第十二話 「ドドっと過ぎる日々」(2)
※ 本作品は、一部に生成AI(ChatGPT&Gemini)を活用して構成・執筆を行っています。設定および物語の方向性、展開はすべて筆者のアイデアに基づき、AIは補助ツールとして使用しております。誤字脱字または展開の違和感など、お気づきの点があればコメントをいただけると助かります
飛行魔法で少し高度を上げていると、石畳のベンチに腰掛ける人影が目に入る。
「ジャミー!」
「こ、これはこれは。王女殿下」
わたしが手を振ると、ジャミールは驚いたように立ち上がった。
「固いなぁ。アメリアでいいのに」
「できませんよ、そんなこと」
南方の留学生とのいつものやり取り、もはや定型文。
まぁったく、どうして皆そんなにかしこまるのかな。王女ってだけじゃん、わたしなんて。
彼の座っていたところを見ると、横長の封筒がいくつも重ねられていて、いかにも厳格そうな筆跡で宛名が書かれていた。
「それ、手紙?」
「はい。母国にいる彼女たちへ」
「へえ、たくさん書いたね……ん? 彼女たち?」
「こちらはタニーラ。こっちはレイダ。この青い封はキナンに宛てたものになります」
「…………んんん?」
視界がぐにゃりと横向くかと思うくらい、首を傾げる。
ジャミは平然としていた。コーヒーには砂糖を入れるのが普通ぐらいに何も気にしていない。
「恋人に向けた手紙……じゃないの?」
「はい、そうですが。愛する女性たちへの手紙です」
あんれ、聞き間違いじゃないっぽい。単数形じゃなくて複数形で言ってるよね。
「一人じゃなくて?」
「愛とは多面的であるべきです。私は、彼女たちを敬意と情熱をもって愛しております」
「……この前、浮気について話さなかったっけ?」
「浮気など許されざることです。神の御名において断罪されるべき不貞です」
「ジャミの持ってるこれらは?」
「愛です」
一旦わたしは口を閉ざして、腕を組んで少し唸る。
あ、そういうこと。ヴァルモン王国と南方だと、文化が違うんだ。こっちは一夫一妻だけど、南ならそうなのかも。
「あら、アメリアさん」
「リファーナ!」
ちょうどいい時に来てくれた。紫のローブを制服と一緒に纏った敬虔な聖女。そよ風を伴うように静かに手を振って。
今日も三つ編みが可愛くて綺麗。わたしも三つ編みやってみようかな。エルミナに頼んだらささっとしてくれるかも。
リファーナはジャミを見て。ジャミはリファーナを見て。お互いにスンと表情を無くして会釈だけした。
この二人もあんまり仲良くない。同じ南方だけど、対立派閥らしいからって。
うーん、いっそのこと、誰かが統一しちゃえばいいのに。なんて、簡単にはできないよねぇ。わたしがしちゃおっかな。
「ねえ、南方って一夫多妻? 一妻多夫? どっちも?」
「国や都市、慣習によっても異なりますが、大半は一夫一妻です」
「え、でも……」
わたしはジャミの手紙の束をチラッと見た。
「アメリアさんが勘違いされるのも無理はありません。彼は、南方の例としては適していませんから。彼の居た都市国家では非公式にそういった形が残っているのかもしれませんが。だとしても不倫理に違いはありません」
リファーナがピシャリと断言すると、ジャミはむっと口を曲げた。
「サラディア嬢のおっしゃることは普遍的な価値観ではあります。停滞的思考とも言い換えられますが。私は、愛する女性が複数いることは何も恥ずべきことではないと考えておりますので。我らが神もまた、多くの民を平等に愛しておられるのですから」
「それは『慈愛』の話です。『恋慕』とはまったく別です」
む、この流れは……始まっちゃいそう。
睨み合うように構えた二人とも、もう、完全にスイッチが入っていた。
「では問います。愛とは、たった一つの心にたった一人しか住めないものでしょうか?」
「当然です。愛とは唯一であり、深く、定まったものであるべきです。複数に向けるという行為そのものが、信の欠如です」
