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リープ ~私達の二周目~  作者: 蛇頭蛇尾
1章

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第十二話 「ドドっと過ぎる日々」(3)

 



「あ、また爆発」

「今度は小規模らしいですね」


 もう一度生じた爆音は、さっきより小さい。見失いかけてたけど、ここからはまだちょっと距離があるっぽい。


 んん、あれは。


 中央本館を横目に木々の間をすり抜けるようにして通っていると、またもや見知った顔。

 穏やかな陽光が差し込む人通りの多い開けた場所。今日の昼頃も沢山の生徒がいたそこにはテーブルがいくつか設置されている。


 そのうちの一つに女子が二人、向かい合って座っていた。


 手を動かしながら、何かに熱中しているみたい。あれは、カードゲーム?


「お、王女様」

「リュソーじゃーん!」


 わたしは近くに降り立ってエルミナを後ろに連れてくると、あっちも気づいた。


 西から来た留学生、リュソー・アルカンジュ。知り合ってまだ二週間くらいだけど、妙に気が合うんだ。けっこう強烈な出会い方したよねぇ。校内で獣を召喚して走り回っていたわたしに、まるで体当たりみたいに話しかけてきたんだ。


 商人の家の娘で人の懐に入るのが上手いんだけど、厭らしさはない。常識も礼儀も弁えてるのに必要以上にへりくだらないところがわたし的には合ってるのかも。


「なにやってんの? トランプ?」

「ピケだよ」

「ピケ?」

「簡単に言えば、数字が大きいカードだけを使う『頭脳ゲーム』。手札を交換しながら、カードを出して勝負して、合計点数を競う」


 彼女の手元には、分厚い紙のカードが数枚あった。普通のトランプと違って模様もなんだか凝ってる。


「今ちょうど大勝負の最中なんだ」

「でんかぁぁ!! この人詐欺師ですぅ!!」


 対面に座っていたもう一人の女の子、ノーラの第一声は悲鳴だった。


 ノーラっていつも叫んでいる気がする。面白い子だよね。


「なにがあったの?」

「聞いてください殿下! リュソーさん、この人、イカサマしてます! わたしばっかり負けてます! 何回やっても!」

「二人って、面識あったっけ?」


 いつの間に知り合ってたんだろ。というか、そんなに仲良くなってたの?

 テーブルの上には、いくつかのカードの山。今までの戦いの記録なんだろうけど、明らかにリュソー側の山の方が大きかった。


「ううう、これで勝負!!」


 ノーラが気合を込めてカードを出した。ハートのジャック。

 ふん、ふんと息巻いてるから、強いカードなのかな?


「ふふっ、ざーんねん」


 リュソーが滑らせるように出したのは、ダイヤのエース……あっ、ノーラがテーブルに突っ伏した。


「なあんでよおお!!」


 結構音を立てて額をぶつけていたけど、痛くないの……両手で抑えてる。痛かったんだ。


 商人の娘は淡々と、その二枚を自分の山に加えた。


「やっぱりイカサマよ! イカサマイカサマ!! イカイカサマサマ詐欺詐欺師!!」

「してないってば。しなくても勝てるんだから」

「エースとかキングばっかり持ってるじゃない! おかしいわ!!」

「女神がわたしに微笑んでるだけだよ。運が悪かったね」

「女神まで買収したの!?」


 ノーラは唇をぎゅっと結んで、悔しさをこらえてるみたい。目の端には、うっすら涙まで。


「これ、学校でやっていいの?」

「金銭は介していないから」

「でも……わたしのお菓子、全部巻き上げられました……!」


 ノーラが指差したのは、机の端に積み上げられたお菓子の山。チョコにマカロンにフィナンシェ。たぶん高いやつだ。


 リュソーはそのうちの一つ、波のような紋様を刻まれたチョコを紙から取り出して、細い指でゆっくりと口に持っていった。歯を見せないような口元の動作で、甘味に薄く微笑んだ。


