第三話 「グレイン・オルテン」(3)
※ 本作品は、一部に生成AI(ChatGPT&Gemini)を活用して構成・執筆を行っています。設定および物語の方向性、展開はすべて筆者のアイデアに基づき、AIは補助ツールとして使用しております。誤字脱字または展開の違和感など、お気づきの点があればコメントをいただけると助かります
閲覧の際には、上記の旨をご理解のうえ、読欲をお満たしください。
「いっちにー、さんっにー!」
「アメ、アメリア! バク転しないで!!」
ガス灯と月光が入り混じる空き教室。眼前では、再び舞踊が展開されていた。シャンデリアの落下騒動により当然演習は中止になり、生徒たちは帰宅を命じられていた。だが、迎えを待つ者たちは一定数いる。姫殿下、令嬢、そして俺はその組だ。
『踊り足りない!』と声を張り上げた姫殿下に、呆れながらも教師に頼んで空き教室をひとつ解放してもらった。彼女なりの恩返しも含めているのだろう、俺も同行を申し出た。
俺たち三人だけではなかった。姫殿下の呼びかけに賛同した十数人が集まっていた。第一王女の勇敢な姿に心を動かされた者も、中にはいるのだろうか。
皆が思い思いに踊っていた。さきほどの事件など取っ払ったかのように、和やかな雰囲気が形成されていた。姫殿下のダイナミックなステップに、笑い声が絶えない。
講堂での失敗を踏まえて、俺は殿下に再挑戦した。
「オルテンくん、その顔やめてー」
だが、始まってすぐに、姫殿下は口をすぼめて、不満を顕わにした。
「顔、ですか? ……ですが、生来のものでして」
それなりに自信のある容姿だと思っていたのだが、王女の好みではなかったのか。
「ちがーう。なんていうか、商売してる人みたいな顔してる」
すうっ、と胸が冷たくなった。まさか、そんなところまで見抜いているとは。王女が天井ばかり見ていたのは、危険を察知していただけではなかったのかもしれない。俺の態度、表情、ひとつひとつが、王女の警戒心を煽っていたのだろうか。
家柄から自然と染みついた振る舞いではあるが、それを明確に看破されたことはなかった。
思っていた以上に、王女は鋭いらしい。
「……これでどうでしょう」
「それ。それでいいんだよ!」
指先から脱力していき、口元をほころばせた俺に、殿下は満足げに頷いた。何が『いい』のかはよくわからなかったが。
「飛ばしていくよ!!」
「え、あ、ちょっ、待っ――」
気づけばまた、翻弄されていた。床にへたり込む頃には、足がつりそうになっていた。
けれど、講堂の時よりもついていけた気がする。額に浮かぶ汗も、不快じゃなかった。
「ははあ、踊ったねー!」
「……そう、ね……迎えが、来たそうね」
時が過ぎ、残っていた生徒たちも帰宅していった。
肩で息をするガーウェンディッシュの隣で、姫殿下は満面の笑みを浮かべていた。あれだけ踊っていようと、軽く息が上がっている程度だ。どこにそんな体力があるのか。
「じゃあね、グレイン! もっと体力つけないとダメだよ!!」
いつの間にか、呼び捨てになっていた。一歩前進、と受け取っていいのだろうか。小さく頭を下げて、教室を出ていく彼女たちを見送った。
王女を相手にするには、想定の三倍、それ以上の覚悟が必要だ。
まあ、いい。
あくまでも、計画の一部だ。王女の力については、あればいい、程度に認識しておこう。意地を張って執着すれば、致命的なミスを犯しそうだ。
接触は続けるが、固執はしないよう、気をつけよう。
「今度こそは……」
二周目の人生、首を斬られた日から五年遡った。原因も方法も分からないが、魔法以外の何かとは思えない。
誰が、何のために。なぜ俺なのか。
その答えは一年を経ようと見えてこない。今のところは、それでいい。
重要なのは、何をすべきかだ。
止まっている暇はない。
たとえ人々の性格や行動が変わっていようと、出来事そのものは繰り返されている。
第一次革命は一周目と同様に発生している。だからこそ、確信している。
第二次革命は、必ず四年後に訪れる。
あの惨事から生き延びるための計画――それがすべての始まりだ。そして、その一環として王女との接触を図っている。
生存構想は三つに分けた。国外への避難、国内での再建、革命及び戦争時の立ち回り。ひとつひとつを更に枝分かれさせて計画を練っている。は今のところ順調に進んでいる。どれか一つが崩れても、残り二つが支えればいい。その隙に次の方策を立て直せばいい。
三本の柱。それが俺の計画の根幹だ。
いざというときは、親を説得して国外に逃れることも視野に入れている。留学という形で国内から脱出する手もある。いずれにせよ、慎重かつ的確に進める。前回、俺が処刑台に送られた要因をひとつひとつ潰していけば、本来の道から外れていくはずだ。その先が破滅ではないと言い切れないが。油断はしない。慢心は命取りだ。
幸い、時間はまだ残されている。姫殿下とのコネクションも、この段階で作っておいて損はないはずだ。今日の件で借りができてしまったが、かえって周囲よりも覚えは良くなったはずだ。恩義はどこかのタイミングで返せばいい。
……もう少し、体力をつけるか。
腰を下ろした教室で、ふっと俺は息を吐きながら、小さく独り言を漏らした。
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