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リープ ~私達の二周目~  作者: 蛇頭蛇尾
1章

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第十話 「ゴージン・ヴェルディック」

※ 本作品は、一部に生成AI(ChatGPT&Gemini)を活用して構成・執筆を行っています。設定および物語の方向性、展開はすべて筆者のアイデアに基づき、AIは補助ツールとして使用しております。誤字脱字または展開の違和感など、お気づきの点があればコメントをいただけると助かります


 



 王立ザックスファード大学の北東にある第三棟。その一角を占める研究室は、俺の専有区画と言っていい。部屋に染み付いた焦げ臭さと魔力の残滓は、もはや常態化している。訪れる者は眉を顰めるかもしれないが、俺は気にしない。そもそも、訪問者は限られた人間だけだ。魔導工学部の生徒すら、この階に足を運ぶことは滅多にない。


 高天井から吊るされる白熱電球は室内を照らし、細長い棒きれのような俺の身体や剥き出しの配線と配管が壁を這う様を鮮明に映している。

 机の上に広げた魔導式の図面に、目を落とす。理論値の見直し、流体制御の効率化、刻印の簡略化。改良の余地はまだある。いや、常にある。


 濃紺のロングコートは、見た目こそ上等な仕立てだが、用途を優先した設計にしている。襟元は糊の効いた形状記憶布で、胸元の銀ボタンは魔力の干渉に応じて作動する仕組みだ。

