませんか?」
「重い物を持てるのは便利だろう。市場でも、荷運び用に需要はある」
アメリアが一分おきに三体のロボを巡り、その度に指先で突いたり軽く触れ叩いてみたり…………おい、叩くな。
「人に危害を加える可能性は?」
「対人暴行抑制の魔法式を組み込んである。人間に手を上げることはない設計だ」
侍女として主に危険が及ばないか確認したいのだろうヴァルキュロスは、ロボットたちの一挙手一投足に視線を巡らせている。当然の姿勢だな。
安全設計は徹底している。
前回の失敗に、ライゼルとはよく話したからな。
俺は真顔で答えながら、制御盤に視線を落とした。
「いずれは、個々人が様々なパーツを付け加えることになる。本体をパンと捉えた場合、怪力腕のような魔導具をジャムやソーセージなどに置き換えてみろ」
「ジャムを塗るのか、ソーセージやハム、チーズを挟むのか。個人で付け足していく、と?」
「そういうことだ。個性や独自の仕様に依るものとなってく。開発者の一存で全てを決めてしまうよりは加工の余地を残しておく方が面白いだろう。使用者から思わぬ創造性が返ってくるかもしれないからな」
「自分だけのロボットを作っていくってことだね。そういう造りも、確かに……」
考え込むようにして呟きだしたハルデンは、好ましい印象ばかりだな。
何故あの女を婚約者にしたんだ? 貴族同士の結びつきとはいえ、選択肢ならあったんじゃないのか。
「エネルギーが切れてきたな」
見れば、ロボットたちの挙動が緩慢になっていた。予想通り、部屋が整頓されるあたりで内部の魔力が枯渇してきたな。特にブルートフォースを着けているロボは消耗が激しいようだ。魔力が尽きかけている。
あと一つ運ぶだけで完了だが、物を持ち上げられなくなっている。今まで運搬してきた物の中で軽量な物を、何度も持ち上げようとしている。
とりあえずは、当初の目的は遂行したな。研究室は、今やどこを歩いても紙を踏みつけることはなくなった。無闇に歩いて開発品を蹴飛ばさずに済む。足の指をぶつけて身悶える心配もない。
スイッチを切ると、ロボたちは生命活動を終えたように停止した。
「充填するか…………予備の補給分は、使ってしまっていたか」
昨夜、というか今日の朝方か。徹夜に寝ぼけて入れ替えたことを忘れていた。入れ替える前のものも、魔力を溜め込んでいない。こちらも忘れていた。
今からだと六時間は充填に時間がかかる。面倒だが十日ぶりに市井に繰り出すか。
「魔力だったら何でも良いの?」
停止した三体を世話係によって一か所に集めさせた王女が、ロボたちに寄り添うようにして疑問を投げかけてきた。
「原動力だからな。魔力変換効率に秀でた電力を頼りにすることもあるが、今からだと時間がかかる。少し待っていろ、同型の玉石を街で調達してくる」
少々遠いが、いつもの店に行けば販売しているはずだ。今後を見据えて大量に購入しておくべきか。だが、置き場が無いな。学生寮の自室はまだ余白があったか。それも確認してからでないと駄目だな。
「いや、待て。出掛ける手間を削れるか?」
「ヴェルディック君?」
「俺たち全員で、魔力総量はどれくらいだ?」
各々が体調に支障をきたさない程度にロボにエネルギーを分け与えるなら。四人もいれば二人で一体ずつ、量によっては二体ほどが即座に復活できるか。
そんな見立てをしていたところで、手が挙がった。
「あ、じゃあわたしがするよ。ちょっと注いでみてもいい?」
「それなら、まずは頼む。自分が倒れない程度にな」
無邪気な笑みを浮かべたアメリアは、早速両手を試作機の三つへかざした。薄紅に揺らめく炎のような魔力が流し込まれていった。
次の瞬間、試作機の目が赤く光った。
「――これは」
俺は即座に記録用ノートを取り出し、メモを取り出した。




