第十二話 「ドドっと過ぎる日々」
※ 本作品は、一部に生成AI(ChatGPT&Gemini)を活用して構成・執筆を行っています。設定および物語の方向性、展開はすべて筆者のアイデアに基づき、AIは補助ツールとして使用しております。誤字脱字または展開の違和感など、お気づきの点があればコメントをいただけると助かります
風が心地よく吹いていた。空は高くて、雲も少ない。
こういう日は、なにかを打ち上げるのにちょうどいい。というわけで、わたしたちは第六棟近くの演習場に来ていた。少し視線を遠くに向ければドリル・ホールが見える。
セレヴィが真剣な顔で魔法陣を調整しているのを、横からのぞき込む。
「で、何を飛ばすんだっけ?」
「魔力応答式の信号弾。魔法式と属性操作で、魔力の反応位置に応じて色が変わる。照準と誘導の実験も兼ねてね。問題ばかり発明する人の話は聞いていなかった?」
「ゴージンの説明、よくわかってなかったんだよねー」
「つまりね、『繊細だから静かにして』ってこと」
「りょーかい」
あ、何か足に当たった。
セレヴィの声が耳に届いた瞬間には、わたしは何かを蹴ってた。
ちっちゃな金属板、魔力誘導板ってやつがカランと転がった。
それが大事な軌道制御のパーツだったと気づいたのは、ほんの数秒後。信号弾は予定より六十度くらい左にずれていった。
綺麗な放物線を描いて、着弾。
「な、何だ!」
「攻撃か!?」
校舎だけでなく、大学の施設のほとんどには、防御魔法が施されている。
第六棟の建物の四隅には防御魔法の持続装置を兼ねた小さな円形の塔が設置してある。
そのひとつへ、大きな音を立てて弾は命中した。白い石壁が振動し、その頂上からは黒い煙がもうもうと上がり始めた。
「連邦の侵攻か!?」
「奴ら、教育機関に手を出してくるとは!!」
魔法植物温室などがある塔のてっぺんから煙が上がる。飛び出してきた先生たちの怒号が聞こえてくる。
あ、あーあ。騒ぎになっちゃった。
ただあれは、物が当たったぐらいじゃ何ともない。でも、被弾箇所と派手な音から判断すると、遠目には砲撃されたように見えるかも。
「偏差角が……魔力干渉で逸れた……?」
「……飛行!」
口元を押さえて塔を見上げるセレヴィは、わなわな、あたふた。
その後ろで、わたしはそっと宙に浮かんで、高度を上げていった。現場へ駆けつけてきた人たちに向けて、手を振って声を張り上げる。
「ごめーんなさーーい! ちょっと失敗しちゃった!! 詳細はセレヴィから聞いてー!!」
「アメリア!? アメリアーーーッ!!」
こういうときは、優等生に任せる。人に頼ることに躊躇ってはいけない。国を治めるには、不可欠な要素だ。
一応謝ってはおいたから、あとはよろしくね。原因はわたしだってみんな思うと思うし。
毎回申し訳ないなあって思うけど、セレヴィは凄いから安心して任せられる。これも友情というか信頼というか、尊ぶべきものだね。
地上から響く怒号を背にして、わたしは飛んでいった。
あ~ー~、今日の風はー、ちょっと湿ってるかも~~。
飛行魔法は、わたしの好きな魔法の一つ。鳥みたいに空を飛べるから。羽根が無くなって人は空を走れるんだ。風が気持ちいいんだよねぇ。
高度はどれぐらいだったっけ。この前、街の飛行船の上に乗ったなー。速度はまだまだ遅いけど、ゆくゆくは一日で世界を一周できるぐらいになりたいかも。
浮遊魔法よりも難しいけど、操作さえできればなんてことない。飛行船とかあるし、みんな使おうとしないんだよなー、勿体ない。これがあると便利なのに。セレヴィから逃げる時とか。セレヴィもこれで追いかけてきたりするんだけど。
演習場から巨大魔導塔のある中央本館へ、特に目的もなく進む。
別にもう降りてもいいんだけど、なんかないかなー。お、あれは。
道の途中、芝の上で立ち止まっていた青年を発見した。
「やっほ、グレイン」
さっきまでわたしが居た方角へ振り向いていた彼は、空から降り立った可愛い王女を見るなり眉をひそめた。
「姫殿下、今度は何をなさいました?」
「何のこと?」
「校舎の最上階から煙が上がっていますが」
「え、そうなの? 魔法でも失敗したのかな?」
「またしたんですか……」
グレインはわたしの仕業だと睨んでる。とぼけても駄目そう。
間違いというほど間違ってはないけど、あれだって、誘導版をきちんと確認しなかったセレヴィにも責任の一端があると思わなくもない気もするよ。割合でいったら、わたしが9ぐらい悪くて、セレヴィが1ぐらい。
それにまたって言うけどさ、毎回失敗してるわけじゃないよ。成功したことだって、何回かあるんだから。
ただ、その度に騒ぎになるだけだから。
「撃ったんじゃなくて、当たったの! ほんのちょっと!」
「十分事件ですよ」
呆れ交じりに彼が息を吐いた、そのとき。