 うーん、見せつけるようにしてる。美味しそうに食べるなぁ。


 凝視していたノーラが、歯ぎしりして右手の拳をテーブルに押し付けるようにぐらぐら揺らしていた。ちょっと可哀想だよね。


「優しくしてあげなよ? 手加減ぐらいリュソーならできるでしょ」

「言っとくけど、彼女が勝負を挑んできたんだ。『今日は勝てる気がする!』って自信満々で」

「四連敗です~~」

「六連敗だよ」


 その場に崩れ落ちたノーラ。無念の涙を芝生がしずかーに受け止めてた。


「泣かないでノーラ、今度お菓子持ってくるから、一緒に食べよっか」

「うぅ、でんかぁぁ」


 ノーラっていつも不憫な目に遭うから、わたしとしても気にかかってるんだよね。

 わたしも結構巻き込んでると思うから、優しくしてあげよう!

 みんな、もっとこの子に優しくしてあげて! 


「王女様、次はどうだ? 菓子類でなくともいいが」

「えー、どうしよぉ……やろっかな?」

「あちらの爆発は後回しで?」

「あっ、そうだった!」

「ああ、さっきから変な音するなって思っていた。あれって爆発音だったんだ」

「二人も一緒に行く?」


 そう口にすると、バアッ、とノーラが顔を上げた。


「わ、わたしもついていき、」

「おぉっとー、おいおいおい。勝負を投げ出すのかい?」

「そ、そんなつもりは……」

「王女様、そういうわけでわたし達は楽しんでいるから。何があったかだけ後で聞かせてほしいな」

「そっかー、残念。じゃあまたねー!」

「でんかぁぁ!!」


 縋るような泣き声が聞こえたけど、わたしはそれを振り切ってまた空へ飛び出した。エルミナが静かについてくる。


 ノーラ、強く生きてね。お菓子なににしようかなー。その時はリュソーも呼ぼう。





 もうそろそろ近づいてきたってところで、またも知り合いを発見。


「あのペア、また一緒にいる」


 刈り上げた銀髪のライと綺麗な黒髪を流したイヴだ。北からの留学生二人は、いつもと同じように並んで歩いてて、まるで歩幅まで合わせてるみたい。なんだか、二人だけに通じてる空気というか。あの距離感、ほんと不思議だよね。


「ラーイ! イーヴー!」


 声をかけると、ライはちょっと驚いた顔をして、イヴは柔らかい表情で小さく手を振り返してくれた。

 わたしは二人の近くに降りて駆け寄った。


「アメリア姫、とエルミナ殿」

「アメリア殿下、エルミナさんも」


 毎回思うけど、ライって、エルミナを見る目が他の人と違うような。二人ってやっぱり知り合いなのかな? でも、エルミナに聞いたら知らないって言ってたし。


 一目惚れ? って最初は思ったけど、そういった眼じゃない気がする。むしろ怖がってるような。普通に接して欲しいけど、これから慣れてもらえばいいかな。


「二人とも、どこ行くのー? っていうか、ほんとにいつも一緒だよね? 仲良いよねー」

「そうですか? そう思いますか?」


 ちょっと照れるようにしたイヴがまた可愛い。いつも明るいし綺麗だって思う。たまーに真面目な表情になるときもあるけど、そのときはエルミナみたいな美人な印象に変わるんだ。


「従姉弟ですから。必然的に共にすることが多いのです」


 へえ、従姉弟ってこんなに仲いいんだ。

 こういう仲の良さ、見習って欲しい人がちらほらいるなー。


「…………そういうとこだよね、ライ君って」

「何がだ?」

「もういいでーす。アメリア殿下、音は聞かれましたか? わたし達はあれを確かめに行こうとしていたんです」

「わたしもわたしも! 一緒に行こう!」


 ライがきょとんとしているのを置いて、イヴとわたしは足並みを揃えた。


 目的は一致。じゃあ、行くしかないよね!


 二人は空を飛べたりしないらしいから、わたしが先頭に立って駆け出した。


 ようやく目指していたところに着きそう。遠回りばっかりしてたな。






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