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リープ  作者: 蛇頭蛇尾
1章
11/13

第三話 「グレイン・オルテン」(3)

※ 本作品は、一部に生成AI(ChatGPT&Gemini)を活用して構成・執筆を行っています。設定および物語の方向性、展開はすべて筆者のアイデアに基づき、AIは補助ツールとして使用しております。誤字脱字または展開の違和感など、お気づきの点があればコメントをいただけると助かります


閲覧の際には、上記の旨をご理解のうえ、読欲をお満たしください。

 

「いっちにー、さんっにー!」

「アメ、アメリア! バク転しないで!!」

 ガス灯と月光が入り混じる空き教室。眼前では、再び舞踊が展開されていた。シャンデリアの落下騒動により当然演習は中止になり、生徒たちは帰宅を命じられていた。だが、迎えを待つ者たちは一定数いる。姫殿下、令嬢、そして俺はその組だ。

『踊り足りない!』と声を張り上げた姫殿下に、呆れながらも教師に頼んで空き教室をひとつ解放してもらった。彼女なりの恩返しも含めているのだろう、俺も同行を申し出た。

 俺たち三人だけではなかった。姫殿下の呼びかけに賛同した十数人が集まっていた。第一王女の勇敢な姿に心を動かされた者も、中にはいるのだろうか。

 皆が思い思いに踊っていた。さきほどの事件など取っ払ったかのように、和やかな雰囲気が形成されていた。姫殿下のダイナミックなステップに、笑い声が絶えない。

 講堂での失敗を踏まえて、俺は殿下に再挑戦した。

「オルテンくん、その顔やめてー」

 だが、始まってすぐに、姫殿下は口をすぼめて、不満を顕わにした。

「顔、ですか? ……ですが、生来のものでして」

 それなりに自信のある容姿だと思っていたのだが、王女の好みではなかったのか。

「ちがーう。なんていうか、商売してる人みたいな顔してる」

 すうっ、と胸が冷たくなった。まさか、そんなところまで見抜いているとは。王女が天井ばかり見ていたのは、危険を察知していただけではなかったのかもしれない。俺の態度、表情、ひとつひとつが、王女の警戒心を煽っていたのだろうか。

 家柄から自然と染みついた振る舞いではあるが、それを明確に看破されたことはなかった。

 思っていた以上に、王女は鋭いらしい。

「……これでどうでしょう」

「それ。それでいいんだよ!」

 指先から脱力していき、口元をほころばせた俺に、殿下は満足げに頷いた。何が『いい』のかはよくわからなかったが。

「飛ばしていくよ!!」

「え、あ、ちょっ、待っ――」

 気づけばまた、翻弄されていた。床にへたり込む頃には、足がつりそうになっていた。

 けれど、講堂の時よりもついていけた気がする。額に浮かぶ汗も、不快じゃなかった。

「ははあ、踊ったねー!」

「……そう、ね……迎えが、来たそうね」

 時が過ぎ、残っていた生徒たちも帰宅していった。

 肩で息をするガーウェンディッシュの隣で、姫殿下は満面の笑みを浮かべていた。あれだけ踊っていようと、軽く息が上がっている程度だ。どこにそんな体力があるのか。

「じゃあね、グレイン! もっと体力つけないとダメだよ!!」

 いつの間にか、呼び捨てになっていた。一歩前進、と受け取っていいのだろうか。小さく頭を下げて、教室を出ていく彼女たちを見送った。

 王女を相手にするには、想定の三倍、それ以上の覚悟が必要だ。

 まあ、いい。

 あくまでも、計画の一部だ。王女の力については、あればいい、程度に認識しておこう。意地を張って執着すれば、致命的なミスを犯しそうだ。

 接触は続けるが、固執はしないよう、気をつけよう。

「今度こそは……」

 二周目の人生、首を斬られた日から五年遡った。原因も方法も分からないが、魔法以外の何かとは思えない。

 誰が、何のために。なぜ俺なのか。

 その答えは一年を経ようと見えてこない。今のところは、それでいい。

 重要なのは、何をすべきかだ。

 止まっている暇はない。

 たとえ人々の性格や行動が変わっていようと、出来事そのものは繰り返されている。

 第一次革命は一周目と同様に発生している。だからこそ、確信している。

 第二次革命は、必ず四年後に訪れる。

 あの惨事から生き延びるための計画――それがすべての始まりだ。そして、その一環として王女との接触を図っている。

 生存構想は三つに分けた。国外への避難、国内での再建、革命及び戦争時の立ち回り。ひとつひとつを更に枝分かれさせて計画を練っている。は今のところ順調に進んでいる。どれか一つが崩れても、残り二つが支えればいい。その隙に次の方策を立て直せばいい。

 三本の柱。それが俺の計画の根幹だ。

 いざというときは、親を説得して国外に逃れることも視野に入れている。留学という形で国内から脱出する手もある。いずれにせよ、慎重かつ的確に進める。前回、俺が処刑台に送られた要因をひとつひとつ潰していけば、本来の道から外れていくはずだ。その先が破滅ではないと言い切れないが。油断はしない。慢心は命取りだ。

 幸い、時間はまだ残されている。姫殿下とのコネクションも、この段階で作っておいて損はないはずだ。今日の件で借りができてしまったが、かえって周囲よりも覚えは良くなったはずだ。恩義はどこかのタイミングで返せばいい。

 ……もう少し、体力をつけるか。

 腰を下ろした教室で、ふっと俺は息を吐きながら、小さく独り言を漏らした。



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