北の方角から爆音がした。第四棟の近くにあるいくつかの研究塔。それらが配置されている広場から、白煙が上がっていた。
あの方角からとなると。
「あれ、ゴージンかなぁ。何の実験してるんだろ?」
「またあいつか」
グレインは、うんざりしたようにため息をついた。
「今の、成功っぽい音じゃないよね」
「成功しても、ろくなものがないと思います」
グレインはゴージンに厳しいよね。ちょっと髪が削られたり、ちょっと制服が焦げたり、他にもあるのかもしれないけど、少しだけ被害に遭ってるからかな。
二人が険悪になられてもやだなぁ。そうだ、たまにはわたしが仲を取り持ってみよう。
「見に行こう!」
「何を言っているんです。危険からは遠ざかった方が、」
「あ、」
「ん?」
見えない糸で急に引っ張られるように、突然わたしの身体がふわっと浮く。立っていた場所が急速に遠のく。
「グレイン、上! 避けて!」
腰に手を回されて空を舞うわたしの視線の先で、グレインは目を見張って固まった。
数十数百の破片のようなものが、空気を切り裂くような音を立てて飛来した。それらは、地面に落下したと同時に、小さく破裂していった。
「なあああああっ!!」
断末魔と破裂音が静かな小道に響いた。
「アメリア様。お怪我はございませんか」
「エルミナ!」
風のようにわたしを攫ったのは、どこにだって現れる侍従だ。
わかってはいたけど。危険を察知して、わたしを担いでくれたんだ。
「あー! グレインが! ごめん、気付くの遅れたからぁ!」
爆発の中心から、一瞬にして数十メートル離されたわたしは、優しく降ろされた。
犠牲者が、被害者が出てしまった。
爆弾の雨が止んだところで倒れている青年に駆け寄る。グレインは叫んだままの口で白目を剥き気絶していた。
直前に魔力で全身を覆っていたからかな、ざっと見た感じだと、怪我っぽい怪我はしていないね。ただ、破裂音に驚いたって感じかな? 一応、診てもらった方が良いかも。
わたしは、頼れる侍女に振り返った。
「エルミナ!」
「はい、トドメですね」
「違うよ! 保健室に連れて行ってあげて!」
何淡々と口走ってるの。わたしがやれって言ってたらやったの?
「いずれ目を覚ますでしょう、放置でよろしいかと」
「何でよぉ。お願い!」
「…………かしこまりました。不承不承ですが、汚物を片づけてきます」
「ゴミ箱に捨てたらダメだよー」
白目のグレインを肩に担いだエルミナは、一瞬にして姿が見えなくなった。
その間に、わたしは道に散乱したものに目を配る。何かの破片だと思っていたそれらは、どこにでもある雑草や小石や、小枝だった。
ん~? 何で破裂するんだろう。
「置いてきました。お待たせして申し訳ございません」
なんて、考えていると、エルミナが戻ってきていた。一分と待たなかった。
「早いね。ちゃんと連れて行った? その辺に捨てたわけじゃないよね?」
「ご命令通り、治療所のベッドに放り投げてきました」
「投げたらダメなんじゃない? ……うんん、まあ、ベッドに寝かせたんだったら」
まあ、いいのかな。後で目覚めたかどうか見に行こう。
「セレヴィとグレインには、いつも苦労掛けてるから、お詫びの品とか今度街で買っていこっか。何がいいかな」
「不要かと。奴ら………彼らは苦労を知るべきなのです」
「そういうもの、かな?」
「そうです。明け透けに申し上げれば、奴らへの断罪には内心で喝采しておりました」
断罪って。セレヴィはまだしも、グレインにはわたしがしたわけじゃないんだけど。
それに明け透けに言い過ぎじゃない? もっと内々に思ってるだけでいいんだよ?
うーん、前々から思ってたけど、エルミナって何で二人に冷たいんだろう。もっと仲良くなって欲しいけどなあ。今度イベントでも開いてみようかな。
「とりあえず現場に向かおっか」
「はい」
わたしはまた飛行魔法で空を駆け出し、研究塔の林立する方角へ向かい始める。エルミナは一蹴りごとに数メートルを移動し遮蔽物を次々飛び越えて、並走した。地面を蹴る度にちょっとした風圧が生じて、空を飛んでいるわたしが下から追いつかれる感覚だ。
凄いよなぁ、エルミナ。わたし、ここまで早く走れない。
身体強化って個人の才能が全てらしいけど、エルミナってその最高峰じゃない?
世話のひとつに文句も言わない。忠実で最も信頼できる重臣。
「そういえばさ、エルミナって敬語使わないときあるの?」
「相手によります」
「だいたいの人にはそうじゃない? あ、でもノーラとかは使わないね!」
「人間には使いますので」
「ノーラもだよ?」
ノーラにも厳しかったな、エルミナって。何でだろ、セレグレノラの三人が何かしたとか?
まあいいや、今度一日だけエルミナに敬語を禁止させてみよ。どんな喋り方になるんだろ。