 俺にとって、服はただの装備であり、実験器具の延長に過ぎない。


 白衣の袖には焦げ跡が多く残っているが、整然と並んだ装置群や記録ノートを見れば、俺がただの爆発好きではないとわかるだろう。


 机に向かっていたとき、不規則な靴音が近づいてきた。ノックもなしに、扉が開く。振り返らずとも、誰かはわかっている。


「へいゴージン! 今日の発明品は?」

「何だと思う?」


 片手を上げて挨拶してきた女学生に、平然と返す。

 ヴァルモン王国第一王女、アメリア・ド・ヴァルモン。赤リンの髪色をしたこいつは統合と秩序の象徴たる王家の一人だ。肩書だけはな。


 一目見れば、一言話せば。真っ当な王族ではないと誰もが理解するだろう。

 リトマス試験紙をかざせば、虹を示しそうな女だ。


「騒々しい令嬢と護衛は?」

「撒いてきた」

「撒いていいのか?」

「何もなければいいんだよ」

「それもそうか」


 敬語を使わなくていいこいつは、気楽でいい。アメリアの方から要らないと言われたからな。

 学外や衆目のある場では用いるが、ここでは必要ない。

 つくづく王女らしくない。王族とはこういった点に関しては何者よりも気にしそうなものだが。


「これなあーに?」


 俺がノートを開き白紙のページに視線を落としていると、アメリアがかざすように聞いてきた。手にしていたのは試作中の携帯式魔導具、正式名称は『動力最適化投射具』だ。


 銃床のない握りやすいグリップと引き金、そして円筒状の銃身を持つ小型軽量のシンプルなデザインになっている。


「属性的魔力を衝撃波に変換して射出する。理論上はな」

「シンプルじゃん。珍しい」

「使用するなら風や土の魔法が妥当か。改良はこれからだ。まだ試作段階だからな」

「ふへえー」


 生返事をした王女は、筒の中を覗くように持ち換えたりした。

 非力な者でも扱える分、威力は抑えられている。魔力を注いで放てば、手のひらサイズの柔らかい球を投げた程度のものになるだろう。


「使っていい?」

「構わない」

「誰かに当たるとヤバイ?」

「まず人に向けるな」

「オッケイ! 借りてくよー!」


 短いやり取りを終えると早々にアメリアは部屋を飛び出ていった。行動力という観点で見れば好ましい性格をしているな。あいつは。生み出す被害に目をつぶればだが。


 一周目では接近すらしなかったが、勿体なかったな。王侯貴族の権力闘争や人間関係などの煩わしい要素を極力避けるためとはいえ、研究室に引きこもってばかりだった。


 あいつと顔馴染みにでもなっていれば、また違った未来を送れていたのかもしれない。

 はっ、希望的観測だな。





 俺は、今から四年後に死んだ。

 過去ではない。未来で命を落とした。

 前世と表現していいのか、リンドラ評議会の首都、地下の魔導研究棟に俺はいた。完全非公開の国家プロジェクト。その一端を担っていたときは、それなりの誇りを感じていた。


 技術は正しかった。だが、危険性より実現性に重きを置いていた。与えられた資源の中、ただただ研究に没頭していた。それが、ヴァルモン王国崩壊の一因となった。


 全てを理解したのは、死の直前だった。


 二周目の今、俺の願いはシンプルだ。

 多くの発明・研究を、学術的に正しい形で残す。それだけでいい。


 その点、ザックスファード大学は最善の環境だ。理想に近いと言ってもいい。


 ひとつだけ、誤算はあったな。



 アメリアという実に興味深い変数との接触だ。






 *







 十数分後、第三棟近くの広場で叫び声が上がった。


「おおおわああ!?」


 聞き覚えのある声だ。品の欠片を微塵も感じさせない叫び方からして、あいつだ。

 窓窓辺に立ち眼下を見やる。視線の先に捉えた女は、肩にかかる青みがかった黒髪を揺らしていた。


 やはり、エステルハージのジャンクか。相変わらず令嬢らしからぬ挙動をする奴だ。あちらは俺を知らないだろうが、アメリアから度々聞かされるうちに覚えてしまった。


 第一印象からして典型的な貴族の娘ではないと見ていたが、ああして取り乱す様は実に素直で分かりやすい。アメリアの被害者、巻き込まれ役といった印象が強い。


 そんなジャンク女、他の奴からはポンコツと言われているらしい女は、先ほどアメリアが持っていった魔導具を、作動させたようだ。


「私またなんかやった!? やってない! 今回はやってない!!」


 毎度似通った反応を示す女は、学習能力に乏しい。今回は、などとのたまうからには、起因となった件もありそうだな。



 その間にも、衝撃波は進んでいた。軌道は安定、エネルギー分布もまずまずといったところだ。五十メートル先に立ててある板は的のつもりだったらしいが、大きく逸れたな。背後にいたアメリアが『あ、』などと言っていそうな顔をしているが、もう遅い。


 宙を駆け抜けるエネルギーは、芝を撫でて葉を散らし、風の刃のように空気を裂いていった。


 んっ、あれは。軌道上にいるあいつは。


「まずい。グレイーン! 伏せてー!!」

「ん? 姫殿下……は、は? いや、なん」


 迫りくる魔法の塊に目を丸くしたオルテン家の令息は、ぎりぎりで頭を下げ直撃を免れた。だが、掠めた髪が少々犠牲になったな。

 片側の半分ほどが、草刈り機で整備されたような有様になった。


「何だ、なにが…………頭、か、髪が…………」


 ほう、見事な分け具合だ。まるで黄金比率を意識したような刈られ方だ。

 あの男も遠目から見るだけで、直接話したことはないな。アメリアの語った人物像でしか知らない。


 ひとまず、些細な被害は置いておくとして完璧な散布だ。データは上々。と言いたいところだが、大分威力が上振れているな。あれは、基準値を大幅に超えた魔力量から射出されたようだが、あれほどの威力になるか? あのジャンクにそんな保有魔力があるとは思えんが……そうか、アメリアか。


 恐らくはアメリアがエネルギー注入者だな。引き金を引いたのがジャンク女というだけだ。


 アメリア、相変わらず規格外なやつだ。


 他とは一線を画す保有量は、常人とは他に与える影響が大いに異なる。蟻と人間では比較にならない質量差があるように、アメリアとそれ以外では目に見える違いがある。それは魔法ともなれば雲泥の差として捉えられる。

 俺の見立てでは、アメリアの魔力量は百の人間に相当する。つまり化け物だ。


 あいつには気軽に試作品を渡してはならないのだろうが、それについては問題ない。

 当人が無意識に抑制しているのか、自らの行いによる被害を最小限度に留めている。


 普段の言動により誤解されやすいが、あれでもあいつは、自身の影響力を考慮しているのだろう。


「近くで観察してみるか」


 スコープ越しでは重要な部分を見逃してしまいそうだ、下りて広場に向かうとしよう。





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