「しかし、愛は時に、同時に複数の存在に向くもの。優先順位ではありません。全員に等しく尽くす意思と覚悟があれば、」
「覚悟だけで足りますか? その覚悟が本物なら、どうして定めることから逃げるのです?」
わたしは、そっと一歩、後ずさった。これ、もう無理なやつだ。止められない。
二人を引き合わせた時から変わらないけど、最近は特に、顔を合わせるたびに衝突している気がする。それでもって、毎回激しくなる。
南方の情勢とか、家とか派閥とか、厄介な関係性が影響しているのかもしれないけどさ。
まあ、どこの国でもつきものだけど。
まだ良い方ではあるよね。殴ったり蹴ったりとかじゃなくて、個々の信条とかを言葉でぶつけ合ってるだけだから。
でも、こうして言い合ってるときは、二人とも楽しそうに見えるんだよな。同郷というだけじゃなくて、たぶん、お互いの芯の部分がぶつかり合ってるからかな。
二人とも結構頑固で、絶対に譲らない。相手に負けないために、何でもかんでも論じてばっかり。折れない精神って大事だと思うけど、二人の場合は議論じゃなくて勝敗をつけるのが目的になってる気がするんだよなぁ。別にいいんだけど。ただの石より磨き合う原石であれ!
「バフマーンさん、あなたの信仰が他者への慈しみを説くならば、なぜ恋慕においてだけ自由を主張するのです?」
「信仰とは自由を否定しません。自由な愛は真理であり、拘束は堕落です」
「自己を正当化していますね。信仰は免罪符ではありません。それこそ信の堕落です」
二人ともまだ落ち着いた口調であるけど、心は絶対燃えてる。二人の身体から漏れ出てる魔力も、なんかバチバチいいそうな雰囲気だし。
「……あ、そうだ! さっき研究塔の方からすごい音がしてさ! 今から見に行くとこなんだけど、二人もどう?」
「アメリアさん。ここからは少し真面目な話になります。数刻ほど、ここをお借りします」
やんわり断られた。初めてかも、リファーナにとってそれだけ譲れないんだ。
この子もこの子で、結構意固地になるところがあるってこと。これも最近知った。
「どうぞ、王女殿下。先をお急ぎください。ご心配なく。わたしは退きませんので」
「……うん、じゃあ、またね!」
うっははー、火がついてきたっぽい。聞いててもわかんなくなりそうだし、面倒くさそうだし、いいや!
「行こっか」
「はい」
ずっと空気の一部になってたエルミナの腕をぐいっと引っ張って、そそくさとその場を離れる。
「まず、愛の定義から明確にしましょうか」
「いいでしょう。ならば、神の与えた契りの本質から問います」
後ろでは、まだ二人の議論が続いてた。遠くなっていく声は、だんだん神学と哲学が混ざり合った難解な響きに変わってた。
正直言っちゃうとよくわかんないけど、二人ともすごいな。まっすぐぶつかり合ってて。
神様も大変そうだなぁ。あの二人みたいに熱心な人たちに信仰されて、願いを聞き届けて。
けど、嬉しいんだろうな。あれだけ慕われてるんなら誰だってやる気になるもんね。
「エルミナ、あの二人と話したことないよね」
「話すこともございませんので」
「こらこら。ダメだよ、そういうの。わたし以外の人とも関わらないと。エルミナの視界が変わんないじゃん」
「宰相閣下もいらっしゃいます」
「他には? 友達は?」
「爆発の発生場所は、まだ先になりますね。向かいましょう」
「ええ……セレヴィは? グレインは? ノーラは? アークは?」
「ハルデンさんは、そうかと。あとは友人の解釈や定義を定めていただかないと」
「……ごめんね、エルミナの時間奪ってるよね、わたし」
「そんなことありません! アメリア様のお時間は私の時間。アメリア様の世界は私の世界です!」
「じゃあ、セレヴィたちと仲良くしてよ」
「さあ、向かいましょうか」
「ちょっと」
エルミナさぁ、流石にわたしも不安になってくるよ。
溜息をついて、わたしは再度魔法で空に飛んだ。




